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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

約束の針千本

作者: 月影 ゆかり

「大きくなったら、結婚しよう」


そんなセリフを聞いたことは、ないだろうか?


僕も幼稚園ぐらいの頃、ある女の子と約束したものだ。



その女の子とは、とても仲が良く 一緒に遊んだりもした。


よく行っていた公園もあった。


大きな滑り台が特徴の公園だった。


その滑り台の下、 女の子が僕に言ったのだ。


「大きくなったら、結婚しよう」


女の子は、少し照れくさそうに言っていたのを覚えている。


僕は笑顔で言った。


「いいよ! 約束!」


女の子は、コクリと頷き小指を出す。


僕も小指を出し、女の子の小指に絡ませる。


「嘘ついたら、針千本、飲ーーます! 指切った!」


小指を離し、きゃっきゃと喜んだものだ。




それから、女の子は幼稚園を卒園する頃には引っ越して行った。


あれから、一度も会っていない。


そして 年月も流れ、僕は高校生になり彼女もできた。


もう、あの女の子との約束もほぼ忘れていた。


まぁ、幼稚園の頃だったし今は変わってるだろうと思っていた。


女の子の名前さえ、僕は覚えてはいなかった。


まさか、その女の子がまたこの地へ引っ越して来たとは 夢にも思っていなかったのだ。



大きな滑り台の公園で、僕は彼女と一緒に話していた。


笑顔が可愛い彼女だ。


だんだんと良いムードになってきて、僕たちはキスをした。


瞬間、ガサッという音が花壇の奥の草むらから聞こえた。


鳥か何かだろうと、2人とも気にも留めなかった。



僕達はあれから数日後、別れた。


原因は、わからなかった。


ただ、それから彼女はできなかった。



そして大人になり、安定した職にもついた。


その職場で僕には彼女ができた。


何度かデートを重ね、プレゼントをし やっと結婚までいけたのだ。


そして、明日はついに結婚式。


僕は部屋で準備をしていた。


彼女、いや 花嫁は今日の夜ご飯の買出しへと出掛けていた時だった。


ピーンポーン

家のチャイムが鳴り響く。


誰だろ?


「はーい」


僕は返事をして、玄関へと向かう。


ドアを開けると、そこには女性が立っていた。


黒髪の長い、綺麗な女性だった。


「どちらさまですか?」


見覚えがなかった。


花嫁の友達だろうか?


「咲本 恵美子です。 久しぶり。」


咲本恵美子… あ、まさか! あの幼稚園の頃の。 約束をした… あの女の子!


「ひ、久しぶり」


どうしよう。 でも、あんな幼い頃の約束なんて覚えちゃいないだろう。


でも花嫁には見せたくない。


「何しに来たの?」


一刻も早く帰ってほしい。


「約束。 覚えてるよね?」


「え、 いや、まぁ。 」


咲本恵美子はにっこりと笑った。


「裏切り者。 約束を破ったら針千本だよ。」


咲本恵美子は、針をカバンから出してきた。


「な、何するんだよ!?」


僕は後ろへと後ずさる。


咲本恵美子も一歩一歩近づいてくる。


ドアがパタンと閉じられた。


咲本恵美子は、僕を押し倒し 針を一本一本口の中へ入れてくる。


「針千本、飲んでね? せっかく千本持ってきたんだから」


「うぐぁ。 おぇ。 ぐほぉ」


口の中から大量に血液がドバァッと溢れ出てきた。


熱く、そして痛く。


嗚咽から無言へと変わる。


誰か、助けてくれ。


咲本恵美子はまだ針を入れてきていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただきました。 主人公は約束なんてしなきゃ良かったと後悔したかもしれませんね。
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