表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷中花  作者: 綴奏
146/165

絡み合う糸 其ノ一

 

 背中を合わせてお互いが刀を構えてはいるものの、その心は冷静さなどとっくに奪われてしまっていた。眼玉が飛び出る程に驚いている赤月だけでなく、この状況には流石の椿も動揺を隠せないようだ。

「一体どういう状況なのだろうな、これは。一度二手に分かれたものの、この状況からして私たちは二人とも狙われているということになる。……どうする時雨君」

「どうするも何も、あっちは殺る気満々じゃないですか」

 赤月たちと向き合うはESP5の第三位である元結玲、第四位の水瀬潤一。どうして、自分たちの前に彼らがいるのかなど、わかるはずもない。そして、それを問う時間をくれるはずがないことが赤月にもわかっていた。

 吸血鬼側に対峙している水瀬は、水色の液体の化け物を既に形成している。去年の雪山で見たことのあるそれは、相も変わらず人型をした不気味な姿をしていた。あの時は、赤時雨の危険性を測るための遊び程度だったのだろう。先に動き出した赤月は、左胸に爪を突き刺し血牙を放つものの、水人間に吸収されるだけで何の効果もない。水の中で勢いを失った血の結晶は、絞り出されるように排出され、埃っぽい床にカランっと転がった。それを合図にするように、水人間は頭や背中、ありとあらゆる箇所から気味の悪い腕を伸ばして赤月に向かって這うように近づいてくる。

 刃物同士が衝突する音が響き、赤月は背後をちらりと見た。そこには、椿に向かって真っ黒なナイフを次々と放っている元結の姿がある。本人は何の予備動作もなく、ショートヘアだった黒髪を今や信じられないくらいに伸ばし、そこから黒い凶器を振り出しているのだ。恐らく、雪山で彼の背中を傷付けたのもあれなのだろう。

 無数の刃物に動きを奪われていた椿であったが、左手から繰り出す高質化した糸の鞭でそれらを一掃する。と、一気に間合いを詰め居合斬りを放ち元結玲の上半身を真っ二つにした。しかし、元結玲の身体が解けるように崩れ去り、夥しい量の髪が床に落ちていくと、その背後に元結の姿が見て取れた。どうやら彼女は髪を無限に生み出し、それを武器や分身として使うことができる異能者のようだ。

 斬り落とした髪の毛がうねり始めると、モーションの大きい大技を放った椿を足元から容赦なく襲った。まるで、太い針の地獄が具現化したかのように、左手と刀で防ごうとする蜘蛛の異能者を貫いていく。急所は避けているものの、本体の元結から伸びた髪が、ギロチンの如く左右から椿を二つにしようとしている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ