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氷中花  作者: 綴奏
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眠らない夜 其ノ八

 立ち上がりかけた吸血鬼が突然動きを止めたかと思うと、再びベッドに腰掛けて部屋の奥を見つめた。

「何だよ、涼氷」

 どうやら、今の不自然な仕草は時を奪われたせいらしい。蜘蛛の異能者と話をしようとした吸血鬼を止めた青髪の少女は、気持ち良さそうに伸びをしながら答える。

「紫煙乱舞はルールを著しく破ったため、ESPによって隔離されているそうです」

 それを聞いた吸血鬼は大人しくなり、自分の中で納得したように小さく頷く様子をみせた。彼のことだからすぐさまそこへ向かおうとすると思ったのだろう。避雷針姉妹はそんな赤月を意外そうに見つめていた。

 その後、赤月と美咲は各自に与えられた部屋に戻り、涼氷はユリアの部屋へと引きずられていくこととなる。夕飯は各校がテーブルごとに分かれ食堂で取る形式だったが、黒崎学園は絶対数が多かったため二つの長テーブルが割り当てられていた。

 ただし、赤月がいるテーブルには避雷針姉妹と涼氷以外は誰も座っていない。赤時雨がいることはもちろん、変に空席のある場所に座ればあの二人が隣に来るかもしれないからだ。

 糸車椿はESPに拘束されたままらしく、食堂には姿をみせていない。伊原の方についてはおおよその予想がついていたが、大勢で食事を取るはずもなかった。

 人口密度がおかしなことになっている黒崎学園エリアで食事をする吸血鬼は、他校のテーブルの様子を観察している。彼の眼に映る生徒は全員が中級者だが、その中でも選ばれた者たちばかりだ。そんな彼らが切り傷や痣、火傷痕などを作っているところからして、かなり激しい戦いが繰り広げられたに違いない。

 そんな中で痛めつけられることを考えた赤月は身震いをした。むしろ一撃で失神して棄権扱いになった彼は運が良かったのかもしれない。荊棘迷宮を前にして、あの有刺鉄線のような悪魔を使われなかったのだから尚更だ。家を出る前は子供のように夜宵にしがみ付いて抵抗していた赤月ではあったが、今はすっかり落ち着いた様子で食後のお茶を啜っている。――が、彼を呼ぶ声を聞いてむせ始めた。

「いたいた。黒吸血鬼くん、ちょっとワタシに付き合いなさい」


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