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正確な魔王の倒し方  作者: うっちーさん
第1章 絶対魔王の傘下
5/5

絶対魔王の思惑

・絶対魔王の一部

『不死の宝玉』を壊さなければならない。

詳しい理由は私は…そうだな、普通の人類として生きたい。

これから先、度々名前が上がる「王都」が衰退して

我が国が残ったとしても。天災によって全ての人間が生き絶え、我が国が残ったとしても。


私は絶対に一人になってしまうー。

仲間や国民(かぞく)を全て失う…。

確かに長く生きているとそれらを失う感覚は

少しは分かる。(・・・・・)

けどな、感情も薄れていくのも事実なんだよ。

『あぁ、またこいつらを死ぬまで見届けて…』

『また大事な国民かぞくを失うのを見続けるのか…』ってな。


私自身に失える物が無い以上

自身では失えない物が消えるってのは

不老不死ならではの贅沢かもしれない。

理由の一部とは言え、人間になりたいのだよ私は。


死ぬと言う恐怖を。仲間を守れないと言う恐怖を。

自身の力では及ばなくなる…そんな感覚を。

もう失いかけている。それはまずい(嫌だ)

酷な話だよなぁ…ま、自分で言うことでもないだろうけどな。


・驚く絶対魔王

アミンには無い「風属性」の適正。

恐らく威力や種類だけで言ったら「アミンよりは強い。」

そうアミンは確証していた。だがそれはキャルムもそうだがスルトもその事実を知らない。

自国の魔術師を集め、風属性の魔法を結集させた程度の者とは比べ物にならない事も

アミンには容易に想像できた。

『だからこそこいつの技を受けてみたい。』

そう考えているアミンだった。が。やはり周囲を巻き込む恐れや

キャルム自身もどの程度まで通用するのか、魔王討伐に名乗りを上げた以上

試してみたいという考えもあり、お互いの思いから拮抗することになる―。


「どうしたの?魔王というのも案外大した事無いのね?」

「そちらも剣技ばかりでそれ以外は無いのか?だとしたら期待外れにも程があるぞ?」

お互いの煽り文句。スルトは手を出さずにただ見ているだけだった。

エイラノート家の偉業は「王都側」に付いているのであれば、スルトの村でも数人は

伝説や偉業を成し遂げた人物として子供の頃に聞かされる程だからだ。

「…っ!」

剣と拳のぶつかり合い。アミンの頑丈さは先日、スルトが痛いほど知っていた。

今でさえ素手であのキャルムの剣を受けている。

男の俺でさえ、手が多少痺れるほどの|膂力≪りょりょく≫だって言うのに…。

「俺からすりゃあキャルムも十分化け物なんだけどな…」

と苦笑いをと独り言をこぼすと

なんと剣圧がスルト目掛けて飛ばされてきた。

「あっぶねぇ!?」

「今私に対して失礼な発言が聞こえたぞ!!!」

アミンを拳を交えながらその余裕があるという事に違和感を覚えた。のと同時に

「ふっざっけんな!目の前の敵に集中しろぉ!!」

とついツッコミを入れてしまった。

けどそんな余裕が無いってのを忘れていた。

ある程度強いぐらいの相手ならとっくに負かしてるてはずなのに

俺もそうだった。傍から見て今解った。

『様子を見られている』―これが違和感の正体。

手加減とかじゃない、本当に様子を見られている。

スルトはそれが分かると寒気を感じた。そりゃ勝てねぇわ。と。

「ふむ…いい加減飽きてきた。多少は我の力を見せてやろう。本の少し、だがな?」

「あらそう。もう実力を出すのかしら?やっぱり噂が大きいだけね!」

キャルムも相当焦っていた。正直剣(というか拳)を交えていた時点で分かったのだ。

やはり魔王。自分の腕試しと思ったのは軽く間違いだったと。


さて、どうしたものか…


風の魔法の適正が無い、とは言えスルトの様な『寵愛』とか『加護』的なものを受けているとすると、これまた面倒。

捉えきれない速さと、火力の両方を併せ持つものと言えばーーー。

「雷、だなぁ。」

にいっといたずらっぽく笑うアミン。

スルトの時同様、雷の魔力を薄く身体に纏わせる。基本的に、魔力を身体に纏わせるという「超高等技術」であれば、属性毎に特質が生まれる。

スルトの時であれば熱を帯びるし、他の属性でも何かしらの特質が見られる。

雷を見に纏ったアミンの周囲は、高頻度で「パチン!パチン!」と静電気が常に発しているかの様な音が鳴っていた。

「よぉし、準備完了だ。行くぞ?キャルムとやら。」

「……来なさい!」

少女っぽく笑ったまま、音速に近い速さでキャルムに殴りかかる。

「っくぅぅぅ?!!」

「ほうほう、良く反応出来るものだなぁ」

「嘘でしょっ…!!!」

「貴様も中々やるではないか!風の魔法を纏いつつ、雷の魔力を多少受け流しておる!」

「説明っ…ご丁寧にどうも!!!」

戦闘の型的な物で言ったら、アミンの攻撃は稚拙で見切ったりするのは容易だった。

だがそれ以上に早すぎるの(・・・・・)だ。

1発でも貰えばほぼ即死。

側から見るスルトは更にその違和感に気づく。

「あいつ…キャルムの剣しか狙ってねぇじゃん…」

スルトの時とは違った形で相手の力量を測る。

一般人同士であれば本来『殺し合い』に近い形。

これだけの恐怖心というか、圧倒的な差を見せつけた上でも更に『様子見』を続ける。

「『喰らってやる』…かぁ…本当にわざと俺の攻撃もらってたんだなアイツ…」

軽くドン引きしているスルトを横目に、アミンは更なる芸当を披露していく。

「剣技はあまり得意じゃないんだがな…いいだろう。付き合ってやるとするか!」

アミンがそう言うと、雷の魔力を手刀に込め、魔力で作られた実体の無い雷の刃を作り出した。

「雷光剣、安直なネーミングだが舐めると死ぬぞ?」

「そんなの…お前とこうして()ってる時に覚悟してるわよ!!!」

「良い度胸だ。尚良い。」

再び音速に近い速度で斬りかかる。

剣同士で触れると火花が散る程の、超高密度の魔力の刃。

何号か撃ち合いを続けると、キャルムにも遂に絶望が訪れる。

「どうやらそろそろ限界の様だな?」

「くっ……!」

剣にヒビが入ったのだ。それは戦いが終わりに近付いている合図でもあった。

「…もういい…分かったよ…」

剣にヒビが入った事で、戦意を失ったのか、がっくりと項垂(うなだ)れるキャルム。

だがアミンは確証していた。

「やっと本気を出してくれるのか?待ちくたびれたぞ!」

「周囲を…私の屋敷もできれば巻き込みたく無いから、出来るだけ抑えて(・・・)放出します。」

「おぉ……!!」

魔力のピリつきを感じ、アミンに悪寒が走る。

アミンに『恐怖心』という物はとっくの昔に存在せず、それは逆に高揚感と期待に近い物になっており、プレゼントを貰う前かの様なソワソワを見せる。

だがそれと同時に忘れていた者が一つ。

「あはっ!スルト!楽しくてすっかり忘れてた!お前死ぬかも知れないから見える範囲で離れろ!」

「離れろっつったってどこ行きゃいいんだよ?!」

「こいつの言ってる事は『まこと』だ。屋敷を巻き込みはしないだろうから、部屋で茶でも飲みながら見物しておれ。」

「言動とか行動が本当に冗談きついぞ…」

そう言いつつも屋敷の中へと入るスルト。

「スルトを殺さなくても良かったのか?」

「いい、この魔術なら最悪全てを飲み込めるから。」

それだけ濃密な魔術という事かー。

そう思ったアミンはまた期待を込めながら術の発動を待つ。

キャルムももう冷静では無かった。

術を展開するのにキャルム自身が無防備になるという絶対的な欠点があるのにも関わらず、術式の展開を続けている。

「我、五識(ごしき)の律(なり)数多(あまた)の識を通じ、全に告げる者也ー」

「詠唱が長すぎるなぁ…自身が最前衛ならとてもじゃないけど発動出来ないだろうに…」

冷静に魔術の、というか本人の欠点を判断するアミン、それに目もくれずに詠唱を続けるキャルム。

「我が魔力を喰らい、全を喰らい尽くす者…」

戒禁(かいきん)獄彩識(ごくさいしき)


超濃密な魔力の煙がある程度の範囲を保ってアミンを包み込む。

魔術のモチーフカラーの5色とは別の色も混ざっている事を、アミンは認識した。

「喰らい尽くせっ…!」

最早キャルムに目の虹彩が無い。純粋に『殺す』つもりで技を発動させた物だと分かる。

「ぐぅっ!?」

アミンに苦痛の表情が走る。身体の至る所で魔力のあり得ない反応が起こる。

片腕は爆散し、片腕は腐り、片脚は溶け、片脚は膨張し、脳は焼かれーーー。

アミンが跡形も無くなると、魔力中の意識の中、キャルムの背後を取ろうと蘇生した。

「またあいつ…俺の時みたいに驚かせようとしやがって…」

一部始終を館の中から見ていたスルトも呆れ半分に観戦していた。

「中々良い魔術だな。欠点だらけだが余地がある。よし、もうこれでー」

アミンが言葉を紡ぐ前に、再度苦痛の表情を浮かべる。

「なっ、何?!」

「この術はね、お前みたいな奴には果てしなく続く地獄みたいな物と同じよ。」

今度は骨だけ溶ける。身体中の水分が蒸発する。

見るも耐えない形となって再びアミンは消える。

「オイオイ!マジかよ…!!」

スルトも無敵だと思っていたアミンに対して、一瞬の不安を覚える。

時間としてどのぐらいだろうか、死んでは再生しを何度も繰り返す。

「よし、もう分かった。」

アミンが何度目かの復活を果たすと

そこに余裕の笑みを浮かべるアミンが居た。

「…その余裕も今のうちだぞ……?」

虹彩のない瞳で睨むキャルム。しかしアミンが言った通り身体への異変は収まっている様だった。

「な…に…?!」

「良くできた魔術だった。全属性の魔術に耐性を乗せて、通常の状態異常の魔術にオリジナルの術式を加えて…単純な状態異常でも全くの別物へと昇華させた魔術。」

膝から崩れるキャルムだったが、尚余裕の笑みを浮かべながら説明を続ける。

「それに加えて猛毒や魔術回路を切断させる様に仕掛けた術の編み込み…実に見事。」

ここでふっ、とアミンから笑みが消える。

「だがな、魔力量を気にせず使い過ぎだ。なんだこの高濃度と、さも死ぬ前提(・・・・)で使用されている魔力量は。」

聞いているかどうか分からない状態でキャルムを責めるアミン。いつの間にかスルトも館から出て、話を聞いている様だった。

「貴様程の魔力量や魔力の使い方があれば、確かにここら辺一帯は地獄と化すだろうな。だがやりすぎ(・・・・)だ。さては自分で作った禁術(ゆえ)に、使用回数も程々に使えるかどうかの確認だけで使用を控えてきたな?」

「それが……どうした…」

辛うじて話は聞いて、最低限の受け答えは出来る様子。アミンはその禁術の中で、魔術を収束させる。

「一度、休め。話はその後だ。」

体力、魔力共に限界が来ていたキャルムを寝かすのに、アミンはそう苦労はしなかったー。

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