白い空間
4000文字にみたないけど取り敢えずこれでスタートラインに立てます。そしておやすみなさい。
なんなんだろうこの状況、なんて思うのは当然だろう。
何時ものように出かけようとしたら真っ白な空間にいたのだから。
いや、真っ白というのは正確な表現ではない。目の前には幻覚でなければ立派な机と椅子、そして何故か空間にぽかんと存在するこれまた立派な扉があった。
「いや、確かに俺があんなことできるから他にもこう言った事例はあるんじゃないかなんて親父達とも話した事はあるけどそれが今さら起きるなんて思っても見ないって・・・」
まるで驚いてもいないようだったが困惑しているとガチャリと扉を開ける音がした。
「コウさん、でしたね?立ったままというのもなんですからお座りください」
扉から現れたのは美しい女性だった。まるで天上の調べとも思えるような美しい声でそう言うと目の前にとても座りごこちの良さそうな1人掛けのソファが出現した。
進められるがまま座り女性の様子をなんとなく観察する。
腰まで伸ばされた髪はまるで金砂のように輝いており顔立ちは美しく整いつつもどこか見るものに優しげな印象を与えるだろう。
「さて、さっそくなのですが提案があります。こちらの世界とは違う所謂異世界にいって見ませんか?」
「唐突に本題きちゃったよ!最近だと有無を言わさずボッ〇ュートとか微妙な能力与えられちゃったりとかそう言うながれじゃないの!?」
唐突すぎて思わず失礼の無いようにしなきゃなんて考えが吹き飛んでしまった。
「流石になんの説明も無く異世界に放り込む訳には行きませんよ。あなたを此度こちらに招いてお話ししてるのはこちらの事情があってこそのものですから」
事情と来たか、これはまさか少し前から伝統とも言える「力を上げるから世界を救ってよ!」とかそう言うパターンのやつだろうか。
「いえ、別に世界を救ってだとかそう言う事ではありませんし迫害されている種族をなんとかしと欲しいだとかましてやあなたが死んだので生まれ変わって見ませんかみたいな話でもありませんのでご安心ください。もちろん勇者召喚の類でもないです」
「あらかたの定番を潰されると逆に不安しか感じないんですけど!?というかしれっと心読まれてる?神さまだからか!?」
「ええ、神様なのでこの程度余裕です」
「余裕なんだ、そしてやっぱり神様なのか・・・」
「それで理由なのですが・・・あなたがよろしければこちらの世界に遊びに来てみませんか?」
「遊びに行くって・・・一体どう言う事ですか?」
「言葉の通りです。あなたにこちらの世界で楽しんでもらいたいと思いまして」
どうやらこの女神さまは俺に異世界で遊んで欲しいらしい。正直今一つ意味がわからない。これならテンプレ的な理由の方がまだ納得も理解もできるだろう。
それに俺が行ったところで女神さまになんのメリットもあるようには思えなかった。
「メリットですか?正直なところメリットを目的とした招待では無いのですがそれらしいものはありますね」
「あ、一応あるんですね。それってもしかして・・・」
俺が出来るちょっとしたこと。現代ではちょっとしたどころではないことかもしれないがもしかしたら異世界ではそれがなんらかのメリットになるのだろう。
「ええ、もちろん工学や科学的な技術、食文化などの文化交流による発展の可能性です」
「ええ、そっちですか!?確かに比較的まともな理由かもしれないですけれどそれって別に俺である必要無いじゃないですか!それに可能性ってことは別に発展しなくてもいいって言うような言い方じゃ無いですか」
「だから言ってるじゃないですか。メリットを目的としてるわけではないと。それにこちらでは珍しいあなたの能力を目的としてる訳では無いと一応言っておきますね」
だから言い方ぁ!なんて思わず心の中でツッコミを入れてしまう。しかしそれならなんで俺を・・・。
「特別何かをして欲しいという訳ではありませんがあなたの能力があなたを選ぶ理由にならなかったと言うと嘘になってしまいますね」
「じゃあやっぱり・・・」
「ええ、こちらの世界を楽しむのに便利そうじゃないですか」
「ええ・・・?」と思わず困惑してしまう。どうやらこの女神さまは本気で俺に異世界で遊んで欲しいようである。
「取り敢えず異世界についての説明をしてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。話を聞かない内には判断のしようも無いので」
「では、こちらの世界の名前はバルディアと言います。
5大陸に分かれていて四季があり一年はおよそ400日。
太陽(のような恒星)と月(のような衛星)は地球と同じで一つずつ。
1日は約30時間。
あなたが最初に転移することとなるのは日本と似た気候が基本的なバルディア中央大陸の三大国家の一つであるアイゼン王国に属するファラス侯爵領の納める都市のすぐ近くです。
基本的にこの世界では話せる人の形をした生物は〇〇人族と呼ばれるかこちらの世界で言うエルフ族やドワーフ族、ゴブリン族と言った風に呼ばれるが魔人族を魔族と呼ぶのは蔑称にあたりとても失礼なのでやめた方がいいでしょう。
どの種族をどう呼ぶと蔑称になるかはファラスにある図書館で調べられます。取り敢えずそれまでは見た目の種族に人族を付けて言えば最低限なんとかなるはずです。
そしてあなた型で言うファンタジーにおける魔物という存在はこちらにもいます。
魔物とは定義上「魔素によって進化あるいは変質した生物、もしくはその生物の繁殖行動によって生まれたものである」とされます。
当然普通の動物もいますがこちらの世界と同じく肉食のものであれば遭遇時に襲ってくる可能性もあるので注意してください。
魔法もあります。やりましたねコウさん、魔法が使えますよ。
ああ、俗に言うスキル、レベルなんかもありますね。まあスキルの説明については後の楽しみに取って置いた方がいいでしょう。
レベルと言うものが存在するにあたり当然ステータスも存在してきますが・・・そうですね、単純な肉体においてはステータス基礎値に対する補正値と言う言い方がわかりやすいでしょう。
魔法だとまた話は変わってくるのですが単純な肉体能力においてはレベル1、筋力値が30で肉体的な性能が全く同じである人物が2人いたと仮定します。当然全く同等であるため能力は全く同じです。ですが片方が筋肉モリモリマッチョマンだとマッチョマンの方に軍牌が上がります。
まあレベルが違うとまた話は変わってきますが。ええ、そちらで言うダン〇〇みたいな物です。文字通り「レベルが違う」んですよ。とは言ってもレベルが一つ違うだけで文字通りの差が出るようになるのはそれなりレベルになってからですけどね。
取り敢えず今すべき説明はこんなところでしょうか?」
でしょうか?と言われても判断に困る。どうやら最初はそれなりに大きな町のすぐ近くに転移させてもらえるらしい。
その点については不親切系異世界転移ものにありがちなボーイミーツガール的なイベント(場合によってはおっさん)が発生することも無いので日本でぬくぬくと暮らしていた人間には有情な対応なのだろう。
楽しんでくれと言っている以上町には入れませんでしたなんて悲しい事件が起こる可能性も無いはずだ。
「何か質問はありますか?」
そんな事を聞かれても正直聞きたい事だらけだ。でもこれだけは聞いておくべきだろう。
「そうですね、その・・・向こうでもし死んだ場合ってどうなるんですか?あと向こうで死ななかった場合でもこっちに返ってくる事は可能なんでしょうか」
重要な事だ。死んだら死んだで終わってしまう可能性もあるしそれはそれでしょうがないとも言える。なんせファンタジーの世界で魔物もいるとすれば命の危険もあるだろう。それに向こうで楽しめなくて戻りたいとなった時に戻れない、なんて事になったらと思うとゾッとする。
「こちらの世界で死んだ場合と帰る事が可能かどうかですか?
もちろん死んだ場合は向こうに転移した時間と全く同じ時間にこちら側で蘇生させていただきます。支障があるかもしれないので死亡関連の記憶に関しては操作させていただく事になりますね。それと帰る場合は同様に同じ時間のこちらに送らせていただきますが残念ながらこちらに再度来る事は出来ません。盟約上機会は1人につき1度のみと言う事になっておりますので」
「じゃあ行ってみたいです!」
これを聞いてしまえば迷う必要なんてなかった。今までの話は一体なんだったんだよとツッコミたくなるぐらいの即答ぶりである。
まあある意味仕方ないことではあるのだろう。男たるもの一度は憧れるファンタジーの世界である。たとえなんらかの能力が貰えなかったとしてもそれを補うだけの魅力が多大にあり(主にエルフとかネコミミイヌミミキツネミミ獣人だとか合法ロリだとかetc)そこにノーリスクで行けるとなったら悩む必要があるだろうか?いや、ない。
誰だってそうする俺だってそうする。みんなだってそうするだろう?
そんなこんなでコウは異世界へと行く事を決意する。
とは言っても遊びに行くわけであるがまあこんな転移系ファンタジーがあってもいいはずだ。
取り敢えず投稿したものの説明文が短いなぁと思うので(十分長い)後日追記する可能性があります。
感想、誤字脱字報告お待ちしております。