おしゃべりな神ばかり
「もしかして、ミカサって名前やったりする?」
「ええ、私がミカサだけど」
ミカサが女神の下質問に答えた瞬間、その女神は
「見つけてやったわ〜!ほら、言うたでしょ!一発で当ててみせるって!」
と言いながら大きくガッツポーズした。
か、関西弁…。この世界にも関西弁が。
「ティナ、今日は調子ええもんなあ。このままスピ様にも褒められるんちゃう?」
とペアらしい男神。
「あの、あなたたちは?」
「ウチは、神王様の使いの、カレスティナとラリーゼやねん。ティナとリーって呼んだってな」
返事をする間もなく、話は続いていく。
「ども、ティナや!よろしうな、お二人さんとも。そや、そっちのにいちゃん誰でっか?」
「そないなん決まっとるやないか、スピ様が言うとった研究対象者とかいうやつや」
「ああー、ニンゲンか!堪忍、神とおんなじような体やからわからんかったわ」
2人の神は、2人で勝手に盛り上がっている。神王様の使いなら、僕たちを呼びに来たに違いない。でも、それならもうちょっと僕たちに気遣ってもいいんじゃないのか?今ちょうど、怪我してピンチなんだし。
「ティ、ティナさん…?」
「なあに、呼び捨てでええのに。さん付けされると照れるわ〜。ねえ、リー?」
「ああ、呼び捨ての方が呼びやすいし、こっちも気が楽だし」
僕が話しかけたのにも関わらずそのまま置いてけぼりにする彼らは、ミカサとリサよりもおしゃべりで、喋り出すと止まらなくなるタイプ。
「あ、ちょ、ちょ、ストップ!!!!」
そろそろまずいと思ったのか止めるミカサ。
「どしたん?ミカサ」
首をかしげて不思議がるティナ。
「2人で話し続けないでよね」
その態度にムッとしたのか、少し不満そうに言うミカサ。
「ああ、そうやったそうやった。スピ様のお願いで、2人を出迎えに行くんやったな」
「でも、その前に……」
座り込んでいる僕らを起こそうと、手を差し出したラリーゼを、スクリーン越しのリサが止めた。
「ん?」
「治療結晶かシア復活結晶を持ってない?この子を治さないと」
その言葉に初めて僕をちゃんと見た2神。
「ああ、サニタイトなら持っとるよ。万が一ふたりが途中で怪我して遅れてるんやったら、治療は必要そやし持たされたんや」
肩にかけていたカバンの中をゴソゴソ探っていたリーが、思いついたように言った。
「名前なんていうん? ニンゲンはん」
ここで名前聞くか、普通。
「川上一樹です」
「カワカミカズキ……。どこからどこまでが名前?
」
神界にはなさそうな不思議な響きに再び首をかしげるティナに、ミカサが説明する。
「一樹が名前で、川上は家名よ」
「家名つきの名前だなんて、ニンゲンは変な生き物やな。まあ、神に家はないんやし、文句は言いまへんけれど」
家名、と聞いて二神は笑った。
「ほいこれ、サニタイトな。お前さんのシア、全然残ってないみたいやし、ウチらでちゃちゃっと、治したろか?」
やっとの事で大きなカバンからサニタイトを探し出したリーが、ミカサに提案する。神王の使いをやっている、というあたり、一言語係のミカサよりティナやリーの方が、地位は上なのだろう。
「ありがとう、お言葉に甘えて、やってもらおうかしら。ちょっと疲れたわ」
力を使い果たしたのか、ぐったりと寝そべるミカサ。
リーは青みがかった黒の結晶、先ほどの転移結晶に似たようなものを僕の怪我した手の上にかざすと、白い出っ張りを押した。
その瞬間、リーの手首から、紫色の光が結晶へ伝い、光は白くなって僕の手を包み込んだ。
そうか、これは、神の力を使って傷を治す結晶なんだ。だから力のないミカサは、まだ力の残っているリーに治療を頼んだのだろう。
光が消えたとき、僕の手は元どおり、完璧な状態でそこにあった。
「うっわー!にいちゃん!アダテイト高いねー!!こんなに適応する人初めてだー!」
「ああ!普通の神なら、完璧な状態に戻るまで結構時間かかるんやけどもな!」
さっきも同じようなことをミカサが言っていたような気がする。
他の神は高くない……人間だけ?
「でしょう?ニンゲンって不思議なのよね。この怪我も、マデスタイトのストームが原因なのよ。私でもこんなになったことないのに」
僕は、結晶の効果を上げてしまう力をもつ…らしい。そのせいで治りが普通の神より早くなったと考えれば、つじつまが合う。
「それっていいことなんですか?」
「うぅ〜ん……。あんましわかんないなー」
「使う結晶によって変わるかな。さいぜんみたいに、サニタイト使うなら便利そやけども、マデスタイトなら注意が必要だし」
「そっか…」
今のところ、この力は怪我が治る以外の役にはたたなさそうだ。これは神界で過ごすことの報復、とでも考えればいいんじゃないかな。ん?ということは僕はこれからたくさん怪我をすることになる……と?
「まあ、注意すればなんとかなるから、大丈夫だって!気にするな!」
と、ティナは言うのだが。気にしないでいられないのが僕。生真面目だと、こういうところが面倒くさい。
何か忘れている気がしたのは僕だけだろうか。そう思って、一樹は首を傾げた。
そろそろ書きだめに追いついてしまいます。毎日連載できないかもしれませんがよろしくお願いします。
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