見た目は子供、中身はおじいちゃん?!
「お二人とも、早くせんか?もう神王様お待たせしとるんやけど」
待ちくたびれたラリーゼがふんっ、と唸って、僕らを呼びに来た。
慌てて中に入ると、そこは外観とは大きく違う場所だった。
内装は、城なんかではなかった。
玄関もなく、いきなり会社のオフィスのようにデスクが並び、いろんな色をした髪の、目の神様っぽい人がたくさん座っている。そのデスクは、スクリーンと合体したようなもので、映し出されたキーボードを打っている様は、サラリーマンみたい。時々考えるような仕草をして仕事に没頭するその神々は、入ってきた僕らには一切気づかない。
家具っていうか、置いてあるものはほとんどシルバーで、雪とかじゃない本当の銀世界。
そのオフィスの1番奥に、さっき見たコミュニケイトのようなモニターに囲まれて、なぜか1つだけ黒いのですごい目立つ大きな机がある。
「ほら、あそこに座ってらっしゃるのが、神王のスピーウィ様や」
その黒い机に座っている神は、
見えなかった。
え、どこに座っとるん?
2人につられてついつい関西弁になってしまった僕は、神様たちの邪魔をしないようにと忍び足で、広めの通路になっている右側を回って近付こうとした。
すると、
「あ、そんな畏まらなくてもええよ」
カレスティナはそう言って、扉についたパネルを操作した。
すると、チリーンという、自販機に硬貨を入れたときのような音とともに、神王の机の近くの床から、銀色の机が2つ、新たに出てきた。
そこが、二神の座る場所らしい。
それに気づいた神が一斉にこちらを向いた。
「お!おかえり!ティナとリー!」
「おかえんなさーい!」
「待ってたでー!」
「おっかえり〜」
「ふん」
「ティナとリーか。お前らがいない間にずいぶん仕事が進んだぞ」
「ニンゲンは見つかったか?」
今までの静けさが嘘だったかのように、振り向いたときと同じように一斉に喋りだした。
その時、
「みんな、仕事に戻らんか。まだ今日の仕事、たくさん残っとるんだから、おしゃべりしてる暇などないはずじゃが?」
カレスティナとラリーゼの帰りを喜ぶみんなの声を打ち消すように、男にしては高めの、女にしては低めの声が仕事場(城)中に響いた。
「ティトリー、ご苦労じゃった。帰ってきたってことは、仕事の方はやってくれたんだろうな?」
年齢も、性別も特定できない不思議な声が2人を呼んだ。
しかも、ティトリーって、繋げちゃってるし。2人合わせてティトリー、みたいな?ペアの名前かな?
そういえば、ミカサとリサのペアはε班って呼ばれてたっけ。εといえば、確かギリシャ文字だ。α班とかもあるのかな?
「もちろんや、スピ様!」
「ウチらが手ぶらで帰ってくるはずないやろ」
二神はそう言いながら、いきなり僕とミカサの手首を掴み、そのまま引っ張って神王の机まで行こうとした。
すでに右のほうから行こうとしていた僕は、ラリーゼの強い力に抵抗する間も無く引きずられ、立ち上がったときにはもう、目の前に黒い机があった。
そこには、机と同じく真っ黒の椅子にちょこんと座った子供。
「わしのことをじろじろ見よって、何かあるなら言えばよいのだぞ?」
さっきと同じ声。
「「えっ?!?!」」
ま、まさか!まさかまさかのまさか?!
同じことを考えたミカサと声がかぶる。
「うるさいぞ!そんなに大きな声いきなり出したら、みんな驚くじゃろうが!」
ちょっと待て。冗談だよな、絶対嘘だよな。
「ティトリーや、説明せよ。この2人は、なぜわしのことをずっと見つめておるのだ?」
高めの机から顔を出すのが精一杯なくらい小柄な少年(仮)は、見た目にそぐわない口調で問うた。
「いやあ、スピ様のお美しいご容姿に驚いてるんやないでっか?」
「スピ様の顔はめっちゃ整っとるからなあ」
スピ様ってことは……
このガキみたいなのが神王ってこと?!?!
神王様、と聞いた時から、もっとおじいちゃんみたいな偉そうにしてる神かとイメージしていた。厳つそうな顔に、髭を生やした、いかにも王様って感じの。
でも、実際の神王様はといえば、
身長が120cmくらいの見た目小学6年生くらいの少神だった。
その様子にクスリと笑って、慣れた様子のカレスティナとラリーゼ。
「そ、そうか。それならいいんだが」
上手い具合に口車に乗せられている神王様を、2人が紹介した。
「こちら、スピーウィ様や。一応、議会最高権力をもつ現神王らしい」
「一応?らしい、じゃと?!ちゃんと仕事もしとるじゃないか!」
ムキになった小さい子供なのに、口調はおじいちゃん!
しかも見た目小学生で、中身は神界の王?!
なんでギャップがあるんだ!(あ、別にギャップ萌えしてるわけじゃないけど)
怒った神王はラリーゼを殴ろうとしたのだが、なんせ、腕が短い。手は届くことなく空を切った。
殴れなかったのが不満なのか、
「もうちょっと長ければ届いたのに」
神王様は機嫌を損ねてぷいっ、と顔をそらしてしまった。
「いやあ、長くても届いてへんかったやろ。あと1mは離れてたで?」
こんなことが今まで何回もあったのか、平気な顔で笑うラリーゼに、
「1mもなかったやい!!」
と、神王が近くにあった置物みたいな四角い物体を投げつけた。
が。
「ほら、神王様。こんなことをしとったら、世界はまとまれへんどすよ」
そういったのはティナ。なんと、ラリーゼの顔めがけてまっすぐ飛んできた置物を、がしっとキャッチしたのだった。
すげ、真剣白刃取り、的な。
「あんたが呼んでいらした次神王代理者を連れてきたんそやし、早う話進めてくださる?」
またもや当てられなかった神王様は、さらに不機嫌になり、ふんっ、と顔をそらすと、しょうがない、というように話し始めた。
「事情はようくわかっとるかね、ミカサ。魂世記を借りてきてほしいんじゃ」
まだ目の前で起こっていることが理解しきれていないミカサ。
「……はい、わかっていますが」
ほうほう、と頷く神王にミカサが聞いた。
「あの……」
ミカサは戸惑いながら、話しかけた。
「スピーウィ様、ですか?」
とたんにスピーウィが顔を真っ赤にして怒る。
「何言っとるんじゃいこのボケが。スピーウィがわし以外で誰だというのじゃ」
「いや、思ったより……」
僕の方を向いて言葉を探すミカサ。
「思ったより、なんじゃ?」
スピーウィの顔は今すぐにでも爆発してしまうくらい赤くなり、頭のてっぺんから湯気が出そうな勢いでこちらを睨んでいる。慌てて
「いえ、なんでもありません。失礼いたしましたっ!」
なんとなくとっさにあやまるが、収まりそうもない怒り。
「とっとと借りてきてさっさとパイプ直して、そのニンゲンを人界に返して来いっ!!」
その後、たくさんのタッチペンやら置物やらが一樹たちに雨のように降りかかった。
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