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迷宮と掲示板  作者: Bさん
オマケ
91/125

魔王さん

時系列的には、聖女と骨より前になります。物語として余り関係ありません。

 これは俺たちが諸国漫遊の旅をしている途中、魔族領に立ち入った時の話である。



「ここから魔族領らしい。皆、一応警戒をしてくれ」


 今回は人間ばかりの町ではない為、使い魔は全員呼び出している。折角の旅だ、留守番をしなくて済むのなら全員で歩いていきたい。


「それじゃ、あたしは探知で警戒するわね」


 タリスは探知スキルを使い周囲を警戒する。俺とティアとネクは前列を、エンは後ろを歩く。他のメンバーはその間だ。


 魔族領とは言え、いかにも魔界という雰囲気は無い。あくまで人間が統治する土地と魔族が統治する土地の違いでしかない。


「あ、盗賊」


 タリスが声を出す。そっちを指差すとかなり遠くに魔族の影が見える。俺たちを待ち伏せしているのかも知れない。


(といってもこっちから見えている時点で三流どころじゃないけどな)


 隠れるにしても、もう少しどうにかならないものだろうか。


「リム、範囲魔法であの辺を焼き払ってくれ。盗賊にかける情けは無い」


 リムに伝える。リムは自信満々なのか無い胸を張り「任せるのじゃ」と言ってくる。やり過ぎそうだが、さすがに魔力が切れるほどの魔法は使わないだろう。


 リムは詠唱を開始する。俺たちはリムを囲み周囲を警戒しておく。探知はあるが、過信をする気はない。俺たちの知識の外にある魔物だって居るかも知れない。


 そしてリムは魔法を完成させると盗賊の居た辺りを一気に焼き払う。


(あーこれはやりすぎだ……)


 盗賊の居る辺りを中心に半径100m以上の範囲一気に焼き払っている。探知を使い巻き込まれた哀れな人が居ないか調べてみる。


(ん?魔王?勇者?)


 何か変な単語が見える。魔王LV70と勇者LV50、戦士LV50、魔法使いLV50の4人が居た。こんな所で最終決戦をしていたのだろうか。その人たちが居る所まで魔法が広がっていく。


 そして、勇者、戦士、魔法使いの点が消えた。


(……やっちまったな)


 炎が消えたので魔王たちが居た場所まで行ってみる。周辺は焼け野原だ。草木1本も生えていない。


「すまん、大丈夫か?」


 魔王はゆっくりよろけながらも立ち上がる。周辺には焼死体が3人分あった。魔王だけあって何とか生きているらしい。


「ハァ……ハァ……一体何が起きたんだ……」


 魔族の青年だろうか。頭から角が生えている。ちなみに魔王の種族はバラバラらしい。世界によってはダークエルフだったりする場合もあるとか。


「すまん、こっちの魔法に巻き込んでしまった」


 素直に謝る。と言っても賠償とかはするつもりは全く無い。以前それをやって付け上がってきた相手もいたのだ。


「いや……助かった。勇者との戦いに負けそうだったのだ」


 何故勝てそうに無いのに1人で挑んでいたのだろう。慢心でもしていたのだろうか。


「すまないが、私は城へ帰らせてもらう。では、さらばだ」


 魔王はそれだけ言うと慌てて去っていった。思ったよりタフらしい。そりゃ、あんな魔法を使った元凶とは関わり合いたくないだろう。


「まぁ、無事ならいいか」


 この件は忘れるに限る。もう会う事もないだろう。


「良く解からんが、行こうか」


 焼死体はそのまま残し、俺たちは魔族領で一番近くにある街へと向かった。




 街の中に入った俺たちはまず宿へと向かった。寝る時は拠点へ飛べるとしても宿の部屋で移動した方が自然だろう。何せ9人と言う団体は目立つ。どこに人の目があるか解からない。


 複数の部屋が空いていなかったので大部屋を借りる。4人部屋だが仕方ない。9人で4人部屋とか宿の人はどう思っていたのかは、気にしない方がいいだろう。


「さて、街を歩いてみるか。全員だと目立つから2手に分かれよう」


 魔族領だから、獣人やエルフ、ドワーフといった亜人種は多く住んでいるので目立たない。問題は天使と精霊2人だろう。人間と違ってその神性や力はすぐに気付かれてしまう。


「ティア、パステル、コク、リムで行動してくれ。ネク、タリス、クウ、エンは俺と一緒に行動しよう」


 俺とネクは護衛という形にする。問題が起こるとすればこの3人だろう。ティアやリムは不満そうにしていたが、小遣いを多めに渡す事で諦めてもらった。変な物を買って来ないと良いのだが……。



 俺とネクとタリスが先頭を歩き、その後ろをクウとエンが歩くという形になった。主にタリスが先導して露店を荒らしている。クウとエンはどちらかと言えば流されるタイプなので、自己主張はしない。


(クウが爆発したらやばいけどな)


 固有スキル、狂気の波動。発動条件は未だ不明だが、LV100以下しかいないこの世界で発動したらかなり危険だ。効果範囲がどの程度かは解からないが、一方的な虐殺になるだろう。被害者がどうなるかよりも、クウがその光景に耐えられるのか心配だ。


 しばらく散策し、タリスは食べ物を大量に買ってはアイテムボックスへと放り込んでいく。今は食べないらしい。エンとクウは露店の道具を一緒になって眺めている。ネクは裁縫道具を探しているようだ。完全に趣味になってしまったのだろうか。


 特にトラブルも無く集合した。そのまま宿へ向かい、味はそこそこの料理を食べ俺たちは拠点で眠った。ここまでならいつもと変わらない光景だったのだが……。




 翌日、宿を出ると周辺を様々な種族で構成された集団に囲まれる。装備が全て統一いるため、どこかの軍隊か私兵だろう。


「何のようだ?」


 それだけ言う。こういう時は変に多く語るよりも短い方が威圧感が出る。すると代表と思わしき人物が現れる。


「私は魔王親衛隊の隊長だ。昨日の勇者討伐の功績を称えて城へ招待したい」


 そんな事を言ってくる。


(正直、関わり合いにはなりたくないんだがなぁ……。だけど、殲滅して通るのもなんだし)


「解かった。招待を受けよう。そちらから危害を加えない限りこちらからは手を出さない」


 戦力に関しては魔王から知らされているだろう。これだけ言っておけば十分だ。俺たちは馬車で運ばれ城へと向かった。




 城に到着し、俺たちは謁見の間へと案内される。魔王が玉座に座りこちらを見下ろしているが、俺たちは跪かない。乞われて来た以上、下に思われるつもりは無い。


「この前は世話になった礼を言う」


 特に俺たちを咎める真似もせず、礼を言ってくる。


「俺たちは助けようとしてやった訳ではない。気にするな」


 礼に欠いているかも知れない。それでも対等の姿勢は崩さない。互いに睨み合うように視線を交わす。すると魔王が徐々に泣きそうな表情になってくる。


「魔王様、来て頂いた用件を言いましょう」


 魔王の隣に控えていた魔族が何かを魔王に伝えている。どうやらただ礼を言う為に呼んだ訳ではないらしい。


「そなたらの力を見込んで頼みがある。人間の軍……」


 魔王が何やら言ってくるが、どこかの勢力に付くつもりは無い。


「断らせてもらう。世界の情勢に興味はない」


 全て言わない内に打ち切る。魔王やその側近は渋い顔になり、親衛隊は武器を抜かないまでも警戒する姿勢をする。そんなものはもう見慣れている。


(剣を抜いていれば楽だったんだがな)


 下っ端と言えど剣を抜けば、そのまま敵対を意味する。部下への教育がなっているようで困る。人間勢力は簡単に敵対してくれた。


「見た限りでは街も平和のようだったし勇者も死んだ、わざわざ戦う必要もないだろう?」


 そう伝える。魔族と人間の勢力図は拮抗していたようにも思える。


「それが……だな。勇者はどうやら囮みたいなんだ。北部から人間の軍が町を破壊しながら向かってきている」


 その囮に負けそうになったのは誰なんだろうか。


「ならば魔族の戦力を集めて迎撃すればいい。俺たちが入り込む必要はないだろう」


(それに俺たちが介入したら、指名手配されて人間領への観光がし難くなるじゃないか)


 具体的な理由は言わずにそれだけ言うと、魔王が震えだす。どうしたのだろうか。


「じ、実は戦争が怖いんだ。戦いなんて私には出来ない」


 魔王がそんな事を言ってくる。何故そんな奴が魔王になったのだろうか。


「300年程前に倒された先代はそれはもう魔王らしく振舞いましたが、現魔王は臆病で争いが苦手です。とは言え、選ばれてしまった以上魔王なので皆従っております」


 側近がそんな事を言う。本人の前でよく言うものだ、と感心する。


(魔王のシステムは解からないが難儀なものだな。せめて性格を判断基準にいれてやればいいのに)


「ならばお前らが魔王を鍛え上げればいいのではないのか?」


 弱いなら鍛える、当然の事だろう。だが側近は


「既に色々と手は尽くしましたが、どれも効果がなく策は尽きました。昨日も1人で勇者討伐へと向かわせたのですが……」


 そこまで言うとこちらをチラッと見る。邪魔をしてしまったようだ。


「我々は魔王様に手を出す事はできません。ですので皆様方に人間の軍勢の撃退か魔王様の矯正をお願いしたいのですが」


 側近の人はそう言うと、魔王が凄い勢いでその人を見る。どうやら知らされていなかったようだ。


「そういう話なら構わないだろう。魔王の根性を鍛えよう」


 何だか俺も面白くなってきた。使い魔たちを参考にすればどうにかなりそうである。


「そうですか、ありがとうございます。ささ、魔王様、鍛錬場へ向かいましょう」


 拒否する魔王を側近と親衛隊が無理やり連れて行く。俺たちはその光景を見ながら付いて行った。




 鍛錬場へ着くと、まず俺はネクに頼んだ。魔王の風格を得るのにダークロードであるネク以上の適任はいないだろう。


 ネクは魔王の前に立つと炎王の鎚を取り出し、全身に黒い靄を鎚に黒い炎を纏わせる。それだけ魔王はヒィという声を上げ竦んでしまった。どうやら側近や親衛隊まで震えている所を見ると普通ではないらしい。


「さぁ、ネクと手合わせをするんだ。大丈夫、命だけ・・は取らない」


 無慈悲な言葉を魔王に送る。俺だったらこの状態のネクと絶対に手合わせなんてしたくない。一瞬で負けそうだ。ネクが何時までも立ち上がらない魔王に業を煮やしたのか、隣に鎚を振り下ろす。そして、その風圧だけで魔王は飛んでいく。慌てた側近と親衛隊は飛んだ魔王へ駆け寄る。やりすぎただろうか?


 

 気絶していた魔王を無理やり叩き起こすと次はパステルとクウによる根性を鍛える鍛錬だ。既に魔王は号泣して懇願している。だが俺たちは甘やかすつもりはない。俺たちは側近と親衛隊を連れ鍛錬場を出て行く。あの光景を見せるわけにはいかない。客間で1時間ほど休憩をし鍛錬場に戻ると魔王が痙攣を起こして倒れている。


「うーん、これ以上は死にそうだな。続きは明日にしようか」


 そう側近と親衛隊に伝え、俺たちは客室を用意され泊まる。最高のもてなしを受けて拠点に戻る事を忘れ泊まった。夜にリムが血を貰う為に進入してきた以外特に何も無かった。


 

 翌日、謁見の間に向かうと側近の人しかいなかった。どうしたのだろうか?


「おはよう。魔王はどこにいるんだ?」


 昨日の続きをしようとプランまで考えてきた。是非とも試してみたい。


「魔王様は……全軍隊を率いて迎撃に向かいました。何でもここに居るより人間と戦ったほうがマシだとか」


 まさかの逃亡である。折角のプランが台無しになって残念だ。


(……戦いに行ったのなら成功なのか?)


 今はもう知ることは出来ないだろう。側近は報酬を払うと言っているが、大して欲しいとは思わないので断って城を出る。どうやら今日も平和なようだ。


ここに来るまでにスズキは使い魔以外の人を信用しなくなってきています。

力を持つ人に対する扱いというのはどこも変わらないようですね。

最初は捕縛する為に体術を取りましたが、それすら行わずに殺してしまう事も増えてきました。

その内、スズキが開き直って破壊を振り撒く可能性も否定出来ません。


掲示板の人たちは同等の力を持つ存在なので、他人というより同士に近い感覚です。


本来書くつもりがなかった話ですが、魔王という単語が各所で出てきておりますので、簡単に書かせていただきました。

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