第二章 チームワーク、そして何の為に戦うのか
ジェイク達四人がW・E・Mに入隊して早いこと数カ月が経った。
四人は毎日の訓練により、最初の頃とは比べものにならない程、能力を上げていった。
先程も訓練を終えた所である。
「よし、訓練はここまでだ。
皆、以前よりも腕が上がってきたな。」
ヘルメットを外しながら、デニーが言う。
「ふう……。」
ジェイク達もヘルメットを外す。
額には汗がしたたる。
「毎日、どこかの鬼リーダーにしごかれてるからな。
当然だろ?」
と、言いながらジェイクが笑う。
「鬼リーダーはいくら何でも……。
でも、僕も前より能力が上がったのを感じるよ。」
スポーツドリンクを飲みながらセレンが言う。
「確かにな。
だが、まだまだ鍛える所はありそうだな。」
「そうね、皆頑張ろう!」
ディンとレナの言葉にデニーは頷く。
「二人の言うとおりだ。
いくら能力が上がったとはいえ、そればかりに頼ってはいけない。
それにお前達は何の為に戦っているのか、隊員としての自覚、チームワーク、何より人々の命を守る事の大切さ、これらを決して忘れないでくれ。」
デニーの言葉に四人は頷く。
その時、
「緊急指令!緊急指令!
エリア4ーEにてゼクト出現!
ただちに急行せよ!」
「皆、出動だ!」
「了解!」
四人はすぐさま転送室へ向かう。
この転送室にあるカプセルに入ることで、瞬時に現場へ向かう事が出来るのである。
カプセルに入り、端末を操作する。
「転送開始まで、3.2.1……」
そして。
「転送!」
四人は瞬時に現場へ転送された。
逃げ惑う人々、破壊される町。
そこに四人は転送された。
するとそこにいたのは、
「ハハハ!
弱気人間共よ、せいぜい逃げ惑うがいい!」
両腕に重火器を装備したゼクト、ガンゼクトがいた。
「よせ、そこまでだ!」
ジェイク達が駆けつける。
「ん?
確か貴様らはエキスパート・ポリスか。
わざわざやられに来たのか!」
「悪いが、倒されるのはお前だ!」
「ふん、戯言を!
かかれっ!」
と、同時にウォーリアーが襲い掛かる。
それらを素早く倒していく四人。
「己……、これでどうだ!」
ガンゼクトの両腕から弾が発射される。
それを素早くかわし、チェンジカードを手に持つ。
「これ以上、好き勝手させるか!
皆、変身だ!」
「了解!」
ジェイクの言葉に三人は頷く。
そして
「チェンジ イグニッション!」
チェンジャーブレスにカードをスキャンさせる。
瞬時にスーツが装着される。
「行くぞ!」
四人は一斉にガンゼクトへ向かって行く。
ガンゼクト弾を乱射する。
それをガードしながら、デルタブレードで斬りかかる。
しかし、腕でガードされる。
「ふん、のろまめ!」
「しまった!?」
一瞬の隙を突かれ、攻撃を喰らう。
吹き飛ばされるジェイク。
「ジェイク!」
残りの三人も立ち向かうが、今度はショットガンで吹き飛ばされる。
「どうした?
この程度か!」
「てめえっ!」
挑発に乗ったジェイクは一目散に駆け出す。
「よせ、ジェイク!」
ディンが叫ぶ。
しかし、ジェイクは聞く耳を持たない。
デルタガンを連射しながら、ガンゼクトに向かって行く。
「ふん、狙いがばらばらだぞ!」
攻撃をたやすくガードし、ロケットランチャーを構える。
スコープでジェイクをロックオンする。
そして
「喰らえ!」
ロケット弾が発射される。
「!?」
「ジェイク!!」
三人が素早くジェイクの前に立つ。
ロケット弾は三人を直撃した。
その場に倒れる三人。
「みんな!!」
ジェイクが我に返り、三人の元へ駆けつける。
「セレン、ディン、レナ!!」
三人はスーツのおかげで重症はまぬがれたが所々、傷を負っていた。
「所詮はこの程度か。
大したことなかったな。」
そしてガンゼクトは四人に再び狙いを定め、引き金を引いた。
「……。」
しかし、銃口からは何も発射されなかった。
「ち、エネルギー切れか。
まあいい、次こそはお前達を始末してやる!」
そういうと、ガンゼクトは姿を消した。
ジェイクを除く三人はすぐさま手当を受けた。
ジェイクはただ一人、指令室に呼び出されていた。
「こうなったのは、ジェイク、お前の責任だ!
お前の身勝手な行動がこんな事態を引き起こしたんだぞ。」
ジェイクはただうなだれるだけだった。
「前にも言ったはずだ。
仲間とのチームワークがどれほど大事か、忘れたのか?」
そしてデニーは
「ジェイク、今のお前に世界を救う資格はない。
何の為に戦っているかをよく考えるんだ。
そして今回の事を十分に反省するんだ。」
それだけ言うとデニーは去って行った。
ジェイクは一人、公園のベンチに座っていた。
自分の身勝手な行動のせいで、仲間達を……。
そんな自分が憎いとまで感じた。
「俺は一体、何の為に……。」
答えはすぐには見つからなかった。
その時、ジェイクの視界に一人でお母さんと泣き叫ぶ女の子がいた。
どうしたのかと、女の子に歩み寄り、話しかける。
「どうした?
お母さんとはぐれちゃったのか?」
女の子は小さく頷いた。
「そっか、でもな、いつまで泣いてても仕方ないだろ?
安心しろ、お兄ちゃんが一緒に探してあげるからな!」
と、女の子の頭を撫でた。
その後、ジェイクのおかげですぐに母親を見付けることが出来た。
母親も女の子を探していたようだ。
「本当にありがとうございました。」
深々と頭を下げるお母さん。
「お兄ちゃん、ありがとうっ!」
先程の泣いていた顔はどこへ行ったのか、女の子の今の表情は満面の笑みだった。
そしてジェイクに手を振る。
ジェイクも笑顔で手を振った。
その時ジェイクはハッと気付いた。
あの親子の幸せそうな笑顔、更に見回すと、幸せそうなカップル、元気一杯に遊ぶ子供達。
この幸せを守りたい……!
ジェイクは心の底からそう感じた。
本部に帰還したジェイクは三人の病室へ向かった。
すると、扉から三人が出てきた。
「ジェイク。」
「皆……。」
「怪我ならもう大丈夫だよ。
だから気にしないで。」
するとジェイクは頭を下げた。
「皆、ごめんっ!」
突然の事に驚く三人。
「どうしたのさ?」
「ジェイク……?」
「……!」
「俺の身勝手な行動のせいで皆を傷付けてしまって、本当にごめんっ!
もう二度と、あんな馬鹿な行動はしないって誓う!
いかに皆とのチームワークが大切か分かったんだ。
だから、もう一度、皆と戦わせてほしい!」
それを聞いた三人は笑みを浮かべ、ジェイクの名を呼んだ。
「いきなりでびっくりしたけど、僕達はいつだってチームでしょ?」
「ああ、どうやら大切な事に気付いたようだな。」
「勿論よ、ジェイク。
今度こそ、ミッションを成功させましょうっ!」
「ありがとう……皆。」
四人は頷いた。
四人は真っ先に指令室へ向かった。
「どうした、皆?」
するとジェイクがデニーの前に立ち、
「デニー、俺はやっと分かった。
いかに自分が愚かだったか分かったんだ。
いかにチームワークが大切か、そして何の為に戦うのか。
だからもう一度、俺達にチャンスを与えてほしいっ!」
「ジェイク……。」
デニーはジェイクの真っ直ぐな眼差しを見ると頷いた。
「分かった。
もう一度、お前達の決意を信じてみるとしよう。」
「ありがとう、デニー!」
そしてジェイク達四人が頭を下げる。
「よし、さっきのガンゼクトだが奴は攻撃をするたびにエネルギーを消費する。
そしてエネルギーが切れた瞬間、奴は攻撃が出来なくなる。
そこを一気に攻めるんだ。」
「了解!」
再び、転送カプセルに入り、現場へ転送される。
ジェイクは今度こそと、強く拳を握りしめた。
現場へ転送されると、ガンゼクトが待ち構えていた。
「ふん、今度こそ貴様らの最後だ!
覚悟しろ!」
「それはこっちの台詞だ!
皆、行くぞっ!」
「了解っ!」
再び変身する四人。
デルタガン、ブレードを構え、ガンゼクトに立ち向かう。
今度は一人一人バラバラに散り、敵を混乱させる。
「己、ちょこまかと……!」
やみくもに攻撃を放つガンゼクト。
しかし、同じ手は喰らわないと、四人は攻撃をかわしていく。
そして
「しまった!
エネルギー切れかっ!?」
「よし、今だっ!」
それを合図に四人は一斉に攻撃を喰らわせた。
吹き飛ぶガンゼクト。
「くっ、調子に乗るなよ!」
エネルギーをチャージしたガンゼクトはそこで逃げ遅れた一人の泣いている男の子を見付けた。
「ふん、うるさいガキめっ!」
狙いを定め、引き金を引く。
しかし、ジェイクが真っ先に男の子の前に立ち、男の子を庇った。
「くっ!」
ダメージを喰らうジェイク。
しかし、何とかこらえる。
「大丈夫か?
早く逃げるんだ!」
男の子は頷き、その場を去った。
「何故だ!?
何故、自分を犠牲にしてまでちっぽけな人間を守る?」
「俺達は決めたんだ。
人々の幸せと笑顔を守ると!
それを壊すお前を、ゼクターを、俺達は絶対に許さない!!」
決意を固めたジェイクの言葉に三人も頷く。
そして
「メシア1ジェイク・マクロード!」
「メシア2セレン・リラード!」
「メシア3ディン・リーデン!」
「メシア4レナ・アンケリー!」
{ワールド・アース・メシア出動!」
デルタガンのスロットにカードをスキャンさせる。
ガンゼクトの攻撃をかわし、一斉に放つ。
吹き飛ぶガンゼクト。
「よし、トドメだ!
ディバイトラント・ランチャー転送!」
瞬時にディバイトラント・ランチャーが転送されてくる。
四か所のスロットにそれぞれメモリをセットする。
エネルギーをチャージ。
そして
「ディバイトラント・シュート!!」
強力なビームがガンゼクトを貫いた。
「ぐわあああ!」
叫び声を上げ、ガンゼクト爆発した。
四人はそれぞれ、顔を見合わせ笑いあう。
「ミッション、コンプリートッ!」
その後、本部へ帰還した四人。
「皆、よくやってくれた。」
するとデニーが
「ジェイク、そして皆。
もう一度、お前達を信じて正解だったな。」
「デニー……。」
「チームワークの大切さ、そして何の為に戦うのか、分かったみたいだな。」
「ああ。
俺達は人々のかけがえのない幸せと笑顔を守る為に、戦っていくよ。」
頷く三人。
頼んだぞ。と、デニーはジェイクの肩を叩いた。
何の為に戦うのか、ジェイク達はその答えを見つけた。