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龍刻の転生者  作者: 勇者 きのこ
少年期 第4章 異世界への道編
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第35話「異界の反逆者」

 


 ––––それは、いつも突然だった。



「来たよボス! アルスマグナ平原の奥地で、大きな魔力の乱れを確認した! 間違いない、【異世界への道】だ!!」


 私はドワルゴン王から、アルスマグナ城の執務室を借りて作業をしている。


 ドワルゴン王はとても陽気なお方で、その御心も寛大でいらっしゃる。

 この城を総本部にしたいと不躾な申し出をした時も、二つ返事で了承して頂いた。


 それをだ。


 そんな大切な城の、私たちの総本部の部屋の扉を、乱暴に開けるのはどうかと思うぞ。


 私はその犯人の顔を見る。


 銀髪に白衣、眼鏡をかけた長身の男。

 我が異界の反逆者(メサイア)の重要人物の1人であり、度々私の頭を悩ませる人物。


「クラウス博士、もう少し丁寧に扱ってくれ。ここは我々の大切な––––」


「あぁ、もう! お小言は後でゆっくりと聞くからさ! 今は状況が状況なんだよ!?」


 む、そうだったな。


「ほら、これを見てよ! この場所にだけ異常に魔力が集中してるんだ! これはもう、間違いないよ!」


 そう言ってクラウス博士が見せてきたものは、ここら一帯の地図に表された魔力の流れを感知した資料だ。


「––––良くやった、クラウス博士。すぐに保護しよう」


 私は机の端に置いてあった機械を手にして、


「総員に告ぐ! アルスマグナ平原奥地にて、【異世界への道】と思われるものを確認した! 直ちに、異世界人の救助と保護を完了せよ!!」


『了解、こちら第3部隊。座標を確認したところ、我々の部隊が一番近いと思われます。出撃許可を」


「了解した、第3部隊に出撃許可を出す! 1人の犠牲者も出すな!!」


『了解!!』


 交信が切れ、ノイズだけが残る。


 無事に保護できると良いんだが……。





 –––––





「––––遅いな」


 おかしい。

 あれからもう、それなりの時間が経った。


 救助と保護が完了したという報告は、まだ無い。


 やはり、何か問題でもあったのだろうか……。


 そんなことを思っていると、ようやく通信要請が来た。


『ボス、対象を無事保護した。これより帰還する』


『ボス、異世界人を5人保護しました。犠牲者は0です。任務を無事完了しました』


 報告をする役は決めろと言っておいたんだがな。


「了解だ、良くやった。帰還してくれ」


『了解しました。第3部隊、これより帰還します』


「ところで、時間がかかったようだが、何か問題でも発生したのか?」


『あー、申し訳ありません。バカがスライムを踏み潰して走行しようとして、それにより車体が横転しました。幸いにも怪我はなく、車体を起こしてそのまま任務へ向かいました』


 スライムを踏み潰して走行しようとした……だと?


 またトーブか。第3部隊は本当に問題が多いな……。


「そうか、わかった。とにかく無事で何よりだ。ご苦労だったな」


『では到着次第、異世界人をボスの元へ案内します』


「あぁ、わかった。気をつけて戻ってこい……」


 そう言って私は、交信を終了した。


 後でトーブと話さなければならないな。





 –––––





「失礼しました」


 私はレンと異世界人の子供たちが部屋を出て行くのを確認してから、クラウス博士を見る。


「まだ幼い子供たちには、厳しい選択を強いてしまったな……」


 私は先ほどの会話を思い出して、溜息をついた。


「そうだね……。君のいた世界じゃ、成人は20歳なんだろう?中学生と小学生は、その半分くらいかな?」


「あぁ、この世界じゃ中学生はもうすぐ成人って段階だが、それでもまだ子供だ」


「うん、そうだね。もしも彼らが、この世界での自由を望むなら、それでも僕らが助けてあげないとね。この世界の言語に通貨、文化や常識に暮らし方までね」


 クラウス博士は微笑みながら、机の上に用意された紅茶に手を伸ばす。


「だが正直なところ、異世界人は貴重な戦力だ。彼らの知恵もそうだけど、何よりも異世界人特有の『スキルへの適応率』が素晴らしい! 彼らもまた、何か特別な力を持っているに違い無い!」


 しまった、スイッチを入れてしまったか。


「落ち着けクラウス。それは彼らが異界の反逆者(メサイア)に入った後でも、自ずとわかることだ。もし、違う道を進んだとしてもな」


「あぁ、そうだね……。いくら運命から逃れようとも、結局運命には抗えない。だけど、その時にサポートするのも僕たちの仕事だからね」


 クラウス博士はそこまで言ってから、空になったティーカップを置いた。


「さてと、やり残している仕事があるから、僕はまた研究室に戻るよ! また明日、同じ時間に来るとするよ!」


 そう言ってクラウス博士は、部屋を出て行った。


「彼らにも、彼らを愛する者がいる……。必ず、私が元の世界に––––」


 そう呟いた言葉を、聞くものはいなかった––––。





 –––––





 翌日、同じ時間にレンと異世界人の子供たちがやって来た––––。


 彼らも覚悟を決めたようで、全員が入団を希望するときいた時は驚いた。


 さらに、最年少であるリンという少女は、精霊使いの才能もあるようでクラウス博士も絶賛していた。


 私自身、精霊を見た数はそう多くは無いので精霊について詳しいわけでは無いが、精霊はそれなりの軍隊と渡り合えるほどの強さを秘めているらしい。


 レンが率いる第3部隊に、彼らにこの国の観光を任せた。

 私はその間に、いろいろと準備をしなくてはならない。


 しばらくは、また忙しくなりそうだ。


「こうしてはいられないな。すぐにドワルゴン王の元へ急がねば––––」


 異世界から、また新たな仲間を得ることができたことと、我が団の現状報告、そして他の国の情勢も聞いておかねばな。


 ドワルゴン王は私に、


「報告など要らぬよ! そなた達が元気にやっておるなら、それに越したことはあるまい! ワシらの国がこうして平和なのは、そなた達の働きあってこそじゃからの! ふぉっほっほ!」


 と仰られていたが、それでは私の流儀に反するというもの。

 きちんと感謝の意を表し、報告をするのが務めだ。


 私は広い場内の大きな広間にある、これまた大きな階段を上る。


 ドワーフの文化の骨董品や、ドワーフの腕自慢の職人達が鍛え上げた剣や剣が飾られている長い廊下を歩き、その奥にある大きくて豪華な部屋の前に立つ。


 同じ執務室だというのに、王の執務室はまるで謁見の間の扉のように豪華だ。


「王に何用かな?団長殿」


 その扉の前に立つ2人の大男のうちの1人が、怪訝そうに私に話しかけてきた。


「御苦労、騎士殿。我が団の現状報告がてらに他の国の動きなどをお教え願おうと思いましてな」


「そうであったか、御苦労である。王は休息中ゆえ、粗相の無いようにお頼み申す」


 そう言って騎士は道を開けて、中へ入るよう促す。


 私は扉をノックし返事が聞こえるのを確認してから扉を開ける。


「休息中失礼いたします。我が団の現状報告と––––」


「よいよい、気にするでない! そういう堅苦しいのは聞き飽きたわい!! もっと楽になされい! ふぉっほっほ!!」


 そう言われ席を勧められるがままに、私は王の前の椅子に腰をかける。


「また【異世界への道】が現れたそうではないか。して、無事に保護できたのかのぉ?」


「はい。5人とも子供で、全員を無事に保護することができました」


「それは良かったわい! それなら、専属の教師と必要なものを揃えねばなるまいて! すぐにでも、揃えさせよう!」


「いえ、それには及びません! そこまでして頂かなくとも我々で揃えることはできますので!」


「良いのじゃ良いのじゃ! ワシとて、孫ができたようで嬉しいわい! どれ、後で顔を拝みに行くとするかのぉ♪ 勿論、お忍びじゃがな!ふぉっほっほー!」


 本当にこのお方は、寛大というか人が良すぎるというか……。


「ワシみたいな陽気なジジイには、こういうちょっとした刺激が必要なんじゃよ! じゃが、こんなワシにもお主らに助言はできる」


 ドワルゴン王のアドバイスは、いつも役に立つ。

 彼のおかげで助かったことが、何度もあるくらいだ。


「最近、【グランヴェール王国】で面白い話があってのぅ。なんでも、戦姫が率いる騎士団に、新たに『剣聖』の称号を持つ者が入団したとか……。これでさらに、『蒼天の騎士団』の勢力が強まったというわけじゃわい」


「蒼天の騎士団、ですか。あの国とは早めに同盟を結ぶべきと考えたほうが良いな……」


「ふぉっほっほ! 左様じゃ! しかも、その剣聖は戦姫と然程変わらぬ歳の少女じゃと言う! 全く、長生きするもんじゃわい!!」


 ドワルゴン王は心底嬉しそうに笑っていた。


「しかし、よくない噂も流れておる……。北の帝国が、近々争いをする準備をしておるようでのぅ。恐らくは、力をつけてきた蒼天の騎士団を力でねじ伏せるために、グランヴェール王国に戦を仕掛けるつまりじゃろうて……」


「戦争、ですか……」


 それまで楽しそうな表情をしていたドワルゴン王も、険しい表情をしていた。


 それほど北の帝国は大きく、グランヴェール王国と戦争をすれば大きな被害が考えられる。


 我々も被害が出ないとは、思えないな。


「それと、しばらくその消息を絶っていた【紅眼の流星】が、東の大陸の【天ノ夜月】で確認されたようじゃ。次に()が行うことは、この世を乱すことか否か……。どちらにせよ、近々この世が乱れることは変わらぬのぅ」


 ドワルゴン王に聞いた情報は、どれも只事とは思えないものだった––––。


「––––有難う御座います、陛下。私は早速、蒼天の騎士団との同盟交渉の準備をしようと思います。それでは陛下、子供たちをあまり驚かすことのないようにお願いします」


「ふぉっほっほ! 勿論じゃわい! お主こそ、また近いうちに茶でも飲みながら話そうぞ!」


 そう言ってドワルゴン王は陽気に笑い、私は一礼した後に部屋を退出した。


「これから、本当に忙しくなるな……」


 これからのことを考えただけで、頭が痛くなる。


 早く平和な世を手に入れたいものだ––––。




 –––––





 ––––これは後日談だが、ドワルゴン王はやはりお忍びで異世界から来た子供たちの元を訪れたようだ。


 その時にひと騒ぎあったようだが、それはまた別の機会に––––。






 ー第4章 異世界への道編 終了ー






 〜第5章 長き旅路編 へ続く〜

































更新が遅くなり、申し訳ございませんでした!!


就職試験真っ最中なので、なかなか時間が取れず……。


次の【第5章 長き旅路編】では、書溜めをしてから投稿するので、少しの間更新がちまってしまいます。

その分頑張って、素晴らしい話を書けるように頑張りますので、応援よろしくお願いします!!

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