僕は… 壊
『すごい湯気だね〜』
彼女はその湯けむりを指差しながらさながら子供のように目をキラキラさせた。
僕は『テレビとかで見るより凄いね』と相づちを打つが僕には彼女が眩しすぎて見ることができなかった。
周りがざわつき始め目線が集まる。
彼女は僕の腕にしがみ付いて歩き出す。
旅館に入り女将さんに連れられて僕らが泊まる部屋に案内される。
彼女は部屋の奥まで行き障子を開ける。開けたそこは紅葉が広がりとても幻想的だった。
『頑張ってこの部屋とったんだよ。君はこう言うの好きでしょ』
彼女は自慢気に僕に言ってきた。
部屋は広い部屋が2つととても俺では借りられそうもないすごい部屋だった。
ここまで尽くしてくれるのは少し重いかも知れないけど彼女には純粋さがある為それが僕はあまり気にならなかった。
彼女は僕の手を引き建物の外に連れ出した。
旅館から徒歩で5分ほどのところに橋がある。そこで彼女は
『前に仕事できた時ここ君に見せたいと思ってさ。前回は忙しかったけど私ここからの風景好きでさ』
彼女は仕事の関係上色々な場所に行く。彼女はそこで好きだった場所を僕も連れて行きたいらしく僕らの旅は大抵こんなものだ。
旅館に戻ってテレビをつける。
地方のよくわからないバラエティを彼女と見た後、番組はニュースになった。
『1週間前、交通事故で亡くなった女優の南s』
彼女は突如テレビを消した。
『ごめんね。これ見たくない』
彼女のその意見に返事はせず僕は彼女を風呂に誘った。
一階に降りて脱衣所の入り口で彼女から耳打ちで
『ここの旅館、露天風呂が混浴なんだ。』
頬を赤らめて彼女は女湯の脱衣所に入っていった。僕は顔が赤くなったのを隠すように俯き脱衣所の暖簾をくぐる
時間的に風呂には誰もいなくてもちろん露天風呂には誰もいなかった。
いつも見ている彼女の裸だったがその日はタオルで隠しておりそれがまた可愛らしかった。
部屋に帰ると部屋の前に女将さんが立っておりその後、部屋に豪勢な夕食が運ばれる。
夕食の配膳を下げてもらった後女将さんは部屋に入り布団を用意した。
『2人分の布団なんていらなのに〜』
夜寝る時僕は天井を見上げていたら涙が溢れてきた。
彼女は僕を抱きしめてくれた。僕はゆっくりまぶたを閉じた。
『沙織‼︎』
僕は沙織に駆け寄ろうとするが警察がそれを止める。
沙織は僕に気がついてくれなかった。
僕は泣き崩れる。チラッと見えた沙織の亡骸を見て僕は耳を閉じ丸まって叫んだ…
目が覚めた僕は彼女と朝食をとり荷物をまとめて旅館を後にした。
帰りの電車で彼女は僕の肩に寄りかかって寝た。その寝顔は可愛らしくてキスをすると彼女は照れ臭そうに目を瞑りながら
『不意打ちはダメだよ〜』
と返した。僕は前を向き少しニヤける。
彼女と駅で別れて僕は帰路に着く。
周りからざわざわと話し声が聞こえてくる。僕はなるべく聞かないように早歩きで家に急いだ。
家について僕は急いである部屋に向かった。
そこにはテーブルの上に骨壷と彼女の写真が飾ってあった。
『ただいま沙織。君と行くはずだった旅行。言ってきたよ。終始君の声が聞こえたけど僕には君の姿結局見えなかったな〜』
僕はそこにあった線香用のライターに火をつけてそれを自分のズボンに火をつけた。
『今行くよ』
僕はそう言い天を仰いだ。