6話
「さて、ただいまっと」
今回は余裕のある帰還である。そのまま牢屋へ直行する。
「確か牢屋に放り込むんだっけか」
良く見ると牢屋には丸い何かを入れる場所がある。
そこにアイテムボックスから出した玉を入れてみると煙と共に手足が縛られた骨が現れる。
「骨を拘束とかシュールだな……」
ある意味牢屋で朽ちた死体みたいな光景に苦笑する。
(確か、簡単に服従するんだっけ)
掲示板情報だから必ずしも信用出来ないが、とりあえず骨に問い掛けてみる。
「君、俺に従ってくれるかな?」
だが骨は首を振る。これでは駄目だったのだろうか。
「何か条件とかあるのかな……」
と独り言を呟くと、骨が頷く。何か良いたい事があるらしい。
(誰だよ、簡単に服従するって言ったの)
「えーっと、条件って何かな?
一緒に戦う事?」
骨は首を振る。違うらしい。
「なら、自由?」
骨は首を振る。これも違うらしい。使い魔が自由に行動したら使い魔じゃなくね?と言ってから気が付く。
「うーん、食事付きとか?」
今度は首を縦に頷く。あれ?骨って食事しないんじゃ……
(条件がないと服従しない、食事をするとは掲示板の話と真逆だな)
「解かった、今は大した食事を用意できないけど、必ず用意出来る様にする。それでもいいかな?」
骨は首を縦に頷く。良いらしい。
「それじゃ、気を取り直して”テイム”」
スキルの使い方は良く解からなかったが、テイムと言った後に何かが入り込んできた。
(これは骨の情報だろうか。文字や数字の羅列という訳ではないから内容を判別は出来ないけど、何となく情報だと解かる)
しばらくすると収まり、目の前の骨が自分の使い魔だと自覚できるようになった。
「では、手足の拘束を外すぞ」
牢屋に入り縛ってあった骨の拘束を外す。そして骨が立ち上がる。
骨の身長は大体130cm程しかない。肉がないにしても小さくはないだろうか。
そのままパソコンの近くまで歩いていく。俺は座ったが、骨は直立不動である。
(マニュアルのテイムに関する項目を見ておくか)
テイムに関する注意点
・使い魔は戦闘で死ぬ事はない。
・食事を与えないと徐々に衰えて行き最終的に消滅する。(ただし、アンデッドは除く)
・使い魔になったらまず名前を与える事。
・使い魔もスキルを覚える事が出来る。
・使い魔は拘束して初めて個体として認識される。その為捕獲時に戦った敵とは基本別物になる。
食事しなくても大丈夫なのか。それでも欲しがるとは……この骨は生前美食家か何かだったのだろうか。
あと名前か……苦手なんだよな
不死者、死霊術、ネクロマンシー、ネクでいいか
「お前の名前はネクな」
骨が頷く。それで良いらしい。
(骨のステータスを確認してみるか)
名前:ネク
性別:女
種族:スケルトンLV1
職業:ファイター
種族適正
聖属性弱化、闇属性無効化、痛覚無効
職スキル
熟練度最適化:スキル熟練度が上がり易い(LV10まで)
勇気:敵と対峙しても怖くない(限界有り)
スキル
剣術LV1、鎚術LV1、盾術LV1、軽業LV1
装備
武器:なし
盾 :なし
頭 :なし
胴 :なし
足 :なし
装飾:なし
「……え?女だったの?」
頷くネク。
(小さいとは思ったが女だったとは……と言っても骨だしなぁ……
あと、スキルが俺よりも多いな。鎚とか出たら持たせてみるか)
「とりあえず、お前の武器はこれな」
今朝、装備を全て売ってしまった事を少し後悔しつつ、銅のロングソードを渡す。そのままネクはそれを装備する。
(仲間も増えたし、次は……)
何をすれば良いか攻略本とかWIKIが欲しくなる。
掲示板の方では情報をまとめたり、スキル検証をしているようだ。
だが、まだ1階層を突破した人は出ていないらしく、目新しい情報はない。
DPが200ポイント残っていた事を思い出し、何か珍しい物が無いか売買リストを見る。
中には調教用の鞭や媚薬といった性的な物から、テレビやオーディオ機器、ゲーム機のような家電製品まであった。
(……ここに俺たちを呼んだ奴は引き篭もらせたいのか?)
嗜好品に必要なDPは高めだ。ある程度探索を続けないと揃える事は出来ない様になっている。
(まぁ、高いし買うとしても当分先だな)
リストを調べるのを再開する。集中してみるというよりは、漠然とマウスでページ下部までスクロールしていく。
「おっ?」
思わず声が出てしまった。
・転移の楔&転移の石セット 100ポイント
転移の石を使う事で転移の楔を使った場所に一瞬で移動できる。
楔は取り外し自由で石は消耗せず何度でも使える。プレイヤー1人様1セットまで
便利な上に100ポイントである。攻略に関するアイテムは果てしなく安い。ブラウン管17型テレビ10万ポイントとは大違いである。
似たようなのではこんなものもあった。
・転移の羽 10ポイント
瞬時に拠点へと帰ることが出来る。消耗品。
1回10ポイントが高いか安いかは置いておく。瞬時に帰る事が出来るという事は、限界まで迷宮探索が出来るという事だ。
何せ帰り道を気にせずに済む。楔と石で迷宮内へ、羽で帰還が普通になりそうだ。
楔と石を1セット、羽を10枚買っておく。羽は仲間に持たせる事で俺自身が危険な状態だったり、はぐれた時に脱出が出来るかもしれないので複数購入。
(俺はアイテムボックス使えるけど、使い魔はどうなんだろうか。鞄とか必要になるのかな?)
疑問に思いながら、隣で直立不動しているネクに緊急時に使えと伝えながら転移の羽を3つ渡す。すると、空間が割れ持っていた羽をその中に放り込んだ。
(使い魔もアイテムボックスが使えるのか……。て、まさか共有じゃないよな?)
少し焦りながらアイテムボックス内を調べる。
転移の羽X10
(共有だったーーーーー)
慌ててネクを見るとニヤニヤしている様に見えた。骨だから表情は動かないが。