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2柱の女神の悪巧み

「現在地を確認、今地図送るわね、ミー。」

「ありがと!どんなとこかな」

「わかんないわ。カプセルの準備しなきゃ」

「はーい、ホントにありがと、リサ」


ミーことミカサは、送られてきた地図を見てため息をついた。それが疲れていたからなのか、やっと召還係の代理を頼まれたことの嬉しさなのか、自分にもわからなかった。

ここから出たところのピッチには私を対象者の座標[地球・日本・東京...…]へ送り出す転移カプセルが置いてある。正直、初めてのコレと、地球というものにものすごーく興味があるのだが、私の仕事は「対象者を見つけ出し、目を合わせ、帰還する」だけ。

私たちは、相手(生世の人類)の目を見ることで体とピッチを繋げ、コミュニケーション可能な状況にすることができるから。

なぜって、私たちは宇宙外生命体と呼ばれている、神であるから。


転移カプセルに入った私はリサの操作を待つ間、「日本」という地球の国の映像を見て驚いた。

とても小さいのに、ニンゲンがたくさんいる。これまでの対象者召喚係の話を聞くと、大きな砂漠のど真ん中にいるニンゲンや、大海原を航海するニンゲンなど、ほとんど他人のいないところでの作業のはずだ。なのに、今回転移する場所は東京という、日本の中でも特に人の多い場所。

そんなところで果たして、対象者を見つけることができるのだろうか。


「準備完了、転送しまーす。ちょっと頭痛がするかもだけど、特に問題ないからね」


ペアのリサの声が聞こえた。

大丈夫、私ならすぐに見つけて、戻ってくるんだから。


「了解、では、行ってまいります!」

「くれぐれも気をつけて、いってらっしゃーい!!」


転移カプセルは我々、進化し続けている神界の力に比べるとずいぶん原始的で、楕円形の入り口がついた2メートルくらいの箱だ。

リサは1回、火星に行って作業をしてきたというが、私はこれが初めてなので、不安が残る。

ピッピッと高い音がなった。視界が一瞬真っ暗になり、すべての感覚が遮断される。次に晴れた時には見慣れない建物の下に立っていた。


ビュゥーンッ!!!!


銀色の大きなもの。下で、黒い丸いものが回っていて、走っていく怪物のような。

車、というらしい(リサが言ってた)それがすぐ後ろをすごいスピードで走って行った。


「ねーちゃん、あぶないんだから、気をつけなー」

「すす、すみません!」


中でそれを操作していたニンゲンに注意されて急いで道の端に寄る。言語は転移する時に自動で喋りたいことがここの言葉になるように調整されているので心配ない。しかし、神界にはない車という変な乗り物や、ありえないほどの眩しさの光に怖がらずに対象者と接触できるだろうか。

頭が重い。重力という力のせいで変に重くなった体を見回して歩き出す。とたん、キィーンという音とともに頭が激しく締め付けられるような痛みに襲われた。これがリサの言っていた頭痛だろうか。


「ミー、ミー、聞こえてる?」


空耳か、頭痛と同じ転移の副作用だろうか、突然声が聞こえた。

私のことをミーと呼ぶのはリサしかいない。しかし、転移したのは私1人であってリサはピッチで片付けをしているはず。


「ほら、ミーの首にかかってる結晶石だよ」


私の首の、結晶石……? これは確か、リサが出発する直前に、持って行って、と渡されたものだが。


「私だよ、リサだよ。みんなに秘密で通信結晶(コミュニケイト)結んじゃったんだー」


コミュニケイトはモニターで通信する、ニンゲンが使うテレビ電話のようなもの、ただ声だけで通信するものの、二種類がある。リサが繋いだのは後者だ。

しかし、普通のコミュニケイトは、立方体に近い形。私が首にかけたような小さな正八面体のコミュニケイトは見たことがない。こんなものがあったんだ。

結晶越しにうふふ、といたずらな笑い声が聞こえた。いっつもリサはいたずらばかり……。


「と、言いたいとこなんだけど」


笑い声が途切れた。


「え?」


「実は話してなかったんだけど、管理者は召喚係と連絡することになってるから、よろしくね」


再び、うふふっという声が聞こえた。

これで納得する。きっとこの結晶は、召喚係がいつも使う、人間界専用のコミュニケイトなのだ。

声だけタイプのコミュニケイトを結んだ場合、こちらから向こうの顔を見ることはできないが、結んだ側、つまりリサからはこちらの様子を見ることができる。

多分今向こう側ではコミュニケイトから私のびっくりした顔を見て笑っているんだろう。

でも、


「聞いてないわよ、そんなの!」

「そりゃそうだわ、言ってなかったんだもの」


何よその切り返し!むかつく!それくらい、言ってくれてても良かったじゃない!


「…………」

「あ、ダメダメ!結晶割らないで!対象者見つけられなくなるから」


長い前髪を止めているピンの尖った先で結晶そのものを壊してしまおうと考えた私を、リサが慌てて止めた。

でも、対象者を見つけることができないのは事実だろう。この世界では私の力もあてにならない。


「そんな急に言われても……」

「別にいいでしょ、どうしても1人で探したいの?」

「いや、そういうわけじゃないんだけど……」

「じゃ、よろしくね、ミー!」


リサのいい加減さは前から知ってはいたが、いきなりコミュニケイトを渡して、勝手につなぐとは思ってもいなかった。しかしまあ、対象者の顔を知らない私たちがどうやって見つけるのか疑問ではあったので、これで納得した。

でも、やっぱり言ってくれればよかったのに。

リサは不思議なやつだ。

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