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氷中花  作者: 綴奏
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赤い月明り 其ノ六

 赤月は話の流れが理解できない方向に動き始め、動揺を隠せないでいた。確かに、時の異能者の能力は貴重であり、何かと犯罪に巻き込まれやすい。どんなに力が弱くとも時の異能者の家系に生まれているという、その事実は変えようがないのである。それでもなお、彼女の父親がわざわざ嘘のデータを記録した意味は一体何なのか。

 その答えは、彼の隣にゆっくりと腰掛けた異能者の娘から告げられることとなる。

「時間操作。今の私は、ほんの一瞬。おまけに、ひとつの対象にしか能力を発揮できません。ですが、それはお父さんとお母さんが私を遠ざけてくれていたおかげなのだそうです」

「なんだよそれ……」

 『私を遠ざけてくれていたおかげ』。この言葉に理解できない嫌悪感を覚えた赤月の頭の中には、色々な感情が渦巻き始めている。

「時の異能者は、同じ系統の能力を持つ人とずっと一緒にいると、互いもくしは一方の力が強まることがあるらしいのです。私のお父さんと、お母さん。二人とも時の異能者でありながら、そのようなことは少しもなかったみたいですが」

 ほんの少し。僅かに、赤月は期待してしまっていた。そんな自分を、責めずにはいられなかった。碧井家に亀裂が入ってしまった理由が、お互いが一緒にいられない運命だったというのなら、まだ諦めがつくかもしれない。だけれど、涼氷の両親がお互いを遠ざけ合っている理由は、それで説明がつくものではなかったのである。都合の良い嘘を捏造していると言いたげな、彼女の口調。本人は少し足りとも納得していないのだから。

「ですが、私は違っていたんです。お父さんは私の血液検査で何かに気づいたんです。専門家にしかわからないレベルの話……だとお父さんは言っています」

 全部が嘘。都合の良い嘘。自分を遠ざけるための、両親がついている嘘。くだらないとばかりに、そんな嘘をつかれた自分を嘲笑うかのように。碧井涼氷は、真顔でこう言った。

「私には、世界の時に干渉する力があるそうですよ」


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