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02 ドラゴンのアリア


俺たちはとりあえず、お互いに自己紹介をすることになった。



「とりあえず、ご主人様は止めてもらおうかな」


「ダメなの?」


「んー、なんかその呼ばれかただと、むず痒くてさ」



一般市民の俺がそんな呼ばれかたに慣れるわけない。そんなのはメイド喫茶に行ったときだけで十分だ。



「ふーん、変なこと気にするのね、じゃあなんて呼ぶの?」


「普通に名前でいいかな、春樹って呼んでくれ」


「分かったわ、ハルキ!」



うん、こんな可愛い子に下の名前で呼ばれるのも慣れない、ちょっとドキドキしてしまう。まあ名字で呼ばれるのも何だし、慣れるしかないだろう。



「それで、君の名前なんだけど……」


「誇り高き種族、エンシェントドラゴンよ!」


(やっぱりか、でもそれって人で言うと、人間の日本人です的な感じだよな)


「まあそうなんだけどさ、もうちょっと女の子らしい呼びやすい名前とか……」


「真名をつけてくれるの!?」



俺が呼びやすい愛称なんかをつけようと思ったら、彼女がすごい勢いで食いついてくる。真名ってそんな大層な物つけるつもりじゃなかったんだけど。


チラッと彼女を見ると、爛々とした目で俺を見ている。ここで違うとは間違っても言えない。言ったら最後俺は、さっきのモンスターと同じ運命を辿りそうだ。



「おっおう、そうだな……アリアってどうだ?」


「アリアね!うん、気に入った!」



彼女、アリアはすごく嬉しそうだ。よかった気に入ってもらって。ふと気になって鑑定のスキルをもう一度使って彼女を見てみる。




アリア 種族(ドラゴン)


 スキル 火属性魔法

     状態異常無効

     飛翔

     古竜魔法



名前がアリアに変わっている。それにしてもドラゴンって最強じゃないのか?しかもスキルの古竜魔法か……とんでもないことになりそうだから、とりあえず置いておこう。



「アリアとりあえず、町とか人が住んでそうな場所って分かるか?」


「ちょっと待って、上から見渡してみるから」



そう言うとアリアは、地面から浮かび上がり、そのまま森の木よりもさらに高く飛んでいく。やっぱりドラゴンだから飛翔なんてスキルがあるんだろうか。俺も是非欲しいスキルだな。


        

「ハルキー! 向こうに町が見えるわー!」      


「おう! 一度降りてきてくれー!」  



アリアが俺の目の前に降りてくる。というかスカートの中が丸見えだな。

初期装備なのか、武器や防具はなかったが。洋服はきちんと着てたからな、

神様グッジョブだ。



「白か……」   


「何か言った?」


「いやなんでもない」


「そう? あっ町だけど、ここから15分も飛べばつくわ」



飛んで15分か、歩きだとけっこうかかるな。森の中じゃ真っ直ぐ進めないだろうし。



「アリアの飛翔で、俺も一緒に運べるか?」


「もちろんよ!」


 

俺が聞くとアリアは誇らしげに胸を張る。どうやって運ぶんだ? そう聞こうとした瞬間、俺の体はアリアに抱き上げられていた。



「へ?……アリア?」


「じゃあいくわよ、しっかり捕まってなさい!」


「まっ待て、さすがにこの格好はっ……」



俺の抵抗むなしく、アリアと俺は空に舞った。そうアリアが俺をお姫様抱っこしてだ。流石はドラゴンだ、びくともしなかった……と言うかこれなんて罰ゲーム? 普通逆だろ? そんな事を考えていると、あっという間に50メートル位までの高さに来ていた。



「す、すげえ……これが異世界か……」



俺はその雄大な景色に柄にもなく、感動していた。そして遠くに防壁に囲まれた大きな町が見える。



「あそこに見えるのが町ね、じゃあ進むわよ!」



そう言うとアリアは町に向けて飛んでいく、かなり早く感じるが、軽く80キロ位は出ているだろう。


しばらくすると重大な事実に俺は気づいた。アリアの胸が俺に当たっていることに。うん、たまにはお姫様抱っこもいいかもしれない。


そんな幸せを感じている間に、森を抜けた先の街道が見えてくる。



「アリア、ちょっと右にそれて街道の手前で降りよう」


「なんで? このまま町にいけばいいじゃない」


「いや町の人間に見られると、騒ぎになるかもしれないし、いきなり悪目立ちしたくないだろ?」


「ふーん、よくわからないけど、ハルキがそう言うならいいわ」



いきなり空から人が飛んできたら警戒されるかもしれないし、こんな姿を人に見られるわけにはいかない。さすがに俺のなけなしのプライドがそれを許さない。



「あの辺に降りよう」


「分かった、じゃあ降りるわよ」



俺たちは街道近くの森の中に降りていくと、人の叫ぶ声が聞こえてくる。


「なんだ?」


アリアに降ろしてもらい、木の間から街道の方を覗くと荷馬車が盗賊らしき10人くらいの集団に襲われていた。護衛らしき人も2人ほどいるが、数で押されてる。



「うそだろ……いきなりこんなイベント発生かよ」


「ハルキどうする?」



俺が目の前の状況に狼狽えていると、アリアが好戦的な目でどうするかたずねてくる。


「なんとかできるか?」


「もちろんよ! 私を誰だと思ってるの?」



見ず知らずの他人とはいえ、目の前で殺されたら目覚めが悪いし、鑑定で盗賊達を見た限りだとスキルも危険そうな物は無いし、アリアなら傷ひとつ負わないだろう、それに情けないけど今の俺じゃあどうやっても助けられない。



「悪いアリア、あの人達を助けてやってくれ」


「了解したわ!」



そう言うと同時にアリアは飛び出し、まず最初に手前にいた1人を走った勢いのまま、飛び蹴りで吹き飛ばす。


「ぐえっ!」


あまりの勢いにそのまま2人巻き込んで、ぶっ飛んでいってしまった。


(すごいな20メートルくらい飛んだんじゃないか?)


「なんだぁ! アイツは!」


「全員で囲んでやっちまえ!」



そこで盗賊達もアリアに気づき、一斉に襲いかかる。だがアリアは森でモンスターに放ったような魔法を使う気配がない、どうやらアリアは近くに荷馬車があり、人を巻き込むのを恐れて、魔法を控えているみたいだ。俺は荷馬車を避難させるために叫ぶ。



「おい!あんた達、今のうちに逃げろ!」


俺の声にアリア以外全員が、こちらに注目する。そこで荷馬車が移動を始める。


(よし! うまく動いてくれた)


「アリア! 頼む!!」


「ナイスよハルキ!」


アリアは手のひらを盗賊達に向け、直径2メートルくらいの炎の塊をつくりだす。


「喰らいなさい! 『ファイヤーボール』!!」



アリアのかけ声と共に、凄まじい速さで炎の塊が飛んでいき、盗賊達の数メートル手前に着弾する。そしてその爆発の余波で、盗賊達は全員吹き飛んでいった。



「ストライクだアリア!」



俺がそうアリアに叫ぶと、彼女は満面の笑みでピースサインを送ってくる。


そしてアリアと合流すると、先ほどの荷馬車がこちらに戻ってきた。



「いやー、本当に助かりました。あなた達がいなかったら、今頃どうなっていたことか……」


「無事でよかったですよ」


「まあ私にかかれば、あんな連中楽勝ね!」



どうやら彼らはこの先の町、コールスという町らしい、に行商に行く途中だったらしい。そこを盗賊達に襲われたようだ。



「おっと、名乗るのが遅れましたが私は商人のコットンといいます」


「俺はハルキと言います。こっちがアリア」


「おお! 先ほどの魔法使い殿ですか! お美しい上にあんなにお強いとは」


「当たり前よ!」


アリアは誉められて上機嫌だ。


「俺たちからも礼を言わせてくれ、本当にありがとう。今回コットンさんの護衛を請け負った、冒険者のギルだ。こっちがマース」


「面目ない、君たちがいなかったら本当に危なかったよ。あいつらはこの辺の森を根城にしてる有名な盗賊団でね。数も多くて奴らの頭には、金貨100枚の賞金がかかってるくらいだ」



護衛のマースさんが盗賊達について教えてくれる。あれで全部じゃないらしい。

それより俺が心引かれたのは、盗賊の頭にかかった金貨100枚の賞金だ。次のガチャ召喚の為にも、是非とも捕まえたい。



「盗賊団の根城は、分かってるんですか?」


「いや、それは分かってないらしい、もしかして討伐する気か?」


「まさか、ちょっと気になっただけですよ」


「ならいいが、やつらの首領は魔剣の使い手らしくてな、今までも何人もの人間が奴を狙ったらしいが、全員返り討ちにされてるらしい。手は出さないほうがいいぞ」



アリアに敵うやつなんて、そうそういないだろうけどな、ここは一端町に行って情報収集して、しっかり準備するべきだな。



「それでこの盗賊達はどうするんですか?」



先ほどアリアにやられた盗賊達は、マースさん達にロープで縛られて一ヶ所に集められている。まさに死屍累々と言ったかんじだ。



「そうですな、町で衛兵に通報して、捕まえてもらいましょう。この怪我なら当分動けないでしょうし」


「わかりました。それじゃあ町に行きましょうか」



コットンさんの提案に俺は了承する。よかったこの場で殺すとか言われなくて。まあすでにアリアに半殺しにされてるけど。



「そういえばお二人は、荷物などは?」


森から飛んできました、とは言えない。適当に誤魔化そう。


「実はモンスターとの戦闘中に馬に逃げられまして、その時に荷物も全て無くしてしまって」


「そうでしたか、それでしたら助けて頂いたお礼に、少しばかり色をつけましょう」


そう言ってコットンさんが、金貨5枚入った袋を渡してくれる。


「ありがとうございます」


「いやいや、それくらいしかお支払いできないのが、大変心苦しいですが、どうかご容赦ください」


「いえいえ十分ですよ」


正直金貨5枚ってどれだけの価値があるかわからないが、今日宿に泊まるくらいは楽勝だろうし、今後の事は宿についてから考える事にしよう。

それから俺とアリアも荷馬車に乗せてもらい、コールスの町に向かった。





所持金 金貨5枚

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