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氷中花  作者: 綴奏
105/165

眠らない夜 其十一

 

 ◆


 同時刻、強化合宿施設から少し離れた広場。

 そこには時間が経過したと思われる傷跡や痣に上書きするように、生々しい傷跡を刻まれた者が倒れている。それも一人ではない。ざっと数えても四人はいる。

「俺が力を失ったとでも思ったか」

 腰を抜かしたように尻を着き、必死に逃げ出そうとする少年の脚が蔓に巻かれていく。決して逃れることのできない現実を知らしめる悪魔のように、希望という光を恐怖で締め上げている。

「わざわざ呼び出しておいてこの様か。……つまらねーな、本当に」

 白目を剥いた少年は悲鳴を上げることすら許されぬまま、ショックで気を失ってしまったが、それは不幸中の幸いだっただろう。荊棘迷宮に目を付けられた者は、悪魔の棘を食い込まされるだけでは済まされない。何かが軋む嫌な音の末に、身体の一部が不自然な方向に折り曲げられたのだ。

 何かを確認するように閉じては開かれる手をぶら下げながら、黒崎学園のセカンドバレットは小さな戦場を去ろうとして足を止める。意外にもまだ闘う意志を持ち合わせている者がいるらしく、彼の後方にある木から刃物の音が聞こえてきたのだ。

 聞こえてきた、というよりもむしろ、振り向くように聞かされた音のように思えて仕方がない。その音が何を意味するのか悟ったのか、荊棘迷宮と恐れられる伊原は目を見開いて振り返った。そして、彼は耳にしたはずだ。

 自分が捕食者の手に落ちる前の、最初で最後の言葉を。

「楽しそうだな――私も混ぜてくれないか、セカンドバレット」


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