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迷宮と掲示板  作者: Bさん
オマケ
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オマケダンジョン4話


 翌日、ちょっと疲れた体を気力で起こし、パソコンへ向かう。どうやら、前日に出した性欲抑制のスキルが売れたようだ。必要な人もいるらしい。どれだけ若さを持て余しているのだろうか。


 パソコンで調べてみたが、特に昨日の異常な状況の話は出ていないようだ。状況だけ書き込み、原因は不明とだけ記載し終了する。もしかしたら同じような経験をした人も出てくるかも知れない。


 のんびりと朝食、探索の準備を終えるとミーティングに入る。


「今日の探索は昨日の続きだ。目的は2階への階段を探すのとあの異常な状況の調査になる。2階を発見しても探索はコクの飛行ユニットが完成するまでお預けだ」


 皆に伝え、コクの方を見ると首を振っている。まだ完成には遠いようだ。


「飛行はまだ無理だね。ただ飛ぶだけなら出来るけど、推進力や出力の調整が難しいみたい」


 飛ぶだけでは昨日のようになってしまうだろう。無理に持っていっても自滅するだけだ。そして、コクは何やら武器を出す。


「昨日の赤炎鉱石と黒龍石で完成した武器だよ。有効活用して欲しい」


 早くも完成したらしい。鑑定をする。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

黒龍の矢筒

効果

攻撃が当たると高確率で即死効果を与える矢を作り出す矢筒。

1日に1本発生し、最大10本までストックできる。現在2本。

製作者:コク

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 性能が恐ろしいほど高い。そういう矢なのだろう。矢を作るとか凄くもったいない気がしなくもない。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

赤炎の杖+41

効果

炎系統の魔法を使うと凄く威力が上がる。

魔法保護無効

製作者:コク

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


(どうみても地雷です。ありがとうございました)


 魔法保護無効とか巻き込まれろという事だろうか。正直勘弁願いたい。+補正も異様に高い事から凄い性能だと予想出来る。


「矢筒はパステルが使ってくれ。矢を使うタイミングは任せる。杖は……」


 効果を仲間に伝え、渡していく。杖を誰に渡そうか見渡すと、リムが凄く目を輝かせている。嫌な予感しかしないからタリスに渡そう。


「杖はタリス、有効活用してくれ。仲間も巻き込むから注意してくれよ?」


 タリスに渡す。リムがしょんぼりしているが、頭を撫でて誤魔化しておく。


「主様、ありがとうございます。この矢に恥じない活躍をお約束致します」


「おっけー。頑張るよ」


 2人も特殊な装備を貰ったからだろうか。何か嬉しそうだ。皆に量産の武器以外を与えられる様になると良いんだが……全てはコク次第である。


「それじゃ、探索に行こうか。無理は禁物だからな」


 そう締め俺たちは迷宮へと向かった。




 昨日と同様に迷宮を探索する。罠は回避し、安全そうな場所でのみ戦闘を行う。これ自体は特に問題なくこなしていった。そして2階への階段を難なく見つける事に成功する。


(昨日のあの現象の調査に乗り出すか。正直関わり合いにはなりたくないんだがな……)


 この迷宮を探索していていきなり遭遇する可能性だってある。出来れば後顧の憂いはなくしておきたい。2階へ続く階段に楔を設置し、戦利品の確保の為に羽を使い一旦拠点へと戻り、石を使って迷宮まで戻ってくる。


「さて、これから昨日の原因を探す。タリスは探知で絶やさず警戒を行ってくれ」


 タリスは「はーい」と返事をしてくる。俺も探知をするが、罠の方を優先的に探している為、どうしても穴が出来てしまう。


「パステルとリムは周囲を目視で警戒、ネクは後ろに回って襲撃に警戒してくれ」


 3人は頷くと命令に従ってくれる。俺は罠の警戒をしながら先頭を歩き、ティアは俺の護衛だ。そうして周辺を警戒しながらマッピングで踏破していない場所を練り歩く。


「マスター、探知に変なのが引っかかったわよ」


 タリスがそう言ってくる。皆は周囲を警戒し出した。俺は探知を使い周辺のモンスターを確認していく。


(ん?魔王?なんでこんな所にいるんだ?)


 諸国を歩いている時に魔王には遭遇したが、特に敵対もしていないはずだ。マップに表示された魔王の点を押してみると魔王LV200となっていた。


(これは……別の魔王か……しかし200とはまた)


 俺たちのレベルは平均して大体180を超えた程度である。魔王が1体だけなら勝ち目はあるが、周囲にモンスターを連れているようだ。


「魔王がいるな。レベルが200だから俺たちが知っている奴とは別物だと思った方がいい」


 魔王は魔法もモンスターの扱いも適正がある。俺たちと同じくらいの強さだとしたら正面から戦いたくは無い。


「この魔王とは戦うことになりそうだ。全員覚悟を決めてくれ」


 皆、神妙な顔をして頷く。ネクは鎚を強く握っていた。いつもは冷静なのだが、魔王に関して何か思うことがあるのだろうか。以前、別の魔王に会った時も落ち着きが無かったように思える。


 魔王の点が俺たちの方へ向かってゆっくり歩いてくる。どうやら気が付いたようだ。俺たちは広めの部屋に入り、罠がない事を確認する。


「この部屋で魔王を迎え撃つ」


 陣形は俺とティアとネクが前衛、リム、タリス、パステルが後衛という探索向けのパーティだが、ボス戦でもある程度はどうにかなるだろう。


 魔王はゆっくり俺たちがいる部屋に入ってくる。その姿は俺たちが知っている魔王とは全く別物だった。黒い靄のようなモノを身に纏い雰囲気を出している。あっちの世界の魔王に見習って欲しいものだ。


(魔王とオークが数体、これならいけそうだ)


 雑魚はオークだけだった。これにドラゴンやミノタウロスとかが居たら辛かっただろう。


「ネクとティアはオークを先に頼む。相手は小型だから炎王の鎚はそっちで判断してくれ。俺は魔王を抑える。後衛の皆は援護を頼んだぞ」


 それだけ指示を出す。あれこれ細かく出すよりも各自で判断してもらった方が迷いも少ないだろう。俺たちはそうやって成長してきた。


 俺はアイテムボックスから鋼のナイフを取り出すと魔王へ向かって投擲する。この程度でダメージを与えられるとは思っていない。あくまでこの行為は挑発だ。魔王はそれを片手で弾くとこちらを見てくる。どうやら成功したようだ。


 剣を抜き、盾を構え魔王に向かって走る。途中で魔王が何か良く解からない魔法を撃ってくるが、それは盾で弾いて軌道を逸らす。手に重い力が加わるが耐えられない程ではない。小手調べ程度なのだろう。


 剣の攻撃範囲まで近寄るとその勢いを生かしてそのまま剣で突く。その剣は膜のようなモノに阻まれる。どうやら他のボスの様にバリアのようなものがあるらしい。楽に倒す事は出来ないようだ。


 俺は盾を構え防御に徹する。そう簡単に破れないのであれば、後は攻撃に特化した仲間の役目だ。俺は役目は魔王の攻撃を受け耐えるのみ。自分が出来る事を全力で行うだけだ。


 しばらくの間魔王の素手での攻撃は盾で受け流し、魔法は回避、もしくは後衛に届きそうなら盾で叩き落した。隙があれば剣で膜を斬る。そうしている内にネクとティアはオークを片付けたのかこちらへ参戦してくる。


「ご主人様、終わった」


 ティアはそう言いながら魔王へと剣を叩きつける。だがそう簡単には破れないようだ。ネクは炎王の鎚の使用を自重している。俺の防御を突破できない事でイラついたのか魔王の攻撃が適当になっていく。どうやら我慢強くは無いようだ。


 冷静さを失った相手ほど楽なものは無い。どれだけ力を持っていたとしても攻撃が当たらなければ意味が無いのだ。そうしている内に膜は破れ、ネクの鎚が魔王の頭を粉砕した。



 俺たちは構えを解かずに魔王の死体を見ている。いつもはすぐに消滅するはずの死体がずっと残っているし、宝箱も一向に姿を現さない。もしかしたらまだ何あるのかも知れない。


 魔王の死体を見ていると徐々に頭の無い死体が動き出し、遂には立ち上がる。魔王の体が突然弾け、巨大化していく。そして俺たちが見たのは……サイクロプスを横に広くしたようなモンスターだった。


 正直言って不恰好だ。魔王が変身を残していたとしてもこれはない。ド○クエ的な酷さだ。


「散開しろ、何をしてくるか解からない」


 皆にそう伝え敵から離れて広がる。元魔王は変化し続ける。どんどん醜悪になっていく。その光景を漠然と見ていると、元魔王の片目に向かって黒い矢が飛んでいき……刺さった。そして元魔王は消滅した。


「変身シーンで攻撃するのは反則だと思います」


 思わず後ろを振り向いてパステルに言う。本来即死が聞かないユニークモンスターも変身中は効いてしまったらしい。


「いえ……タリスが」


 責任を押し付けるつもりなのだろうか?楽に倒せたのだから良いと良いんだが……


「……マスター、何か嫌なのが近付いている」


 タリスは自分の肩を両手で押さえ震えている。こんな姿を見たのは初めてだ。慌てて探知を使うと?????という敵が範囲内に居る。


(これは……識別不可なのか?)


 今まで探知で名前が出なかったモンスターは居なかった。管理者は自分の切り札となるモンスターを出してきたのだろうか。


「得体の知れないモンスターが居る。このまま階段まで撤退するぞ」


 酷いプレッシャーの中、かろうじてそれだけ口にする。大分近くまで来ているのか、それだけでプレッシャーが強くかかる。仲間たちもその気配に気が付いたのか途端に表情が険しくなる。


 俺たちは罠に気を付けながら階段まで行く為に通路を進んでいるとそれと遭遇した。見た目は4階層のボスの死神に酷似している。ただその雰囲気や纏う力が段違いだ。


(こいつは危険だ。俺たちでは勝てない)


 そう直感する。プレッシャーは威圧の類だろうが、そのかかる量が違う。息すらするのが困難なくらいだ。こんな状態でまともな戦闘が出来る訳がない。


「……逃げるぞ」


 これだけ言うのだけでも精一杯である。ネクとタリスが何やら頷き合っている。


「マスター、ネクとあたしで時間を稼ぐからその間に逃げて」


 あの時と一緒だ。死んでも復活するシステムとは言え、死に際の感情はその人の精神を蝕む。


「それなら……」


 俺は全員で戦おう、と発言しようとしたが、ティアに塞がれる。今回は失う戦利品は無いし、仲間だけにその苦痛を与えたくは無い。


「私も残る。リム、パステル、ご主人様をお願い」


 ティアが勝手に話を進めていく。どうやらこの3人は覚悟が出来ているらしい。その覚悟を邪魔するほど俺は腐っては居ない。


「わかった、気を付けてくれ」


 それだけ3人に言う。決死の覚悟をしている相手に言う言葉ではないだろう。3人は視線をこちらに向けて来ない。ずっと相手を凝視している。俺たちは返事を受けずにそのまま階段の方へ走っていった。


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