そういうのマジやめて!
「どわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! テメェ、どっから物語を始めてんだ!」
俺は今、上空何千メートルかわからない高さから、雲を突き抜け、急降下している。
『飛行魔法を感覚で覚えろ』
「マジか⁉︎ その辺は魔道書とか修行とか色々あるだろ!」
作者の無茶振りに声を荒げる。
『その設定だと中盤あたりからあやふやになるだろ? やられそうな時に新しい魔法とか必殺技を発動する主人公にありきたりな御都合パターン。それなら最初から色々な状況から魔法を覚える的な感じでいいだろ。とりあえず敵は重力だ。頑張れ』
「主人公の醍醐味をしょっぱなからぶち壊すな! 今後のバトルに読者の期待が……」
『そんな心配より地上を見ろ。お前が落ちていく先に金髪碧眼の病弱女がいるぞ』
「⁉︎」
視界の先には俺の急降下を口を開けながら見ている金髪碧眼の美少女。
「マジか⁉︎ ちょ! そこどけ‼︎」
『魔王は目を瞑り、神を仰ぐように手を合わせ、魔法を詠唱し始めた』
「アホっか! なに三人称みたいに語ってんだ⁉︎」
『キラキラと光る両手を天に向けた瞬間、まばゆい白光が主人公の目を眩ませる』
「マジッかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
『しかし魔法は不発だった』
「なんでやねん!!!! って突っ込んでる場合じゃねぇ! どけどけどけ!」
視界の先では、金髪碧眼の美少女が逃げようとした。……が急に吐血しその場に倒れた。
「おいおいおいマジか!」
瞬時に、背中にある聖剣エクスカレバーの柄を右手で握り、刀身を地面と平行にして構える。刹那、レベル九九九の身体能力を使って横に一回転し、ヘリコプターをイメージしながら更に高回転する。以前の物語の時に習得した特技【回転斬り】だ。もちろん美少女エクスに対してではなく激突を回避するために。
「はぁぁぁぁぁ!」
『でたぁぁぁぁ! 精神疾患主人公奥義「はぁぁぁぁぁ!」』
「そういうのマジやめて!」
『しかし、主人公がエクスを回避した先にはエクスのボロ屋があった』
「もっとマシな家にしてやれよ⁉︎」
『ズガァァァァァン。主人公はエクスのボロ屋を破壊。エクスはそのショックで気絶した』