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第一話 唐突

さて、話はさかのぼり、一週間ほど前の事だ。

 幼いころに両親がはやり病で死んでしまったレヴァンは、比較的はやい時期から御者としての仕事にいそしんでいた。

 その日の仕事は城下町にあるレストランに小麦を届けること。

 いつものようにのんびりと、小麦に変な力がかからないように気にしながら道を進んでいると、城下街へ入るための関所で止められてしまった。いつもならレストランからもらっている通行許可証を見せるだけで通れるはずなのに今日はなぜだか関所の隅の方へ追いやられてしまった。


「あの、小麦を○○レストランへ辰の刻までに届けなければならないのですが・・・」

 

関所の兵士に訴えかけるも、小麦を持っていかれただけで解放はしてくれなかった。


「すまないが、もう少し待っていてくれ。」

 

ひどいもんだ。

 率直な感想はそうだった。今日は仕事がこれしかなく、夜通し運ばなければならない荷物や人もいないため、久々にゆっくりできると思っていたのに。


「おい、御者、起きろ。」


「ふぁい?」

 

今度は関所の兵士ではなく、王宮仕えの近衛兵のようだ。


「近衛兵様が何の御用ですか?私は田舎の御者ですよ?」


「スージア五世がお前を王宮へ召喚しろとお達しだ。」


「はい?」

 

レヴァンは耳を疑った。前世が魔王とはいえ、今はただの十四歳小娘。しいてあげるならば、十四歳小娘がかなり体力を使う御者という職種についていることだ。

 結局、あれよあれよという間に王宮へ連れていかれた。

 もちろん周囲の貴族たちはチラチラこちらを見ながら笑っている。


「(当たり前か・・・)」

 

いきなり連れていかれたうえ、仕事着のボロボロのローブだし、それを脱いだって田舎くさい普段着だ。普段からいいものを着ている貴族たちはそんなレヴァンが滑稽でしょうがないのだろう。

 レヴァンが魔王だった時は豪華な服を着ていたのかというと、実はそうでもない。さすがに重要な会談や儀式などのまつりごとにはキチンとした服で出席していた。しかし、元々現場で動き回りたがる性分な上に徹夜する事が多かったため豪華な衣服はかえって邪魔だと判断し、質素な服を着ているのが日常だった。

 もちろんその頃の部下達(といっても世界の大調整直後だったため数は少なかった)も動きやすさ重視のタイプだったので誰もこだわりなんてなかった。


「言っておくが、王の前で無礼をしたら即刻首をはねてやるからな。」


「心得ました。」


 謁見の間に入ると既に何人かの人物が王の前に控えていた。


「おぉ、最後の選定者がついたか!」


「陛下!!選定にありました卯の刻に門を通りました御者です!!」


「(選定の仕方そんなんでいいのかな?)」


 大調整のときに共に仕事をしていた男神の事を思い出す。

 大調整とは、まだレヴァンが魔王になったばかりの頃に行った世界の掃除の事だ。人間が汚しすぎて清浄する事が出来なくなった世界を、当時の突然変異で誕生した魔族が文明ごと破壊し、新たに古い文明からやり直そうとしたことである。

 しかし、発展した文明のせいで魔族側の被害も甚大だった。

 僅かに残ったのは文明について詳しく知らないほんの小さな人間の子供と、疲れきった魔族。

 両者とも満身創痍の状態のときにその男神『エターナ』は現れた。

 彼は人間の子供達にいきすぎない知恵と魔法の力を与えて荒廃した世界に旅立たせた。そして魔族達には世界の再建の手伝いを頼んだ。


「(あの後がたいへんだったなぁ。)」


 昔の事を考えていると、いつの間にか目の前に王が立っていた。


「そなた、名は?」


「レヴァンと申します。」


 慌ててひざまずき王に挨拶するレヴァン。元魔王ではあるが、長い村びと暮らし&仕事の都合上、偉い人間や権力者にめっぽう弱くなっていた。


「そなた、職は御者にまちがいないな?」


「はい、御者にございます。」


「宜しい、ならば今からそなたは勇者一行の御者じゃ。」


 勇者一行との言葉に、レヴァンはつい顔を上げてしまった。

 よく見ると、王のすぐ横には明らかなカリスマオーラ丸出しの青年と屈強な城の騎士。その後ろには見るからに怪しげなローブの魔法使いとキラキラ光るドレスを身にまとった姫がいた。


「(え、魔族退治されるんですか?)」


 それが最初の感想だった

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