01 プロローグ
俺の名前は上島春樹、19歳で独身だ。現在俺は窮地に立たされている。
今流行りの携帯ソーシャルゲーム『モンスターバトル』略してモンバトにハマっていて、そして新イベントの限定モンスター、エンシェントドラゴンを出す為に課金をしまくった結果……気がつけば今月の給料を全てつぎ込んでしまった。もはや中毒かもしれない。
「どうすんだこれ……家賃も払えないぞ」
しかも、給料の全てをつぎ込んだにも関わらず、未だに希望のモンスターが出てくれない。残るチャンスは一回、これで出なければ消えていった俺の諭吉達も浮かばれない。
「ちょっと外の空気を吸ってくるか……」
アパートの外にでて俺は深呼吸をする。泣いても笑ってもこれで最後だ。
俺は気合いを入れ直し、携帯を取りだし念を送る。
「頼むぞ~、俺はこの最後一回に全てを賭ける!」
そして最後のガチャを引こうとした時、突然襲うものすごい衝撃。
(あれ……? 何で夜空なんて見てるんだ?)
俺は居眠り運転で突っ込んできた車にはね飛ばされていた。そして再び襲う衝撃、俺は地面に落下していた。
「なん……だ、これ……俺は」
激痛で意識が朦朧とする中、手に握っている物に気がつく。
「携帯……か、最期の……チャンス」
だがもうすでに、俺は指一本たりとも動かせない。
(ちくしょう、恨むぜ神様……)
俺は結局最後のガチャを引けず、神様に愚痴を溢しながら短い人生を終えた。
(るき殿……上島春樹殿)
俺は誰かに呼ばれる声で、目が覚める。回りには何もない真っ白な世界、
あるのは俺の体だけだ。
「だれだ?」
(ようやく目覚めましたか、私はあなた方が言う神です。気分はいかがですか?)
「神……気分ってなんとも、あれ?俺って車に轢かれて……」
(そうです、あなたは車に轢かれて死にました)
「やっぱりか……じゃあここは天国か何かか?」
(いえ、ここはあの世とこの世の間、中間地点のような場所です)
「何でそんな所に俺が?」
(ええまあ、あなたの最後の想いといいましょうか、言葉が私に届いたのですよ)
「最後って……まさか!」
(ぷっククク……すいません、普通はそんなことあり得ないのですが、よっぽどあなたの想いが強かったのでしょう……ブフッ)
「……おい、神だからって笑って良い事と、悪い事があるぞ!」
(すみません、つい……そんなわけで、私を数千年ぶりに笑わせてくれたお礼に、あなたを生き返らせてあげようかと思いまして)
「ほっ本当か!?」
(ええ、ただ元の世界には戻せません、あなたの肉体はすでに死んでいる。蘇ったりしたら大騒ぎでしょう?)
「じゃあ……」
(ですが、異世界なら問題ありません、あなた1人くらいなら増えても誰も疑問に思いません)
「異世界か……生き返らせてくれるなら何でもいい、俺は異世界に行く!」
(それはよかった、ではあなたを異世界に送りましょう。ですがその前に、モンスターや魔法のある危険な世界にこのまま送って、直ぐに死なれてもあれですし。1つあなたにピッタリのスキルを授けましょう。)
「おおっ待ってました!いったいどんなスキルが!?」
(ふふふ、それは着いてからのお楽しみですよ。ではあなたに幸福があらんことを)
「ちょっ、待ったまだ聞きたいことがっ……」
俺は最後まで言えることなく、そこで意識が途絶えた。
目が覚めるとそこは森の中だった、背の高い木ばかりで、ここがどこなのかさっぱり分からない、太陽が登っているのがまだ救いか、まあ本当に異世界ならどのみち分からないが。
「おお、体に傷ひとつない……本当に生き返ったのか、というか質問の途中だったのに、あの神様俺で遊んでんじゃないだろうな」
そんなことを言いながら周囲を見回していると、ポケットに何か入っているのに気付く。というか格好も死んだ時のままで、シャツにジーパン、スニーカーのみだ。
「なんだこれ……」
俺がポケットから取り出すと、それは紙だった、そして広げてみると、
俺のスキルが書かれた物だった。その内容は……
上島春樹 種族
スキル 鑑定
アイテムボックス
ガチャ召喚
PS
ガチャ召喚というのは、その名の通りガチャでモンスターを召喚できるスキルで、召喚する代償に金貨500枚が必要です。頑張って稼いでください。おまけで、鑑定とアイテムボックスもつけておきました。あっそうそう、いきなり無一文では可哀想なので、最後にあなたが引くはずだったガチャ一回分として、アイテムボックスに金貨500枚入れておきました。
モンスターに関しても童貞のあなたの為に、特別仕様にしておいたので楽しみにしていてください。
神より
「俺のレベルしょぼっ! しかもなんで童貞ってバレてるんだよ!」
あの神様はやっぱり、俺をおちょくって楽しんでるみたいだ。次会ったら絶体文句言ってやる。
「それよりガチャ召喚って……俺にピッタリってこういう事か」
まあすでに、ちょっとワクワクしてるけど、死んでもガチャ中毒は治らなかったみたいだ。俺はアイテムボックスから金貨500枚を取り出す、何故か分からないが、取り出しかたとかちゃんと分かる。
「じゃあ早速召喚を……」
俺が召喚をしようとすると、後ろから何かが走ってくる音が聞こえた。
そして俺が振り返ると、狼みたいなモンスターが一匹俺に向かってきている。
「ふっふざけんな~! またお預けにされたまま死ねるか~!」
俺は全力で走り出す。
(クソっ! クソっ! 神様ももっと安全な場所に送ってくれよ!!)
だがいくら俺が全力で走っても逃げ切れるわけない、どんどん足音が近づいている。
(このままじゃ、追いつかれる)
振り向くともう10メートルも離れてない。
(こうなったら、一か八か召喚するしかねえ!)
俺は覚悟を決めて、モンスターに向き直る。残り5メートル、金貨を地面に置き、ユニークスキルを発動する。
「サモン!!」
すると地面に魔方陣が浮かび上がり、光に包まれる。そして現れたのは……
腰まで伸びた燃えるような赤い髪、少しつり目で瞳の色は綺麗なオレンジの美少女だった。
「後ろ!!」
俺は後ろから迫るモンスターを指差し、赤髪の美少女に叫ぶ。
すると彼女は振り向きモンスターに手をかざす。
「燃え尽きなさい、『フレイム』」
次の瞬間、凄まじい炎の柱が天に昇っていく。あまりの熱量に俺は思わず両手で顔を覆う。
「す、すげえ……」
モンスターがどうなったかなんて確かめるまでもない、というか明らかにオーバーキルだ。
俺が目の前の状況に呆けていると、彼女が再び俺に振り返る。
「あんたが私のご主人様?」
唸る業火を背にして、彼女はニッと笑い俺に問いかける。俺は炎と共に揺れる赤い髪がとても綺麗で、思わず彼女にみとれてしまっていた。だがなんとか返事をする。
「あっああ、そうだ……」
「なら契約の儀式をお願い」
「契約……?」
俺が何のことかと思っていると、彼女はそっと目を閉じ、小さいピンク色の唇を軽く差し出す。気のせいか白い頬が赤くなっている気がする。
「はっ早くしなさい!」
「わっ分かった……」
心臓が壊れそうなくらい高鳴っている。俺は彼女の肩に両手を乗せて、その柔らかそうな唇にそっと触れるだけのキスをした。すると彼女の左胸辺りが一瞬光って、すぐ消えていく。
「契約完了ね! これからよろしくねご主人様!」
「ああ、よろしくな」
彼女の満面の笑みに、俺は再びみとれてしまった。
(そうだ、彼女の名前を……鑑定を使ってみるか)
俺はスキルを、使うと驚愕する。
(名前……エンシェントドラゴン)
神様が言ってた童貞の俺の為にって、こう言うことかよ。ガチャで召喚されるモンスターは擬人化されて、それも女の子の姿で召喚される。
(神様ありがとう! 今まで文句言ってごめんなさい! このスキルなら作れるかもしれない、男の夢……最強のハーレムを!)
くしくも俺はあれだけ欲しくても、前世で手に入らなかった『モンバト』の限定キャラ、エンシェントドラゴンを異世界に来て、一発目で召喚に成功したのだった。
読んで頂きありがとうございます。
拙い文章ですが、頑張って書いていきますので宜しくお願いしますm(._.)m