幕間3 パステルとクウの戦闘訓練
ちょっと違う書き方に挑戦
*クウ視点*
コクさんと一緒に水中用の魔道具の量産をしています。人数分以上に揃っているので、予備の作成になります。
作成は順調で規定数にもうすぐ届きそうです。
「クウ、後はこっちでやるからいいよ。確か今日から戦闘訓練があるんだよね?」
コクさんが聞いてきます。そうでした、今日からネクさんとパステルさんに訓練をして貰う約束をしています。
「では、この辺りで訓練に行きますね」
私は魔道具の製作ツールを仕舞い、弓を持って訓練所へと向かいました。
そこにはネクさんとパステルさんが先に待っています。
「遅れてしまい、すみませんでした」
私が謝ります。どんな理由があったとしても約束に遅れたら謝るのは基本です。
「いえ、お気になさらずに」
パステルさんが優しい声で私に言ってきます。ネクさんはスケルトンなので余り解かりません。
「では、今日は弓ではなく魔法にしましょう。次の階層では弓が使えませんので、神聖魔法を優先します」
パステルさんが仕切り、有用な魔法を教えてくれます。魔法の修練は基本的に反復使用になります。私のように攻撃魔法を使わないタイプは派手な訓練が必要ない為狭い空間でも練習が出来ます。
ですが、魔力切れには注意しなければならず、切れたら死んでしまうそうです。怖いですね。
ネクさんも同様に神聖魔法を使っています。アンデッドなのに神聖魔法を使えるのは本当に凄いと思います。本来なら詠唱の時点で体を焼かれてしまうそうです。どういう構造をしているのでしょうか?
そんな事を考えているとネクさんがこちらを見てきます。もしかしたら、考えが読まれたのでしょうか。
しばらく魔法を使い続け、程よく魔力が切れてきました。次は基礎体力作りだそうです。普通基礎体力作りと言ったら走ったり体操で筋肉を作る事を指しますが、ここでの基礎とは戦闘の基礎になります。
なので、近接武器を使って戦うそうです。怖いですね。
ネクさんは剣と盾を、私は片手剣を両手で持っています。剣なんて初めて持ちます。構えなんて解かりません。
「剣は受け流したりする時に使ってください。近接攻撃になれる為だと思って気を楽にしてやりましょう」
パステルさんがそう言うとネクさんが剣と盾を構えます。私は慣れない剣を持ち構えますが、剣先が震えています。
「では、はじめ!」
パステルさんが合図をし開始します。ネクさんが走って近寄ってきます。スケルトンが高速で接近してくるのはとても怖い光景だと思います。
ネクさんが剣を軽く振ってきます。私は後ろに下がって回避します。ネクさんがそれに感心したような感情をこちらに向けてきます。そして次は少しの殺気を込めて斬りかかって来ます。
私はその攻撃を受ける事も流す事も出来ずに目の前で寸止めされました。どうやら目を閉じてしまったみたいです。
「クウさん、今の流れでどこが悪いか解かりますか?」
パステルさんが問い掛けてきます。悪い点はすぐに解かりました。
「はい……2点思いつきました。1つは気迫で負けてしまった事。もう1つは途中で諦めてしまった事です」
最初殺気を放たれただけで怯んでしまいました。次は避けられないと思って目を瞑って棒立ちになってしまった事です。
「そうですね。その2点は実戦で磨くのが一番良いのですが、貴方は気が弱い。なので、訓練を先にやらせて貰っています。では、慣れる為に何度か打ち合いをしてください。」
パステルさんがそう言って戦闘を促します。
「は、はい。宜しくお願いします」
どうにか返事をします。そして訓練が始まりました。
休憩を挟みながら訓練を続けて夕方になりました。
「うーん、基礎体力を付けると言う意味でなら達成は出来ていますが、気が弱いのは治りませんね」
パステルさんが悩んでいるようで申し訳なくなってしまいます。
「このまま続けても後方支援のみ……しかし後衛に攻撃をしてくる敵も居ますし……乱戦時に……」
何やらパステルさんが小さな声でぶつぶつ言っています。
「恐怖を克服しないと攻撃が来た時に回避が出来ずに倒されてしまうという事です。どうにかして克服出来る方法はないものでしょうかね」
結局答えが出ないまま夕飯の時間になりました。その際に定期報告が上がります。
「まず、水中用の魔道具は揃った。あとは水中戦を想定した戦闘の訓練が必要になる。だが、水中で戦う施設なんてないのでこれはぶっつけ本番でやって貰うしかない」
迷宮攻略の進捗はいつでも行けるという状態になりました。私はまだ心の準備が整いません。
「主様。戦闘時の恐怖を克服するのに良い手段はないでしょうか?」
パステルさんがマスターに聞いています。思いつく手は全部駄目だったのでしょうか。申し訳なく思います。
「うーん、俺の場合は実戦に放り込まれたからなーそうだな、攻撃に慣れるというのはどうだ?気迫で負けたらどうしようもないから罵倒しながら攻撃するとか」
パステルさんがハッとした顔をします。何か思いついたのでしょうか。
「ありがとうございます。さすがは我が主です」
何やら凄く感服しています。後にニヤケながら涎が出ています。いつも真面目なパステルさんにしては珍しいですね。
「あ、ああ。程々にな」
パステルさんが何をしようとしているのかマスターは解かったのでしょうか。さすがは長い付き合いですね。
翌日、私とパステルさんは訓練場に集合しました。今日はネクさんはいないのでしょうか?
「今日は特殊な訓練をして貰います」
そう言って訓練場の扉を閉めます。一体何が始まるのでしょうか。
「まずはこの鞭を持ってください」
パステルさんから鞭?を受け取ります。乗馬に使うような短い物です。
「そして、○○と言いながら私を叩いてください」
え?どういう事でしょうか?何故パステルさんを叩くのか解かりません。
「それが恐怖を克服する為の手段です。さぁ、遠慮なく!」
<見せられないよ!>
<終了>
とても辛い訓練が終了しました。やっている内に何だか高揚してきましたが、気のせいでしょう。
パステルさんは光悦とした表情で訓練場に寝ています。やりすぎてしまったのでしょうか。
「パステルさん、大丈夫ですか?」
心配になって声をかけます。
「らいひょうぶれふー」
呂律が回っていません。やはりやり過ぎたのかもしれません。オロオロしながら待っているとマスターが訓練場に現れました。
「あーやっぱりこうなってたか……」
諦めたような、呆れたような顔でそう呟きます。
「クウ、今日の訓練は終了だ。休んでくれ」
そうマスターが言います。そしてマスターは伸びているパステルさんを抱きかかえて連れて行きます。
私は鞭を訓練場に置き、鍛冶場にいるコクさんを手伝う為に向かうことにしました。
○○:伏字です。ピーとでも読んでください。
パステルさんの変態分が足りないような気がして