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世界樹と輝石の姫君  作者: 夏川コバルト
2/2

遠き大陸への道

ディルウェラ大陸へは船で向かう必要がある。

ついこの間に開拓されたばかりのこの世界は、

6つの大陸に分かれていて、大陸間には広大な星海が広がっている。

今までの主な大陸といえば、今シオンたちがいるケルフィア大陸があげられるが

ケルフィアを支配するギベルオン王国の冒険者によって発見された

ディルウェラは、あまり発展はしていなかったものの

その大陸に住む者たちは産まれたときから赤い髪と金色の瞳をもち、

優れた武器や装飾品を作り出す種族であった。


「…で、レティアはその一族だって?」

「そう。ここはさっき言ったとおりケルフィア大陸よ。

 向こうとこっちを繋ぐ扉はここにしかないの」

「じゃあ向こ…うーん、俺たちが元いた世界に行く時もここから?」

「や、それは違うんだけど…」

レティアはキヨハを困ったように見た。

困らせるようなこと、言ったかな…。

キヨハは少し考えて答えた。

「…え、と、キヨハは…こっちをデフォ…向こうをカスタ…と呼んでる…。

 デフォと…カスタの…間には…すーっごく薄くて…強い壁があって…

 キヨハみたいな…月光族とか…太陽族とかなら…その壁を破れる…。

 でも…干渉できるチカラは…デフォでしか…使えない…。

 だから…こっちではどこからでも…行けるけど…

 カスタからは…場所を選べない…」

なかなか長い説明だったが、キヨハのところどころに挟まれる沈黙で

聞き取りずらいことはなかった。

「なるほど。で、悪いけどここはどこ?」

「ここはケルフィアのギベルオン王国の領地。やっと着いた」

「大きな門だな…」


目の前に広がる巨大な鋼鉄の門。歴史を感じさせるものの錆びていない。

まるでこの国の圧倒的なチカラを感じているようで、少し怖い。

まわりが同じように巨大な壁で囲われていて

上を見上げてもずっと続いている。

「これほんとに開くのか…?」

「ちょっと待っててくれる?」

レティアは一つ言い置いて、扉の方に走っていった。

「大丈夫なのか?」

「多分…レティアは見かけより…強い権限を持ってるから…」

「見かけよりってひどいなぁ」

いつの間にか苦笑しながらレティアが立っていた。

「で、どうだったんだ?」

「ん?ああ、良いって。ドラグベルの姫なら通すって言ってたから

 ちゃんと額飾りを見せて開けてもらったよ」

キラリと光る赤い宝石が揺れた。

そのまま颯爽と歩き出したレティアを追いかけて

キヨハが駆け足で追いついて、俺を見た。

「早く、置いていく」

「…うん」

誰にも聞こえないような声で俺は小さく呟いた。

あーあ、俺にもなにかチカラがあればよかったのに。

そしたら、小さな声が答えてくれた気がした。

君はまだ捨てたもんじゃないよ、と。


門をくぐった先にはもう一つ門があった。

もう一つの門をくぐり抜けると、光が差して思わず目を細めた。

「…おお」

短く声を漏らした。

目の前には大都市が広がっていたからだ。

活気あふれる町並みに、活気あふれる人々。

道を囲うように出店が並び、様々な物が売られている。

「…ほら、シオン!行くよー」

立ち止まったままの俺の手をとって歩き出した。

引っ張られるままずるずると歩く。

「おにいさーん、そこのおにいさん」

「え、俺?」

「アンタ以外いないでしょうがー」

なぜか見知らぬ女性に話しかけられ、男扱いに慣れてなかったため

慌てて返事するとやれやれと首を振られた。

「どうだい?今日は珍しくコルビアの実が入ったんだ。

 あんたの連れと一緒に買うなら安くしとくよ。

 肌にもいいし、一人で食うにはデカいから二人でわけるには

 ピッタリだしねぇ」

女性の手にある大きな実はカカオのような形をしていて

マンゴーのような橙色でよく熟れているようだ。

しかしかなり大きく、確かに一人では食べられそうにない。

言われた言葉をやっと理解した時、気が付けばレティアは俺を見ていた。

そしてふっと目線を落とすと掴まれた手が目に写った。

「「っ!?」」

レティアが目に見えて真っ赤になった。

髪の色と合わせて全身赤くなっている。

「ち、ちがっ」

「あら、違うのかい?アタシゃてっきり将来を誓った仲かと

 思ったんだけどねぇ」

鋭すぎるわっ!

女性の的確すぎる言葉に内心全力で突っ込んだ。

言葉にすると騒ぎになりそうなので肩で息をして抑える。

「あー…今持ち合わせがないんで、無理なんですよ」

「そんな豪華なナリしてんのにかい?」

「私たちは…王と話し合うために…ここに来た…」

キヨハの助け舟に有り難く乗っかり、女性の反応を待った。


「ああ!最近隣国との貿易何とかってていう話だね!」

「…多分、そう」

「最近王様も悩みがあるらしくてねぇ…。

 アタシじゃよくわかんないから、直接聞いてごらんよ」

「ありがとう、ございます」

「ていうかアタシはアンタたちにこんな口きいてていいのかい?

 普通の貴族たちだったら首を()ねるところじゃないの?」

「気にしないで。私そういうの気にしないの。ね?」

ちら、と額飾りを見せると女性は目を剥いた。

「アンタ、」

「あー言っちゃダメ」

口に人差し指を立てて女性を遮る。

「いいこと教えてくれてありがとね。

 国に帰ったらここのコルビアの実を買い占めるように言っとく」

豪気な事を言って人混みをすり抜けるように歩き出した。


「…隣国か」

「この国の隣国ってなんて国なんだ?」

「多分、海国スラキード。造船技術は最高峰だし

 海産物も豊富。景色も綺麗だから観光にもいいしね」

ほう、と息を吐きながら頷いた。

目の前に見える城を目指し、

ファルフというクレープのように生地に肉、野菜をたくさん包んだ物を片手に

街道を歩く。

「うまいなこれ」

「でしょ?あたしのお気に入り」

「…うまうま」

はみ出た肉を齧り、満足げに声を漏らすキヨハ。

日本人形みたいな外見と中身のギャップが激しくて可愛い。

「さっきの…おばさんの話を要約するに…

 ここギベルオン王国と…海国スラキードの貿易について…

 問題が起きている…。

 もしかしたら…船が出せないかも…」

「それマズくね?」

「マズいわ…すっごくマズい」

しかめっ面で考え込むレティアを他所に

残りのファルフを口に放り込む。


「止まれ!」

城門の前で兵士に止められた。

当たり前だ、普通にスルーして入ろうとしている方が間違っている。

「何者だ。事前に申請は済ませているか?」

レティアは額飾りを見せながら話し始めた。

「私はドラグベル帝国のレティア・シューレ・ドラゴルノ。

 少しばかり私事で向こうに行っていた。

 なので本国に戻りたいのだが、星海を渡る必要がある。

 …王を悩ませている事案について力になれればと

 思ったのだが、」

「失礼した、どうぞ」

ガシャンと鎧を鳴らして姿勢を正した。

「…なんだか…大変なことに…なりそう」

「キヨハのそういう予感って当たるのよねぇ…」


二人の溜め息が重なった。

遥か遠いディルウェラへの旅が始まった。

こんにちは、コバルトです。

長い文章がなかなか書けませんね…。

Bluetoothのキーボードが欲しいです。

あまり甘々はありませんでしたが、

いっぱい名称が出せたのでよかったです。

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