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氷中花  作者: 綴奏
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時の共犯者 其ノ二

「本人から聞かされたらしいが、傀儡の能力で他人を完全に操るには糸を使う必要性があるそうだ。同じく糸を扱う椿は観察力もあるために、直接の戦いは避けたかったそうだよ。万が一にでも彼の能力が明るみに出れば、国の方針やESPの方針が変われば真っ先に疑いが掛かり動きにくくなるからね。国の人間やESPだって馬鹿ではない。しかし、その慎重さが仇となり、独立型として操作されていた玲たちは自ら命を絶った……らしいよ」

「ですが、サードバレットたちが指名手配された時点で起爆されていないということは、既に国の重役が洗脳されていたのではないでしょうか」

「いや、どうやら国のお偉いさん方は文書の流出を恐れ、どこにいるかもわからない玲たちを殺すことはできなかったらしい。それでESP5の薫に極秘任務として二人の討伐と文書奪還が課せられた。まあ、それをチャンスと見た薫は姿を隠すことになるんだけどね。とにもかくにも、ESP5として本部施設を自由に出入りできる薫にも燕が見つけられなかったのも無理はないことだったよ。人間が住めるような環境じゃない部屋で、瀕死状態にされ生命維持装置で管理されていたんだから。もはやあれは部屋とも言えない場所だったよ。月夜が本部を好き勝手に破壊しなければ絶対に見つからなかった」

「その人は、血塗りの修羅ですか」

「雨翔月夜――血塗りの修羅と呼ばれた少年の名だよ。椿との戦いの後、正気に戻った彼はワタシの元に現れた。そこでやっと腰を据えて話をすることができたんだ。月夜も本部に姉が隔離されていると確信していたよ。数々の討伐者を返り討ちにしてきたから、その死体を調べていたらしい。とてもそれが嘘だと思えなくてね、ワタシは先日の大事件が起こった時に月夜に連れられ案内役として本部に行っていたわけだ。人を殺さないということを条件にだけど」

 流石の涼氷もそれを聞いてしまっては顔を引きつらせた。

「よくそれで大佐になれましたね」

「ワタシが大佐になったのは崩壊したESPをまとめる人間がいないからだ。いずれ優秀な人間がワタシに取って代わるだろうさ。それにあの時、ワタシたちに敵対するESPもほぼいなかった。なにせ街で数多の化け物が暴れていたのだから総動員レベルで出動していたからね」

 すると、碧井涼氷は目を見開いた。そこには、誰しもが見たことがないニコルの姿があったからだ。

 ――あのニコル・クリスタラが、深く頭を下げている。

「――すまなかった。ワタシは君の大切な友人を救えなかった」


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