55話
あれから数日経った。未だに俺たちはボスを倒せずに居る。その理由は簡単だ。まだ精霊魔具が人数分完成していないという単純な理由だった。
何がさぁ、リベンジの時間だ(笑)だろうか。気合を入れた自分が恥ずかしくなる。
「コク、防具の製作はどうだ?」
コクに進捗を聞いてみる。
「ん~1日1つ作るのが限界かな。慌てずに待っててね」
どうしようもないらしい。逸る気持ちはあるが、揃わないのではどうしようもない。コクは無理な事は無理と言ってくれるので本当に限界なのだろう。
「そうか、こっちは訓練しながら待つとしよう。たまにはエンを連れて4階層へ行って見るか」
5階層は神聖魔法の嵐なので危険だろう。4階層ならティアは参加出来ないが、死ぬ心配は余りない。
4階層へエンを連れて行く。構成はネク、クウ、リム、俺、エンだ。パステルとタリスとコクは精霊魔具製作、ティアは4階層なので留守番をしている。
「エン、無理だけはするなよ?今回は神聖魔法が効果的だからネクとクウ頼む。リムは魔法保護があるから好きなだけ派手にいけ」
皆に伝える。今居るのは直通ゲートの関係上1階だ。ゾンビの腐臭が酷いが贅沢は言っていられない。速やかに殲滅しよう。
そしてフィールドへ乗り出し、戦闘を開始した。のだが……
「アーッハッハッハ、チリとなれ豚どもが!」
戦闘を始めて数分、クウが豹変した。表情を見る限り凄く楽しそうだ。本人以外全員が引いている。
(一体何が起こったんだ……)
アンデッドが相当嫌いだったのだろうか、そうなるとパーティのアンデッド2人は近寄らせない方が良いのだろうか。
戦闘が終了し、惨事と化した周辺を見ながらクウに聞く。
「クウ、アンデッドが嫌いなのか?」
内心ビクビクしながら聞く。あれがこちらに向いたらとても怖い。
「?ゾンビとかは好きにはなれませんが、そこまで嫌悪するほどではありませんよ?それよりお怪我はありませんか?」
良かった、いつものクウだ。多重人格とかそんなのなんだろうか。何時発動するか解からないから怖い。
「いや、大丈夫なら良いんだ」
まるで加虐趣味だ。
(待てよ……1つだけ心当たりがある……まさか!!)
パステルとの秘密訓練である。未だに続いているのは何となく解かっていたが、こんな結果に繋がるとは……。
怖いが今度こっそり覗いてみよう。
「さ、さて、この調子でどんどん敵を倒してレベルを上げよう」
気を取り直して本来の目的であるエンのレベル上げに戻る。こちらに攻撃が向かない事を祈ろう。
心配とは裏腹に無事戦闘は終了し、順調にスキルが上がった。時折リムに感知スキルを使わせて先導させたりしたが問題なく出来ていた。俺たちは拠点へと帰還する。
拠点へと戻ると俺は真っ先にパステルのもとへ向かう。問い詰める為にパステルの手を引き俺の部屋へと向かう。
「主様、強引です……」
顔を赤らめて何か誤解している。そういえばこいつはMだった。強引なのが好きなのだろう。だが今大事なのはそんな事じゃない。
「1つ聞きたいことがある」
俺は真面目な表情になって言う。それを見たパステルはもじもじした表情から真面目な表情へと切り替える。さすがは公私を使い分ける女。
「クウのあれは一体なんだ?性格が豹変したぞ」
俺が聞くとパステルはばつの悪い表情に変わる。本人もやりすぎたと思っているのだろうか。
「あれは……ですね。相手を攻撃する恐怖を克服する為に日夜訓練をした結果でして……」
いつもしっかり話すパステルにしては珍しく言葉を濁す。本人にとっても予想外だったのかもしれない。
「思ったより良かったので、止めずに居たらあのようになりました」
予想外は予想外でも嬉しい誤算だったようだ。どうしようもない女である。
「……そうか。止めはしないが、味方には攻撃が向かないようには頼むぞ。戦闘出来ないより出来た方がこちらとしては心強い」
こっちが攻める方だと大人しいしな。攻勢が逆になるとやばそうだが。
「はい!がんばります!!」
主からの許可が出たからか凄く嬉しそうだ。こいつはどこまで突っ走るのだろうか。
「あ、ああ。程々にな……」
若干引きながら注意を入れる。
(趣味以外ではまともな奴だからそこまで酷くはならないと思うが……。やっぱり今度こっそり覗いてみよう)
そして俺たちは部屋から出てコタツまで戻る。気を取り直して調合をやる。回復薬、スタミナ、マジックポーション、精力薬を作る。強化宝石は調合なのか解からないが、出来るのと需要があるのだから仕方なく作る。
基本的にすり潰して水を混ぜるだけである。これだけの技術を皆出来ない理由が解からない。順調に作ってはアイテムボックスへと放り込む。もう何度も繰り返した作業だけに苦痛も楽しさもない。
調合を終えるとパソコンへと向かい戦利品を処理する。さすがに4階層の品物でいい物はないので薬品以外全て売却する。
コタツへと戻ると丁度ティアが料理をしに行く所だった。料理スキルは消してしまったが、材料を切る位なら問題ないだろう。手伝いを申し出てキッチンへと向かう。
最初は料理を切ったり千切ったりする準備は多かったが、今はもうそれも終わっている。邪魔をしないよう後ろからティアを眺めてぼーっと見ている。
(エプロンとか欲しいよなーメイド服は作ったのに何でエプロンを作らないのだろうか)
実際は前掛け程度ならある。だが、それに欲情は出来ない。あくまでそっち方面に魂を揺るがすエプロンを所望している。
(今度ネクかコクに頼んで作ってもらうかね。デザイン自体はメイド服から流用できるし)
2人にはテレビからの情報で得られるコスプレ衣装を作って貰い、お世話になっているので性癖がばれる程度なんて事は無い。コスプレショップを自動販売で出すくらい需要はあるらしい。皆欲望に忠実である。人のことは言えないが。
ぼーっとティアを眺める。尻尾や尻をあっちこっちに動かしている光景は欲をそそるが、忙しそうにしている相手を襲ったりはしない。ただ傍観するだけだ。
そうしている内に料理を作り終えたようなので、コタツへと運ぶ。何だかんだで9人も居るわけだからかなり狭い。そろそろ拡張するべきなのかも知れない。実際今はエンはコタツに入らずに(入れない)囲いの外にいるし、リムは俺の膝の上に座って食べている。
食事を終えると皆にコタツを拡張する事を伝え離れてもらってパソコンへと向かう。正方形だった物を長方形に変える。これなら9人座れるだろう。以前のコタツは俺の部屋を畳に変えるとそちらへ移動させた。これで1人で独占できる。
コタツが大きくなるとそのままネクとタリスが入る。どうやらコタツの魔力にはあらがえない様だ。俺もコタツへと向かう。人のことは言えない。
「これだけ大きければ寝転がりやすいわー」
タリスがおばさんみたいな事を言う。こんなんで数年後大丈夫なのだろうか。
「あー緑茶や煎餅、蜜柑が欲しくなるなー」
コタツに入りながらぼやく。どうやらそれにネクとタリスが釣れた様だ。
「それは何なの?」
タリスが聞いてくる。ネクは良く解からないが用意しろと目で語っているようにも見える。眼球は無いが。
「そうだな、何か言う前に見てもらった方が早いかもしれないな」
パソコンへ向かうと煎餅とティーバッグ緑茶、蜜柑を少しだけ用意する。無限箱じゃないので、結構高めだ。煎餅と蜜柑をコタツの上に置いて先に食べていいと告げる。俺はお茶を注ぐ為にキッチンへとお湯を沸かしに行く。
(ポットとかあると便利だよなぁ……)
何気にポットは今の所なかったりもする。これだけ家電製品とか普通にあるのに何故ないのかは解からない。今度問い合わせて作ってもらえるか聞いてみようと思う。
ティーバッグ型の上にマグカップなので情緒も何も無いが、飲む分には問題ない。3人分のお茶を持ってコタツへ向かうと……既に煎餅も蜜柑も無くなっていた。
「あ、美味しかったわ。ありがとう」
ネクも頷く。こいつらには遠慮って物がないらしい。仕方なくお茶をコタツに置く。ネクは嬉しそうにそれをゆっくり味わって飲む。タリスは微妙そうな顔をする。どうやらタリスには合わなかったようだ。
そうしてのんびりした時間は過ぎていく。
数日後のある日、俺たちはコタツに入ってボーっとしているとコクが走ってくる。
「完成したよー」
そう言いながらコクがこっちに来る。どうやら装備品が完成したらしい。
「おお、そうか。それなら明日は水龍討伐だな」
やっとリベンジが果たせるらしい。やる気を出して仲間に明日ボス討伐をやる事を告げる。
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雑談スレpart102
141 名前:名無しさん
もうクリアした人が増えてきたな
142 名前:名無しさん
そうなのか?
どうやって確認するんだ
143 名前:名無しさん
お問い合わせに入ると攻略進度の集計が出ているぞ
毎日更新されているらしい
144 名前:名無しさん
ほー後で見てみる
サンクス
145 名前:名無しさん
20人くらいだっけか
といっても俺らは一体何人いるか解からんけどな
146 名前:名無しさん
詳細人数は出ていないんだよな
前にニュースを見た感じだと相当な人数が消えたとかで凄い騒ぎだったそうだ
147 名前:名無しさん
あのニュースな・・・
俺の家族がインタビューしてて泣きそうになったんだが
148 名前:名無しさん
そwれwはwきwつwいw
連絡の1つでも入れられればいいんだがなぁ・・・
149 名前:名無しさん
帰れなくても元気でやってます、くらいはいいたいよな
嫁も一杯居ますってな
150 名前:名無しさん
色んな意味で安心するな
親父が羨ましがるかもしれんが
151 名前:名無しさん
お前の両親が離婚の危機になるな
152 名前:名無しさん
扶養者が居る奴とかは選考から除外されたらしいし
そこまで深刻な奴はいないかもな
片思いしていた奴とかは知らんけど
153 名前:名無しさん
おい、連絡の1つでも出来ないか聞いてみたら返事返ってきたぞ
1回だけ家族に手紙を出せる機能を設けてくれたらしい
154 名前:名無しさん
マジで?
1回だけなのは残念だけどないよりは遥かにマシだな
ちょっと手紙を書いてくる
写真とか送れたらいいんだがなー
155 名前:名無しさん
写真は無理だな
カメラがないから諦めるしかない
俺も書いてくる
156 名前:名無しさん
俺みたいに家族が既に他界している奴には関係無さそうだな
お前ら家族は大切にしろよ
調合はすり潰す具合や水を入れる量など素材は少ないですが、結構経験が物を言う技術です。
スズキは慣れてしまっているので疑問にすら思いませんが、素人が簡単に出来るものではありません。
複数の薬草を混ぜる物もありますが、今は必要ないので手を付けていないようです。
この作品で一番多く出る固有名詞はコタツ。




