オマケダンジョン3話
「うーん、地道にクリアするしかないのか」
翌日、調合をしながら掲示板での情報を頭の中でまとめてみても解決策と言えるようなものはなかった。1階は地道に、2階は飛行装備必須だ。
「2階の飛行必須の所はコクのあれが完成してくれるのを待つとして、とりあえずは1階だな」
好奇心を出さずに慎重に進もう。昨日のようにはなりたくない。
「ご主人様、準備できた」
ティアが代表して言ってくる。俺は調合を止めると立ち上がってティアの頭を撫でる。
「さて、今日の探索を始めよう。昨日は好奇心を出して罠を発動させてしまったが、今日は手を出さずに進む。その際に危険な場所を言うから絶対に手を出さないようにな」
そう伝えると、若干不安なメンバーがいるが、全員頷く。
「構成は昨日と同じだ。行くぞ」
先に伝えるのを忘れていた為、クウとエンも準備をしてしまっていたようだ。ちょっとしょんぼりしている。申し訳なく思う。
「いってらっしゃい。こっちは飛行ユニットの研究を進めておくね」
コクがそう言ってくる。どうやら昨日のアレはもう気にしていないらしい。「頼むぞ」と声をかけ俺たちは迷宮へと向かった。
迷宮の通路を歩いていると昨日と同じ場所に出る。罠は健在のようだ。
「そこに昨日の罠があるから気を付けてくれ」
俺は指を差し仲間に伝える。そういえば昨日、飛べるリムまで一緒に落ちたが、何だったのだろうか。リムだから気にしても仕方ないのかも知れないが。
その罠の場所を大きく離れ進む。迷宮自体は通路と部屋の組み合わせのようだ。ラスダンと全く同じ構成になっている。
「マスター、その扉から魔力の反応があるわよ」
タリスが言う。噂のワープの罠だろうか。好奇心を刺激されるが、今日は慎重になると決めているので、その扉を無視して別の通路へ向かう。
「この部屋は……罠も魔力反応もなしか。探知にはドラゴンが2体、オークが6体引っかかっている」
部屋の中に入ったら罠があるかも知れないが、少なくとも扉とその周辺にはないようだ。戦闘中に罠を調べる余裕が無いのが難点だ。
「この部屋は結構な大きさのようだから、ネクは炎王の鎚でドラゴンを頼む。俺とティアはオークを叩く。後衛の3人は臨機応変に頼む」
魔法のことはさっぱり解からない。俺も使えるが、殆ど盾で上がったようなものだ。普段は点火に使うくらいだろうか。
俺たちは扉を開けて慎重に歩みを進めるが、部屋が大きいようでまだ敵は見えない。すると上から何かが落ちてきた。
それは俺たちより少し前方の地面に激突すると潰れた。サイズは人型くらいだろうか。探知で見るとオークのようだ。
「何だ?」
待ち構えているのかと思ったら上から落下してくるなんて予想は出来なかった。そして合計6体のオークが全て落下してきた。正直、死体が消滅するシステムで助かった。長く直視したいとは思わない。
「状況が解からない。各自警戒をしてくれ」
探知を使うとドラゴンが2体見える。だが、時間が経つにつれ1体、もう1体の反応が消える。
「この部屋で何が起こっているんだ?」
まるでホラーだ。徐々に敵が勝手に消えていく、しかも原因がさっぱり解からない。オークの死体があった場所に行くと宝箱になっていた。上を見てもただの天井だ。落下してくるような場所なんてない。
(ワープか?だとしても一体誰がワープさせたんだ?)
折角なので周囲を警戒しながら宝箱を調べると普通に開けられた。もったいないので中身を取り出しアイテムボックスへと放り込む。そして俺たちはドラゴンの反応があった場所まで進めるとそれがいた。
「これはゴーレムか?」
2本の金属の柱が立っていた。上を見ると股、胴まで見える。その先は大きすぎるのかはっきりとは見えない。皆警戒をしていたが、どうやらゴーレムは動かないようだ。
「主、何じゃと思う?」
リムが真剣な顔で聞いてくるが、全然似合わない。
「活動限界とか越えたのか?だとしても消滅していないのは謎だな」
ドラゴンを倒した時点で活動を止めたのであれば消滅していても不思議ではない。むしろ今までの状態を見るとそれが当然だ。これはアレが出来るかもしれない。
「主様?まさか使い魔にしようなんて思っていませんよね?」
先手を打たれた。どうやら顔に出ていたらしい。
(コク辺りなら巨大ロボットとかに改造してくれそうなんだよ!!)
男は夢を追い求める生物である。諦めたとしてもその可能性があるなら試したい。
「ああ、使い魔にすればどこかで使えるかもしれないだろう?」
正直に話す。迷宮では使えないかもしれないが、世界へ出れば使い道がある、かも知れない。あるといいな?
「主様……どこに置くつもりなんですか?この高さの部屋なんてありませんよ」
地面からでは頭が見えないほどでかい。拠点には置く場所がないだろう。
「……畜生……」
仲間が全滅した時よりも大きな絶望を感じる。夢が目の前で崩壊した気分だ。大半はコク任せだが。
「リム、ゴーレムの胸の辺りに弱点になる宝玉があるらしい。飛んでそれを魔法で打ち抜いてくれ」
泣く泣く指示を出す。そしてリムは飛んでゴーレムの胸の辺りに行くと魔法を打ちゴーレムを消滅させた。タリスに周辺を警戒して貰いながら宝箱を開け、戦利品を回収する。
(しかし、活動が終わったゴーレムに原因不明のモンスターの死か……警戒した方が良さそうだな)
もしかしたら報告に上がっていないモンスターが居るのかも知れない。少なくともオークとドラゴンより強いモンスターが。
俺たちは罠を警戒し、何体かのモンスターを倒すと拠点へと帰還した。いつもと違い階段まで歩いて戻らないといけないため、余力を残しての早めの帰還だ。
「さて、戦利品だが、今回はこっちで1つ1つ鑑定を使って調べたいと思う」
俺はそう言うと今日の戦利品をコタツに並べる。早めの帰還なのでそう大した量はない。今までにない薬品や素材らしいので、俺が直接処分するよりも各々の専門家が判断を下した方がいいだろう。
「まず、この鉱石だが……赤いが赤炎鉱石?ああ、ネクのアレの……」
あの後、3階の坑道で何度か採掘をしたのだが、1個も出てくれなかったレアな鉱石のようだ。もしかしたらコクがいい物を作ってくれるかも知れない。そう考えているとコクがコタツの上から強奪する。
(他のメンバーは使わないから慌てなくても……)
相変わらず鍛冶の事になると目の色が変わるようだ。こちらを見てさっさと鑑定しろという顔付きになる。可愛いもんだ。
「この黒いのが黒龍石?白っぽいのがプラチナの原石らしい。残りは箱でもある宝石類だな」
そう言うとコクが全部持っていく。その光景を見てから他の皆を見るが、特に皆は気にしないようだ。いい物が出来る事を期待しよう。
「次が2本ある……これはスクロールか?」
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性欲制御
効果
性欲を制御出来るようになる。プレイヤー専用
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???
効果
???。覚えたら消せない。プレイヤー専用
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(……どうしろと……)
性欲の制御は多分出来ているので、使う必要はないだろう。誰に向けているのか解からない。???はそんなに管理者は俺に使わせたいのだろうか。
(いいぜ、かかってきな)
覚悟を決めて使用する。
*限界までスキルを覚えています。今回だけよ?*
10個覚えていた事を忘れていた。なのに覚える事が出来たようだ。管理者に見られているのだろうか。
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魔王の魔眼
効果
全ての使い魔を魅了する。
※他の目を使うスキルが同時に発動するので注意。
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(……俺に死ねと?)
魔王だったら部下を統率するのに便利だろう。だが、今の俺が使ったら危険なのは火を見るより明らかである。
「うん、スキルはいらないな。後で売っておくよ」
と誤魔化した。魔王の魔眼は既に覚えてしまったからどうしようもない。
「次は薬品か……。まずこれは一時的に巨乳になる薬?」
そう言うと隣のティアが凄い勢いで持っていく。ティアを見ると凄く真剣な顔をしている。気にしていたのだろうか。
「ご主人様、いつもがっかりしているから……」
と小声で言ってくる。申し訳ない。周囲を見ると皆仕方ないね、という表情だった。意思疎通が出来ているのか。
「さて、次だ。何?一時的に若返る薬?どうすんだこれ」
これに手を出すという事は年齢を気にしていると思われるのだろう。皆手を開いたり握ったりしているが誰も取ろうとしない。
(まぁ、一時的だしな。どれくらいの効果か解からないのに手を出す奴は居ないだろ)
そう決め付けアイテムボックスへと放り込む。一部残念そうな顔をしていたがスルーしておく。
「次は……ああ、これか」
それだけ言うとこっそり懐に仕舞う。さすがに渡すわけには行かない。後で使う時にこっそり使おう。
「こんなもんか。今回は早いが今日の所はこれで解散だ。お疲れ様」
皆が挨拶し各々のやりたいことの為に分かれていく。俺は調合を始める為に道具を取り出す。夜が楽しみだ。
薬の使用とかの話は一般向けでは無理なのでありません。
スズキが隠したのは媚……なんでもありません。




