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迷宮と掲示板  作者: Bさん
6章 水中の迷宮
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54話

 目が覚める。ぼやけた視界を見る限り俺は泣いていたのだろうか。周囲を見渡すと使い魔たちが全員俺を囲んで心配そうに見ていた。

 目を閉じ袖で涙を拭く。その光景をみたティアが頬に付いた涙の痕を舐めて綺麗にする。俺はそんなティアの頭を撫で大丈夫だ、と告げ離す。


「すまない、全滅してしまった」


 仲間に謝罪する。誰かのせいではないのかもしれない。だが、リーダーとして言わなければならない。


「いえ、主様。アレは誰にも予想が付きません」


 パステルが言う。掲示板の情報にもボスの乱入なんて話は1つもなかった。もしかしたら規制された情報なのかもしれない。


(そう考えると随分と意地の悪い管理者だな……)


 まるで全滅をさせたがっていた様にも思える。あれを対策なしで勝てるとは思えない。だが、カッターさえ無ければ俺たちでも戦えそうだった。


「とりあえず、休もう。皆ボス戦で疲れているだろう」


 そう皆に告げ、目を閉じる。そうすると他のメンバーもベッドに横になる音が聞こえる。どうやら休んでくれたようだ。

 目は閉じたが考えを止めて寝るつもりは無い。


(あのカッターは所詮水だ。付与魔法で防具に水属性をつければどうにかならないか?)


 確かに付与魔法を使えば防げるかもしれない。だが問題は防具のない部分である。これが複雑に渦巻いているカッターでなければ十分だっただろう。だが、あのカッターは隙間に入り込む様に迫ってくる。

 そうなってしまうと付与魔法だけでは足りないだろう。


(付与魔法では足りない……精霊魔具か!)


 新たに増えた生産技術を考える。実際用途は全く不明で現在コクがエンと共に解明している。まるで、この技術を使えるようになったからあの水龍が現れたかのようなタイミングだ。


(その通りだったら管理者最悪だな……)


 そう考えている内に深夜になっていたようだ。皆ベッドで寝ている。俺は1人起き上がるとパソコンのある大部屋へと移動する。そして転移の石を使用すると1人ボス部屋の前まで移動する。そして生体感知を使用し、あの水龍がボス部屋に残っている事を確認する。


「次は必ず倒してやる。待ってろよ」


 少年漫画の様に宣告と決意を表す。後からこの光景を見たら恥ずかしくて悶絶するかもしれないが、今は何となくやってみたかった。そのまま拠点へと帰還し、ベッドへ戻り眠る。


----------------------------------------------------


 翌朝、皆が準備をしようとしていたので、今日は探索は休みだと告げる。対策を考えねばならない。


「コク、精霊魔具の技術って今どんな感じだ?」


 コクに聞いてみる。手をパタパタと左右に振る。


「うーん、難しいね。だけど凄い技術だよ。早く使いこなせるようになりたいかな」


 コクが嬉しそうな顔で答える。彼女にとって新しい技術というのはそれだけで喜ばしい事なのだろう。


「それじゃ、今解かっている内容で出来るか教えて欲しい。高い圧力で圧縮された水の刃を精霊魔具で防げるか?」


 コクなら高圧くらい解かってくれそうだ。


「うん、出来るよ。だけど、付与魔法ではだめなのかな?あれでも部分部分は防げると思う」


 そう返してくる。出来るならそれをした方がいいだろう。


「付与魔法では防具のある部分にしか効果がない。魔道具の様に全体に効果がかかる装備が欲しい」


 以前魔道具にこれ以上付与することは出来ないと言っていた。ならば装備につけるしかない。


「なるほどね。圧力をどうにかするんじゃなくて水の刃を無効化するんだ。それで全体をコーティングするとなると……」


 コクがブツブツと小声で何か言い出す。頭のいい奴は説明が少なくて済んで楽だ。


「コクのサポートをクウとエンで頼む。必要ならタリスとパステルも手を貸してやってくれ」


 名前が出たメンバーは返事をして了承する。


「俺とネクは盾をもっと上手く使えるように訓練しよう。ティア、手伝ってくれ」


 ネクとティアに言うと2人は頷く。


「さて……」


 ミーティングを締めようとしたら袖が引かれる。そちらを見るとリムが自分を指差して我は?と聞いてくる。すっかり忘れていた。


「リムは……」


 コクのサポート→暗黒魔法は必要ない、古代はタリスが居るから十分。

 訓練→魔法職にやらせる事は無い。


(どうすっか……)


 リムは恐らく先の世界に進んだらずっと着いてきてもらう事になるだろう。転移魔法を覚えさせたし、見た目も人間と変わりない。


(先の為にサポートできるスキルを覚えさせて練習させるか?)


 タリスは見る者が見れば精霊と気が付かれるだろうし、先の世界の獣人やエルフ、ドワーフ、天使がどういう立場なのかも解からない。ネクとエンは当然つれて歩けないので必然的にリムしかいなくなる。


(そうなると俺以外にも感知スキルと単独で戦う為に近距離戦闘スキルがあった方が良いかも知れない)


「リム、お前には戦闘スキルとサポートスキルを覚えてもらう。出来るな?」


 そう言うと笑顔でうむ、と答える。やる気があるようで何よりだ。


「では、解散しよう。精霊魔具の方頼むぞ」


 コクに言うと任せて、と返ってくる。正直生産スキルに関しては調合以外はさっぱりなので任せるしかない。

 

「さて、ネクとティアは先に訓練所に行って鍛錬を始めていてくれ。リムはこっちへ」


 そう促して分かれる。俺はリムと共にパソコンへ向かう。


(まず必要なのは生体と魔力感知、後軽業スキルも欲しいな)


 それらをリムに覚えさせる。これで8種類。武器は何が良いのだろうか。


「リム、武器を使うとしたら何がいい?」


 リムに問い掛ける。どうせなら好きな武器を使わせたい。すると


「我は剣がいい!!」


 即答だった。剣は定番だし、持ち運びにも適している。アイテムボックスの存在が不明な以上持ち歩ける装備がいいだろう。


「わかった剣だな」


 剣術スキルを覚えさせる。これで9種類となった。そして俺はリムを連れ立って訓練場へと向かう。

 訓練場では先にティアとネクが戦っていた。惚れ惚れするほどのいい戦いだ。ティアはその素早さと両手に持った片手剣を流れるように振るう。ネクは盾で弾いたりかわしながらティアへ攻撃をするのも忘れない。

 ある意味接近戦闘の理想形がここにあった。


(俺もあれくらい出来るようになりたいなー)


 ある程度は戦えるようにはなったが、まだまだ精進が足りない。何せ俺よりも強い使い魔が一杯いるのだ。訓練相手には事欠かない。そう思いながら練習に参加していった。


-----------------------------------------------------


 その日の夜、進捗がないかコクに聞いてみる。


「いや、全然だね。魔道具と別々に使えるというのはわかったんだけど、装備にどうやって組み込めばいいのかがねー」


 楽しそうな顔で答える。どうやら苦痛にはなっていないようで良かった。1日でどうにかなるとは思っていない。


「そうか、決して無理はせずに頼むぞ」


 それだけ伝える。そして皆で訓練や開発をしながら数日が過ぎていった……



----------------------------------------------------


「出来たー」


 コクのその一言に振り返る。俺は今は強化宝石を作っていた所だ。


「出来たのか?」


 何が出来たのだろうか。目的のものなのか、その経過で必要な品物なのか。広げた調合セットを仕舞う。


「うん、試作型属性防御鎧。素材は一応オリハルコンで作ったけど強度がかなり悪い感じかな」


 コクが答える。試作型でもそこまで出来たのは凄いと思う。


「それじゃ試さないとな。鎧は俺が着よう」


 そういって装備を着用していく。


「訓練所で魔法を撃って欲しいからリムとタリス来てくれ。あと怪我をしたときの為にクウも」


 リムとタリス、クウとコクと俺で訓練所へ向かう。

 俺は訓練場の中心に棒立ちになる。特に構えたり踏ん張ったりはしない予定だ。衝撃がどれくらい来るかのテストもある。


 リムは魔法保護スキルをオフにして下位の古代魔法を詠唱する。基礎の一番弱い魔法だ。まずその魔法は俺の胴の鎧がある部分に当たるとすぐに消滅する。衝撃も魔法も無効化したようだ。


「次は頭を狙ってー」


 リムが驚いた表情をする。そりゃ主の頭を魔法で撃てなどと言われていい気分はしないだろう。

 

「リムやってくれ」


 俺が許可を出す。これで幾分か気分が軽くなるはずだ。リムはしぶしぶ同じ魔法を俺の頭目掛けて撃ってくる。着弾する寸前まで凄く嫌そうな顔をしていた。

 実際には俺には当たらず目の前の膜のようなモノに当たり魔法は消滅した。


「この膜みたいなのが精霊魔具の防御なのか?」


 見たままの事をコクに尋ねる。


「うん、一応全属性の魔法を防ぐ膜になるかな。後は頭でも胴でも好きな所を撃ってもらっていいよ。中位の魔法くらいは耐えてくれると思う」

 

 思うでは正直怖いが、これも実験だ。着ないと効果がないそうなのでやるしかない。

 リムは下位魔法で中位の威力まで魔力を練りこむ。中位魔法を使うと無駄に範囲が広い為魔力の節約をしているらしい。それが俺の胴目掛けて飛んでくる。目の前の膜に当たると俺は吹き飛ばされた。


 魔法のダメージは無いが、どうやら衝撃は殺しきれなかったようだ。リムが泣きそうな顔でこっちに走ってくる。


「主、無事か?」


 泣きそうな、ではなく既に泣いていた。頭を撫でながら大丈夫だ、と伝えるが中々泣き止まない。


(リムにやらせたのは失敗だったかな。とは言え古代魔法を一番上手く使えるのがリムなんだよなー)


 コクも困った顔でこちらを見ている。これじゃ実験になりそうにない。


「スズキさん、その防具を次は僕が着るからリムをお願い」


 仕方ないので防具を外しコクに渡す。タリスお願いね、と言って実験を始める。俺はリムを抱きかかえながらクウの隣に座ってそれの光景を見る。


 どうやら下位の魔法なら全属性一切食らわないらしい。だが中位の威力になると全属性の魔法ダメージは無いものの衝撃はそのまま残るようだ。

 実験を終え、防具を外したコクとタリスが近寄ってくる。


「実験はこれで終わりかな。問題も見えてきたから次の段階に進んでみるよ」


 コクが実験の終了を宣言する。無理や無茶はしないようにな、と伝え解散する。リムはくっついて離れないようなのでそのままコタツに行って一緒に昼寝をした。



 あれから数日、どうやら今度は上位魔法まで防げる鎧が完成したらしい。問題はまだまだあるようだが、実験は概ね成功。実戦でも使えるレベルまで落ち着いた。


 欠点は、それが使い捨てになってしまう事だ。戦闘中くらいは持つが、起動して1日程度経つと鎧が崩壊するとの事。オリハルコン製の鎧なだけにそう何個も作れないそうだ。

 今回のボス戦のみ使うという事を約束し、使い捨ての鎧を全員分作ってもらう。


 さぁ、リベンジの開始だ。

魔道具は別のを同時に使うと爆発します。火を使わなくても爆発します。もう木っ端微塵です。

あれ?自爆アイテムとして使えるんじゃ……

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