出会い
早速読み始めてもらいたいのだが、まずは前置きを4,5行。
時給5円と申します、小説書きなんて初めてだが、技量が上達したらこの貧乏臭いペンネームも変えていこうかと思います。
書く小説のジャンルやその他の諸々は活動報告に纏めて置きました、是非見ていって下さい。
この「灯火な僕」は1人称視点、SFっ気ゼロ、ヘビーなテーマで、主人公の心情を哲学っぽい感じに細々書き続けるマイナー志向一直線の話です。
もう既に漠然と結末を考えついており、3日一遍の更新になるかと思います。
一癖のある文章だと思う。頭をカラにして思うがままに書くとこうなるようだ。ある程度書き進んだら削っていこうと考えてる。
誤字脱字や熟語の誤使用、もっと相応しい言い回しがあるぜ!!などの細かい注文は感想コメント欄にて承っています!それではよろしくお願いします!!
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不意に目が覚めた。
隣でまだすやすやと寝息を規則よく立てている彼女を起こさないよう気をつけながら上半身を起こし、左腕に付けた時計に視線を落とす。
『AM6:17』
込み上がってきた欠伸を噛み殺す。
具体的に何時何分に眠ったのかははっきりしなかったが、そんなに長い時間眠らなかったのだろう。
睡眠も浅かったのだと思う。
初めて泊まる人の家っという緊張感と寝慣れていないフカフカなベッドが原因だと考える。
伸びを一つ。
まだ眠っていたい惰弱な己の脳細胞に喝を入れる。
今日からまた新学期が始まる、続きは学校でいいだろう。
ベッドから出てシャワーを借りる。
さっぱりしてから昨日来た時と同じ服を着替えた。下着だけはコンビニで予め買っておいた。初めからこういう目的だったので準備は良かった。
初めて来る他人の家の冷蔵庫を勝手に開け、いくつか材料を拝借してキッチンに立つ。
鼻歌を混じえつつ朝食の用意をする。
「おっと残念、この家にはコーヒーメーカーがないのか」
朝には淹れたてコーヒーがいいのだが、勿論常備していない家も多いし、彼女は引っ越しをしたばかりらしいので、まだ購入していないのかもしれない。
幸いインスタントコーヒーがあったのでそれを入れる。
ちらりと時間を確認する『AM6:51』
「さて…そろそろ」
準備が整ったところでこの部屋の主を起こそうと寝室に戻る。
まずカーテンを開く、夏らしくまだ早朝だというのに燦々とした朝日がまっすぐとベッドに眠る彼女の寝顔に殺到し、彼女は嫌がるような顔をして、朝日からに逃れようと半身をよじって顔を窓の方向から背ける。
「ふむ」
悪戯心が湧き上がり、彼女の正面に回りこんでおでこにキスを一つ。
「ん、ん~」
眉に皺を寄せ、だが起きない。キスをもう一つ。
「ん」
頭を軽く動かし逃れようとするが、まだ起きない。更にキスを一つ。
「ん……にゃ?…………!!」
己の睡眠を邪魔立てする悪いやつを一目見てやろうと半目を開け、すると僕と目が合う。
最初は状況が飲み込めず、間抜けな音声を発し、秒針が半周する頃にようやく昨晩からの経緯を思い出したのか赤面する。かわいい。
「おはようございます、ご気分は如何ですか?お嬢様。」
「も、もうふざけないでよ~」
「おや、顔が赤いようですがもしかして熱がお有りなのかな?」
「ちょ!毛布を捲らないで!っていうか顔が近い近い~!!」
「つれないなぁ、昨晩はあんなに愛し合ったというのに…」
「も、もう!大人をからかうんじゃないの!」
殊更大胆に顔を寄せあって、大仰に囁いてやると、彼女は漸く自分が弄ばれている事に気が付く。
そして今更ながら「大人」っという単語を持ち出し、対抗しようとするのだが…今更劣勢を覆せるはずもなかった。
「朝食の用意が出来てる、準備出来たらテーブルにおいで。」
この如何にも初々しい感じがとても心地良いのだけれど「大人」を切り出された以上、彼女のプライドを鑑みて、この辺で切り上げることにした。
しばらくしない内に、彼女はパジャマを着込んで寝室とキッチンの仕切りドアからヒョコっと半身を出し、何かを弁明したそうにモジモジしていた。年上だというが実に愛らしい仕草である。
「あぅ、その…」
どうにも歯切れが悪い。
いやまぁ言いたいことはもう既に察しが付いているのだけど、これは極めて繊細でかつ本人にとって重要な事なので、遮るような真似はしない。
「わ!私は、えっと…」
どうやら僕の視線が気になって上手く続きを言えないようだ。かと言ってコミュニケーション中の相手から視線を外すのも失礼なので、気にせず彼女を視姦し続ける。
昨日聞いた話では1ヶ月前に上京したばかりらしい、なるほど彼女は何処かのんびりとした雰囲気を持つ。女性として平均よりやや低めの身長と童顔から実年齢より相当幼く見える、もっとも女性に年齢を聞くのはマナー違反なのでこっそり免許証で確認したのだけれど。
パッチリした目、通った鼻ずじ、少し暗いナチュラルブロンド、スッピンの状態からでも十分魅力を感じさせてしまうのは流石クォーターといった処か。
左目尻にやや垂れ下がった位置にある泣ホクロがまた愛嬌を醸し出している。あぁ、昨日の僕グッジョブ!
「違うんです!昨日の私は違うんです!本当は違うんです!」
「偶々同じ本を読んでいたなんて、すごく偶然で。まさか本の他にも音楽も映画の趣味も同じだなんて!それで私興奮しちゃって!肌が合うなって…」
付け加えると昨日夕方は急な土砂降り雨があった。本屋の紙袋を下げて困っていそうな彼女に「この付近に住まいでしたら近くまで送りしますよ」っと図々しく声掛けたのまでが偶然、で『本や音楽の趣味』は話術で彼女にそう思わせているだけだったりする。
当然ある程度マニアックな話にも合わせられるように日々努力しているし、僕もとても肌が合うなと昨晩思った。
因みに僕も彼女が男をホイホイ自宅に連れ込んだりするタイプだと思っていない。こういうことに疎く、奥手そうなのを選んでいる、なんて口が裂けても言えない。
着服したパジャマの上からでもグラマーなボディーが美曲線を描き、ボリューム満点とは行かないが張りのある胸がツンと立ち、その先端部が自己主張をしている。
(裸パジャマ…だと?素晴らしい!)
どうやら弁明を急ぐべく、ベッドから起き上がって、下着すら付ける暇を惜しんだらしい。考えていたよりもずっとプライドが高いのかも知れない。
男という生物は本当に節操がない。両手に彼女の膨らみの感触がフラッシュバックし、その他諸々が一緒に脳より引き出される。
こんな下賎な思考を悟られないようアルカイックスマイルを顔に貼り付ける。
彼女は言い訳を一通り終えて、そそくさと洗面所に向かった。
僕はといえば、自分に繋がる痕跡の消滅に全力を尽くしていた。
ーー僕は死にゆく人、己の快楽を満たす為に一時の戯れはするけれど、こんなのは一度きりの方が自分にとっても、彼女にとっても良いいいはずだ。彼女の様な性格なら自分を探そうともしないはず。ーー
僕の作った朝食を美味しいと言ってくれた。早めに平らげ、さり気なく食器の後片付けもしておく。
「ごちそうさま」
頃合いと見て手荷物を手繰り寄せて立ち上がる。彼女は座ったまま名残惜しそうな目で僕を見る。
「これでも優等生なので」
「たまには息抜きも必要だとなんじゃないかな?」
「今日は始業式があるんですよ」
「また…連絡しても?」
「もちろん!」
努めて笑顔で言い切り、彼女の温もりから遠ざかる。
玄関のドアを閉め、交換した彼女の電話番号連絡帳から削除し、心の中で小さく「ごめん」と謝る。
交換用に使った携帯は既に契約を半年前に打ち切っており、彼女の持つその番号では誰にも繋がらないだろう。
名前だって偽名だ、通っている高校名も全く見当違いな所を教えてある。
ーー自分でも勝手で、はた迷惑な話だと思うが、これから死にゆく人と深く関わっても為にならないだと思うからーー