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龍刻の転生者  作者: 勇者 きのこ
少年期 第3章 冒険編
18/51

第17話 「友達」








 クヌ村では、今日もたくさんの村人や魔物達が、村の復興作業をしている。


 時刻は昼。

 今日も広場では、せっせと働く村人や魔物の姿があった。


「こーら、メイシェル!ゴブさんを叩かないの!」


 メイア・ルーク。

 以前は村の長の妻で、今では復興作業の責任者だ。


「イタッ!イタイ!メイシェル、ヤメテ!」


 ゴブ。

 この村にいるたくさんの魔物のリーダーで、優しい魔物だ。


「ゴブさん変なの〜。なんでそんなに緑色なの〜?」


 メイシェル・ルーク。

 メイアの娘で、かなりお転婆な子だ。

 好奇心旺盛で、今日もゴブに色々と質問をしている。


「オレ、マモノダカラ。メイシェルタチトハ、チガウ」


「ん〜、わかんない!」


 元気いっぱいなのはいいことだが、物分かりが少し悪いようだ……。


「こらぁぁ!エレナァァ!!待ちなさぁぁい!!」


「やだぁ〜!お勉強なんてしたくないもん!」


 すごい勢いでかけて来る赤毛の女性は、アインス・ルーク。

 メイアと同じく村の長の妻で、今はメイアと一緒に子育てに励んでいる。


 そのアインスから逃げているのは、エレナ・ルーク。

 アインスの娘で、勉強嫌いでわがままな少女だ。


「ちょっとゴブ!エレナを捕まえて!!」


「ワカッタ!ワカセロ!!–––––へブゥ!」


 エレナは立ちふさがるゴブの顔面を踏み潰し、その勢いのまま逃げて行った。


「エレナ!いい加減にしなさ〜い!」


「やだぁ〜!」


 アインスもエレナを追いかけて、どこかへ行ってしまった。


「あはは、アインスも大変ねぇ……」


「ゴブさん、だいじょーぶ?」


「ヘ、ヘイ……キ。オレ、マモノ、ダカラ……ガクッ」


「ありゃりゃ……」





 –––––





「いやぁ〜、離してぇ〜!」


 エレナはアインスに捕まり、家へと強制連行された。


「ったく!何度逃げれば気がすむのよ、この子は!」


「アインスに似たんでしょ?あんたも勉強嫌いだったもんね〜」


 メイアは怒るアインスを楽しそうに見ている。


「もう!笑いごとじゃないわよ!」


「まぁまぁ、落ち着いて。今は苦手でも、頑張れば得意になるよ!」


「あのねサティファ。そう簡単に言うけど、頑張ればの話でしょ?この子は、その頑張りがないのよ……」


「え〜?エレナちゃんなら、きっと頑張れるはずだよ、ね?」


 サティファレイ・ヴァナディール。

 村が壊滅する前まではルーク家の使用人兼メイドだったが、今では家族の一員だ。


「うー、わかった……。お勉強、する……」


「うん!よーしよし、えらいえらい!」


 サティファはその言葉に満足して、エレナの頭を優しく撫でた。

 エレナは気持ち良さそうに喉を鳴らしている。


「あ、おかえりなさい!」


 二階から降りて来た少女は、シルヴァレン・ヴァナディール。

 サティファの一人娘で、日の光を浴びて輝く、白く長い髪が綺麗な、可愛らしい少女だ。


「お母さん、ちょっと出かけてくるね!」


「は〜い、行ってらっしゃい」


「行ってきまーす!」


 シロはアインスに貰った木剣を持って、外へと出かけて行った。


「さぁ!あんたは勉強する!」


「はぁ〜い……」


 アインスもエレナに勉強を教え始めた。


「それじゃ、メイシェル。お母さんのお手伝いしてくれる?」


「リョーカイでっす!」


 メイアは庭で洗濯物を干し始めた。


「それじゃ、私は夕食の準備をしようかな」


 サティファも、台所へと向かった。





 –––––





「こんにちはー!」


「やぁ、こんにちは」


「おや、サティファちゃんの娘さんじゃないか!元気がいいねぇ!」


 シロは元気よく挨拶をしながら、村を歩く。

 今日は村の子供たちと遊ぶ約束をしている。


「あ!シロちゃん!」


「遅いぞぉ〜、シロ!」


「あら、シルヴァレンさん」


「ごめんごめん!遅くなっちゃった!」


 広場にはすでに、みんな集まっていた。


「それじゃ、シロも来たことだし、もう行くか?」


 この背の高い子は、カトレア・ルーリン。

 大通りにある酒場の娘だ。

 茶髪に灰色の瞳が目立つ女の子だ。


「そうだね!あれ?シロちゃんは、何持ってるの?」


 この背の小さな獣人種(ビースト)の女の子は、リリィ・スカーレット。


  ツンっと立ったモフモフした尾、黒く輝く髪が特徴的な紫色の瞳をした黒猫の少女だ。


 彼女の両親が冒険者で、つい先日この村にきたばかりだ。

 だが、いざ来てみれば村は壊滅していてかなり驚いたようだった。


「これ?これはね、もし悪い魔物さんが出てきても戦えるように持ってきたんだ!」


「あらあら。シルヴァレンさんは、頼りになりますわね」

 

 この見るからにお嬢様な格好をした森人種(エルフ)の少女は、リサ・エルレイシア。


 《神樹海》にあるエルフの国、《緑の大国 ファルガルシア》から来た貴族だ。


 エルフと人間のハーフで、彼女の父親がエルフで母親が人間。


 この中では12歳と年上で、腰まである長い金髪の海よりも深い青色の瞳が印象的な少女だ。


 彼女の両親がちょうどグレイシア王国に用があってきていたら、クヌ村の壊滅の情報が入ってきたようだ。


 それを聞いた彼女の父親が、クヌ村を支援してくれた。


「えへへ〜!」


「ほら、はやく行こーぜー!日が暮れちまうよ!」


「そうだね!それじゃ、行こっか!」


「あ、リリィさん!忘れてますわよ!」


「あ!いっけない!お弁当忘れちゃうところだったよ〜。リサちゃん、ありがと!」


「もう、気をつけるんですのよ?」


 少々危なっかしい4人は、森にある花畑を目指した。




 –––––




 4人は森に続く道を並んで歩いていた。


「この辺も前に比べるとだいぶ道が綺麗になったよね〜」


「そうだね〜。それに、魔物も出てこなくなっちゃったし……。これもゴブさんたちのおかげだね〜♪」


「シロちゃんとカトレアちゃんは、どれくらいクヌ村に住んでるの?」


「私は4歳くらいの時にこの村に来たんだよ。それでね!その時にね!」


「はいはい!あんたの王子様の話は長いから、また後でね!あたしは、生まれも育ちもクヌ村よ」


 カトレアは興奮するシロの言葉を遮った。

 シロの思い出話は、大抵長い。


「王子様?その話、少し興味がありますわ!シロさん、お聞かせ願えないかしら?」


 だが意外にも、その話に興味を持ったのはリサだった。


「ちょっとリサ!?私の話聞いてたの!?こいつの話は長いんだって!」


「あら、でも目的地へ着くまでの暇つぶしとして聞くには十分かと」


「そうだよ!私もその話、興味があるんだ〜!」


「はぁ……。わかったわよ……」


「わ〜い!それじゃあ、私がこの森に始めてきたときの話からするね!あれは私がまだ小さかった頃の話でーー」


 シロは嬉しそうに、リュウと出会ったときのことを話した。


「えー!?一緒のベッドで寝てたの!?」


「随分とそのお方のことを好いていらっしゃるのね、シロさんは……」


「こいつの将来の夢は、リュウのお嫁さんだからね〜♪」


「お、お嫁さんっ!?もう、カトレア!からかわないでよ!!」


 シロは耳まで真っ赤にして、うぅ……と小さく呻いた。


「あ、ほら!あの茂みの向こう側が目的地だよ!」


「本当に話してる間に着いちゃったわね……」


 茂みを抜けると、そこにはあたり一面に広がる花畑があった。

 赤・黄・青・白・紫に桃などの色があり、それはまるで、虹の絨毯のようだ。


「うわぁ〜!スッゴイ綺麗ね!!」


「これはまた……っ!なんとも美しい光景ですわ!」


「シロ!よくこんな場所見つけたわね〜!」


「へへん!どお?凄いでしょ!?」


 シロは誇らしげにドヤ顔を決めた。


「おや、美しい花ですわね〜♪」


「すんすん……とってもいい匂いだよ!」


「あ、蝶々!いや〜、たまにはのんびり過ごすのもいいかもしれないわね!」


「そうですね。私としては、お嬢様が勝手にいなくなったので、大変心配したのですがね」


「へ〜、そうなんだ〜……って、え!?」


 カトレアが隣を見ると、そこには黒服のスーツに身を包んだエルフの男が居た。


「あら、エドガー。どうして来たの?」


「お嬢様の身に何かあってからでは遅いですからね」


 エドガーと呼ばれた男は、リサの言葉に、少し不機嫌そうに言った。


「えーと……エドガーさん?あなたは、リサの執事か何かなの?」


 カトレアが恐る恐るといった感じで聞いた。


「申し遅れました。私は、《エドガー・グラース》と申します。リサお嬢様の執事でございます」


 エドガーは深々と、礼儀正しく挨拶をした。


「えと……あたしは、カトレアって言います。リサの友達ですっ!」


「わ、私はリリィって言います!リサさんには、大変良くしてもらってますです!」


「わたしは、シルヴァレンって言います!どうぞ、シロと呼んでください!」


「皆さんのことは、お嬢様からよく、お話を聞かされております。良き友人だと」


 エドガーは微笑みながら、チラッと、リサの方を見た。

 リサは相変わらずの澄まし顔だ。


「さてと、お嬢様。ど・う・し・て、黙って出かけていかれたのですか!?館中大騒ぎだったんですよ!?」


「あら、私がどこへ行こうと私の勝手よ?」


「なりません!!それでもし、お嬢様の身に何かあったら……!あぁ……考えただけでも恐ろしい!!


「はは……お嬢様思いのいい執事さんね……」


「こちらとしては、いい迷惑ですわ」


「それは私どものセリフです!!」


 リサとエドガーの口論は、しばらく続いた–––––。


「だいたい、あなたたちは心配性なのです。友人たちと一緒にお花を摘みに行くのに、どうして許可が必要なの?」


「そうではございません!もしも!お嬢様に何かしらの危険が及んでは、旦那様に会わせる顔がございません!!」


「そんな事あるわけないじゃないの」


「わかりません!!いつどこで野蛮な者に襲われるかは、わからないんですよ!?今こうしてる間にも、誰かに狙われてるかもしれないじゃないですか!!」


「そんなの、どこにいるのよ?」


「もしもの話ですよ!!ほら!あそこから狙ってるかもしれないじゃないですか!!………え?」


 エドガーが指差した方向には、何も無い。

 あるのは一面の花畑で、他には何もなかったはずだ。


 なのにだ。

 そこには、居るはずの無い者がいた。


「–––––っ!」


「……あれは!?」


 シロは素早く戦闘態勢に入り、腰に下げていた木剣を手に取りその人物(・・)に向かって構えた。


 いや、あれは果たして人なのだろうか?


 頭からは、太く立派な()の角が生えており、その額には青く輝く宝石。


 そして、全てを見透かすかのような、銀色の瞳。


 真っ白なローブを羽織った異様な雰囲気の男が、そこにいた。


「–––––問おう。汝らは我に敵対する者か?」


 男は、小さな声でそういった。


「いいえ、違います!なんのことだか知りませんが、私たちはあなたの敵ではありません!!」


 エドガーはその異様な存在感に呆気を取りながらも、正直に答えた。


「ならば良い。急な質問、非礼を許して欲しい」


 男は素直にそう言って、軽く頭を下げた。


 その姿にシロも木剣を下げ、お辞儀をする。


「い、いえ……っ!それよりも、貴方様は一体……?」


「我は、六龍神が一人、《水の龍神》だ。聞いたことくらいはあるだろう?」


「え!?あの龍神様(・・・)ですか!?何故このような所に!?」


 エドガーは驚きを隠せない様子で言った。


 それもそのはず。

 龍神がこんな場所に、まして花畑にいるのだ。


 龍神に会えることなんて、滅多にないことだ。

 龍神に会えないまま死んで行く者が、九割くらいなのだ。


「我がどこで何をしてようと、我の勝手だ」


「そうよ。エドガーには関係のないことなのだから、気にする必要ないじゃない」


「エドガーさんって、そんなに他人がどこで何をしているのかが気になるタイプなんですか?」


「うわぁ〜……。それだけ聞いたら、ただの変態にしか思えないわ〜……」


「そ、そんな……っ!!」


 エドガーに対して、シロ以外が満場一致だった。

 なんだか、居た堪れない……。


「龍神様。あなたは、何をしにここへ来たんですか?」


 この雰囲気の中、シロだけが水の龍神を警戒していた。


「澄んだ瞳をしている娘だ。魂もなかなか良い」


 水の龍神はそう呟くと、何かに満足したように頷いた。


「我は、《我の力を継ぐに足る魂を持った後継者》を探している。ここらで光の力を受け継ぎし者が誕生したと知った。そのものに会うためにきたのだ」


 シロはその言葉に、眉をひそめた。


『光の力を受け継ぎし者』


 前にリュウが戦った男の人も、そんなことを言ってた気が……。

 この人ももしかして、あの悪い人の仲間なのかも……。

 でも、そのわりにはみんな怖がってないし……。


 シロの頭の中では、この男を悪と見なすかどうか迷っていた。


「心配するな、我も汝らの敵ではない」


「–––––っ?!」


 まるで自分の考えが見透かされているかのような言葉に、シロの警戒は一気に増す。


「我は龍眼(・・)という能力を持っている。これを使えば、汝らの考えはある程度見透かせる」


「じゃあ龍神様はリュウに何かしたりとかは、絶対にしないんだよね?」


「ほう、そのリュウとやらが光の力を受け継ぎし者なのか……。安心しろ、何もせん」


「………」


 シロはまだ、水の龍神を信用していないようだ。

 水の龍神も諦めたのか、踵を返した。


「邪魔したな。またどこか出会えることを願う」


 水の龍神はそう言って、どこかへ消えてしまった。





 –––––





「はぁ〜……ビックリした!龍神って、何だかおっかないわね」


「でも、悪い人じゃなくて良かったです!」


「龍神様にお会いできるとは……。光栄です!」


「エドガーのことは、面倒くさがってたように見えましたけど?」


「そんなことはありませんよ!!………多分」


 水の龍神。

リュウと何か関係があるのかな?


「それよりも、なんの話だかさっぱりだったわー」


「いきなり力を継ぐ者なんて言われても、何のことだかさっぱりでしたね〜」


「私たちには、関係のないことかも知れないですわね」


 ……リュウ。

 わたしも早く強くなって、リュウを守らなきゃ!!


 –––––シロは今日の一件で、またさらに決意を固めたのだった。























更新するのに時間がかかってしまうのが悩みです……。

なるべく早く更新しようと思って書くのですが、忙しすぎて…… ( ˃ ⌑ ˂ഃ )

読者さまには、大変ご迷惑をおかけしていると思いますが、どうか、どうか暖かく見守ってください!! ( ˃ ⌑ ˂ഃ )


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