表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷中花  作者: 綴奏
12/165

レッドアイ 其ノ二

 ――コーヒーぶっかけ事件の数十秒後、おしぼりを手にした金髪の店員が店長と一緒に戻ってきて、平謝りをしてきた。が、赤月はむしろ申し訳なくなって早めに店を出ている。

 そして、夜宵たちは買い物へ行き、赤月と美咲が駅へと向かう途中、事件は起きた。

 イレギュラーが銀行を襲撃したらしい。

「赤月君!?」

「美咲さんは安全なところへ! 俺は夜宵たちを探す!」

 夜宵たちが向かったデパートのすぐ側には、襲撃を受けたとされる銀行があった。それを思い出した赤月は真っ直ぐ現場へと向っていく。

 しかし、彼が見つけたのは妹たちではなく、イレギュラーの方だった。

 先程の喫茶店で見た気の触れた男がアタッシュケースを手に立っている。どうやら、既に金は奪っているらしい。もっと悪いことに、足元には意識のないESP隊員と、真っ赤な注射器が落ちている。制服からして中級レベルの隊員だが、『レッドアイ』つまりは異能者のドーピング剤を服用した相手には敵わなかったようだ。

 ――焦点のズレていた目が赤月を捉えると、男はかなりの速度で突進してきた。引きつけた所で、後ろに大きく飛んで拳を避けると、アスファルトがことごとく割れていく。このレベルの怪力を持っている異能者はそうはいない。これはレッドアイの効果がまだ持続している証拠だった。

 赤月が着地すると同時に伸びてきた腕が彼を突き飛ばす。両腕で庇ったとはいえ、かなりの衝撃だった。それでも赤月は既に攻撃態勢に入っており、彼の右手の指は自分の左胸に突き刺さっている。その手を振り切ると、血牙がイレギュラーに真っ直ぐ向かっていく。

「くそっ!」

 赤月が悪態をつくのも無理はない。狙ったのはガードが緩い本体であったが、うねりながら縮んでいく腕に邪魔されてしまっている。しかも表皮が硬いらしく、血牙も浅く刺さっているだけだった。模様と防御力の高さから考えて、ムカデか何かの性質を左手に宿している生物系異能者らしい。

「――私が上級異能者になれた理由、わかるかしら?」

 気づけば、赤月の傍には美咲の姿があった。どうやら彼のことを追い掛けてきたらしく、彼女は既に青い電気を身に纏っている。

「気をつけろ、あいつはレッドアイを服用してる」

「これ以上は使わせないわ」

 それを聞いたイレギュラーは不気味な笑みをみせ、アタッシュケースを振るように開く。中には札束などひとつもなく、ただあるのは数本のレッドアイと、複数の銃だった。どうやら完全に頭がイカれているらしい。宙にバラバラに舞い始めたレッドアイに男が手を伸ばすものの、彼が握った手の中には何もなかった。

「電気の……塊?」

 赤月の眼の前にいる美咲が両腕をクロスさせるように引いていく。

「異能者は現代兵器の使用も禁止のはずよ」

 彼女が腕を振りきった途端、男の周りにあったレッドアイや銃はすべて後方へ弾き飛ばされた。

「飛ばせる電塊の威力が最大出力より弱くとも、正確に操ることで無数の戦略が生まれるの」

 そして、再び伸びてきた拳が美咲に触れる瞬間、イレギュラーは悲鳴を上げる間もなく白目を剥いて倒れた。呆気に取られている赤月を振り返って、彼女は言う。

「制御精度の高い電塊が比較的弱いというだけで、直接触れるのは危険よ?」

 ウィンクをした時に青い火花が飛ぶのだから洒落にならない。

 こういうところは姉妹そっくりだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ