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嘘つきな夫の本当を知りたい

作者: 小倉桜

 私の夫は嘘つきだ。

 昔からずっとそう。

 私はそれを見抜いては夫に言っていた。


 夫は、当たっていても外れていてもを教えてくれた。

 そういう冗談みたいな嘘が好きなんだ。

 でも、今回は違う。


 今日は――



「ごめんね。今日、帰り遅くなる」

「わかったわ」



 ――という電話での会話を終えたばかり。


 これはもう……。






 浮気だわ。






 そうに違いない。

 だいたい私の夫は嘘をつくときに口調が淡々としたものになるという特徴がある。


 ここ一、二カ月くらい二週間に一度くらいの割合で帰りが遅くなるという電話ももらっている。


 その時の会話はこんな感じ。


「ごめん。今日は飲み会があってさ」

「わかったわ」


 その次は、


「今、駅で中学時代の友達と会っちゃって。これから飲みに行ってくる」

「わかったわ」


 そして次は、


「ごめん。今日の分の仕事終わってないんだ。これを終わらせてから帰る」

「わかったわ」


 と、こんなもん。


 もう何年間一緒にいると思っているのだろうか。

 嘘なんて全部お見通し。

 それは向こうもわかっているはずなのに、のことを言ってくれない。

 今回ばかりはいつもと違う。明らかに怪しかった。


 冷めたご飯を見つめながらこんなことを考えていたらいつの間にかかなりの時間が経っていた。


「ただいま」


 その時、玄関で声がした。

 私は玄関に向かう。


「おかえりなさい」

「また起きていてくれたのか」

「ええ。あなたに話があって」

「話?」


 そう、大事な話が。


「離婚しましょう」

「は?」

「離婚よ。離婚。私たち、別れましょう」

「え、なんで急に……?」

「だってあなた!ここ一、二カ月の間二週間に一度くらいの割合で遅く帰ってくるじゃない!嘘までついて!浮気してるんでしょ!?私がわからないとでも思ったの!?何年の付き合いだと思ってるの!!」


 私は夫に怒鳴り散らしていた。

 夫はつらそうな表情をして、口を開いた。


「実は――」


 その時だった。

 夫は急に胸を押さえて床に倒れこんでしまった。

 苦しそうに呻いている。


「ちょっとあなた?どうしたの?ねぇ!冗談でしょ!?きゅ、救急車……!」


 私は急いで、電話をした。



※※※



「〇〇時△△分。ご臨終です」

「なんで……なんで……」


 夫が……死んだ……?


「おや?奥さん。聞かされたなかったのですか?」

「……え?」

「あなたの夫は二カ月ほど前に末期ガンになっていたんですよ。それで、わたしのところに頼みに来て、奥さんにばれたくないから仕事帰りに寄らせてくれと」

「…………」


 言葉が出なかった。

 だって私は――。






 そんな、知りたくなかった。

思いついたそのまま考えながら書きました。

読んでくださり、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後のオチに、かなり意表を突かれました。 [気になる点] 末期ガンの患者は、まず普通に生活することができないので、夫の言動にはかなり無理があるなと感じました。 [一言] ガンで身内を亡くし…
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