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第8話 化物の力の片鱗

それではふたりとも準備はいいかね?」


「はい!いつでもどうぞ!」


「ハッ!いつでもいいぜっ!」


正眼に構える二階堂とは対象的に

、一樹は特に構える事なく、両腕をただだらりと垂らしたまんまだった。

あからさまに舐めている一樹に対し、二階堂がまたもや食いつく。


「キサマ舐めているのか?それとも構えというものを知らないのか?」


「カッカッカッ!てめぇごときに構えなんかいるかよ!?」


「フンッ!ならば痛い目を見るがいい!」


「その痛い目を自分が見なきゃいいがな!」


「ほざけっ!」


またもや始まる口喧嘩に対し、壮厳はまたもや溜め息をつく。


「はぁ…もういいか?はじめるぞ?いいな?…では、はじめっ!」


始まりの合図が発せられた。

二階堂は正眼に構えたまま睨みながら一樹の出方を伺うが、対する一樹はニヤニヤしながら構えもとらず待ちの姿勢。


なんとも言えない緊張感が道場の中に満ちあふれていた。

幾分か時が過ぎた後、先に動いたのは二階堂だった。


「ハァッ!」


掛け声と共に木刀を真正面に振り降ろす二階堂。

まさに神速の一撃であった。彼が剣術を始めてからの全てを込めた一撃と言ってもいいほどの一撃。


まさに二階堂の現段階での最高の一撃だった。だったが…


一樹に当たる寸前で木刀は動かなくなってしまった。


押しても引いてもウンともスンともいわず、まるで空間に木刀が固定されてしまったかのように動かなくなってしまったのだ。


さすがにこれには二階堂も驚愕した。

そして道場全体にも驚愕の空気が満たされた。


「ど、どういう事だ!?木刀が動かないだと!?」


「はぁ…やっぱこんなもんか。所詮は人間だな。」


一樹が一言溢す。

そして二階堂は木刀をよく見た。

よく見たら一樹が木刀を掴んでいた。

否、一樹が木刀を親指と人差し指で摘まんでいたのだ。


「な、なんだと?キサマが木刀を止めているのか!?」


「それ以外何があるんだよ?」


「そんなバカな事できるわけないだろ!」


「現にできてんじゃねぇか。」


「キサマどんなトリックを使った!?」


「使ってねぇよ。ただ純粋に、俺の握力と腕力でとめただけだ。」


「そんな事できるわけないだろ!?そ、そんなの…まるでバケモノではないか!?」


「ハァ?当たり前じやねぇか。こんな事できるから俺は化物(バケモノ)なんだよ…」


そう呟く一樹からは冷たく、死をも思わせる空気が溢れたしていた。


そして一樹は、バキッ!っと親指と人差し指の握力のみで木刀を握り折った。

カラン!と音を立て、木刀の切っ先がおちる。

その時には道場内は先程の緊張感とは別の緊張感によって支配されていた。

「そ、そんなバカな…」


茫然自失の二階堂を一樹は、はぁ…っとため息で一蹴する。


「おい、オッサン!これはどうなんだ?オレの勝ちでいいのか?なんならコイツを一発ブン殴ろうか?」


「ま、まて!さすがに二階堂が死んでしまう!勝者、影山とするっ!」


「フンッ!人間のクセに偉そうにするからだ…」


そう言い残すと、茫然自失で立ち尽くす二階堂を無視して一樹は道場の隅に座り込み、リュックから来るときに買ってきたハンバーガーを取り出すとムシャムシヤと食べだした。


「か、影山くん?さすがに道場内で飲食はちょっと…」


「ハァ?食わねーと持たねぇんだから、しょうがねぇだろう」


「いやね、でもね、一応ルールだから…」


茫然自失の二階堂。

ハンバーガーを食べる一樹。

それを諌めようとする壮厳。

門下生は見守る事しかできず、まさにカオスであった。

そして、そのカオスを切り裂く勇者が現れた!


ガラッ!


「ただいま着替えてまいりました!

ん?なんだこの状態は?」


「お、おお!綾乃!戻ったか!なんとかしてくれ!」


「父上、何が起きたのですか?というか、影山、ここは飲食禁止だ。」


「ハァ?うるせーよ。食いたくてくってんじゃねぇよ、食わなきゃいけねーから食ってんだ。」


「ん?どういことだ?それより父上、説明を。」


壮厳は綾乃に、喧嘩が止まらず試合をさせた事、一樹が木刀を潰し折った事、そして一樹が食事をしだした事を説明した。


「ふむ、二階堂は自業自得として、影山、貴様はどう見ても、木刀を折れるほどの筋力を持ち合わせておるようには見えんのだが、それと、朝にあれほどの量の食事をしながら、こんな時間食事をせねばならぬ理由もな。」


「ふむ、ワシも確かに気になる。ワシからもお願いできんかね?」


「チッ!てめぇらには関係ないだろ。」


「フッ!残念ながら木刀を壊されている以上関係あるな!」


「金払うなり、買って返すなりすりゃあいいだろ?」


「ダメだっ!安全対策や再発防止の事も考えねばならん!」


「チッ!しつけぇなぁ…」


「あぁ、私はしつこいぞ!」


「クソったれが…せめて人払いくらいしろ。」


「いいだろう、父上もよろしいですね?」


「うむ、と、言うことだ。みんな、今日の稽古はお仕舞いだ。」


((はい!ありがとうございました!))


門下生達は一礼すると、ゾロゾロと道場を出ていった。

だが、そこには未だに立ち尽くす二階がいた。

それに綾乃が声をかける。


「二階堂。おい二階堂!」


呼ばれた二階堂はハッ!と我に返った。


「お嬢様!コイツはバケモノです!危険です!」


「はぁ?その説明を今からさせるのだ。お前も帰れ。」


「そんな!先生とお嬢様だけでは危険です!」


「そんな所にお前がいてなんになる?それに、そんな気がヤツにあれば、とうに私たちは死んでいるのではないのか?のう?影山?」


「ハッ!俺が本気で殺す気があれば、門下生共、共々全員とっくに死んでるよ!」


「ちなみに、この三人殺すのにどれ程かかる?」


「さぁてな…代償やらその他諸々を無視して10秒はかかんねぇよ。」


「だ、そうだ。そんな所にお前がいてどうなるんだ?」


「クッ…しかし!」


「しつこいぞ!」


「たけど…」


「もういい!てめぇも居れよもう。ってか、しつこいとか!どの口が言うやら」


「む?それはそれ、これはこれだ!」


「はぁ…なんてヤツだ、まぁ、いい。何から聞きたいんだ?」


次元親子は顔を見合わせる。

そして、意を決したように壮厳が口を開く。


「まずは、その体格に合わぬ筋力かのぅ。」


一樹の体格は身長こそ185

cmと大きいのだが、線は細く、とても木刀など折れるとは思えない体躯をしていた。


「ok、それからだな。まずは、筋肉にも質があるのはわかるよな?」


「うむ、赤筋、白筋というやつだな?」


一樹の質問に綾乃が答えると、更に一樹が補足する。


「それだけじやねぇ。同じ筋肉量でも質があるんだ。例えば黒人の筋肉はしなやかで強いとかな。」


「ふむ、理解した。」


一樹の補足に綾乃が返事をする。


「俺の筋肉は黒人すら凌駕するしなやかさと強度かあるらしい。」


「ふむ、それはキサマが鍛えた結果なのか?」


「いや、生まれつきのものだ。むしろ、筋肉は最低限しか付けないようにしてる。」


「なぜだ?そんな物持っていたらなんにでも活躍できるであろう?」


「ハッ!馬鹿かてめぇは!?握手して毎回、相手の手をバラバラにするか?あぁ!?」


「む…それはさすがに…」


「チッ!…で、次は?」


またもや綾乃と壮厳は顔を見合わせ、今度は壮厳が口を開く。


「では、食べないといけない理由かのぅ?」


「あぁ、さっきの筋肉の話にも繋がるが、そんなふざけた筋肉が通常のエネルギー量で足りる訳がねぇ。それに加え、俺は脳ミソも特別らしくてな…特に処理速度が半端ないくてカロリー消費量が高いんだよ。半日何も食わなければ低血糖でぶっ倒れる。2日食べないと餓死するレベルだ。」


「ふむ、強すぎる力には代償があるということか。」


「そうだ。てめぇらが低燃費のエコカーだったとしたら、こっちは燃料ドカ食いのレーシングカーって事だ」


「ほぅ、分かりやすい例えだ。だが二階堂の剣はそれだけでは受け止められまい?」


「動体視力と反射神経も異常なんだと。もっと言えば骨密度も異常らしい。俺の体型だと体重なんて60kgソコソコのところが、実際は70kgは超えてるからな。」


「むぅ…正に人間の枠を外れておるな。だからバケモノか…」


壮厳は化物(バケモノ)という言葉の意味を知り、自分をバケモノと嘲笑う影山を理解して悲痛な顔をした。

しかし、綾乃は違った。


「キサマは、そうやって自分をバケモノと罵り、塞ぎこんで自分の殻に籠っているわけか。」


「なに?」


一樹は明らかなイラつきを見せる。

しかし綾乃は止まらない。


「実際そうだろう?過去に対する後悔が募っておるのだろう?なぜそれを反省して未来に生かさない?」


「てめえに何がわかる?」


「だけど、でも、だって…そんな言い訳だらけの3D男の事などわかりたくもないわ!」


「ちょ、ちょっと!綾乃ちゃん!?それ言い過ぎじゃない!?ね?ね?影山くんに謝ろう?」


壮厳が壮大に焦り出す。

それほどにも一樹からは静かな怒りが溢れたしていた。


「父上は黙っていてください。影山!グスグズ言ってないで、バケモノの力とやらを私に見せてみろ!」


「ハッ!てめぇ言ったな?上等だ!代償度外視の本気、地球のヒエラルキーのテッペンみせてやるよ!」


こうして二人の伊地の張り合いが始まる…

ちなみに壮厳は死にそうな顔をしていたのであった。

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あと良かったら宣伝も!(笑)

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