表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮と掲示板  作者: Bさん
3章 坑道と鉱石の迷宮
32/125

26話

 目が覚めると今日も全員がベッドに集合していた。


(これは全員分のベッドを買わないとだめなのかね)


 さすがに4人で寝るには狭い。パステルだけは自分のベッドで寝ていた。

 

(さすが一番の良識人。変態だけど)


 昼と夜は顔を分けて使っている様だ。公私混同をしない素晴らしい性格である。

 俺がベッドの上でもぞもぞ動いているとティアが目を覚ましたようだ。

 さすがに朝から盛るわけにはいかない。挨拶をするとそのままベッドから降り一緒に朝食の準備をしにキッチンルーム(仮)へ向かった。


 朝食といつもの探索の準備を終える。

 そして全員にランタンを配布し火を付ける。消えたら俺とタリスとパステルしか付けられないから注意が必要だ。

 それを腰に付け直通ゲートで2階層のボスの部屋まで移動する。楔を回収し、階段を降りて3階層へと向かった。


「暗いですね……」


 辺りを見回しながらパステルが言う。確かに暗いが、5人でカンテラを使っているので思ったより明るい。遠距離攻撃してくる奴が居たら恰好の的である。

 調べた限りゴブリンと斧を持つドワーフ、ゴースト、ゴーレムだからいないようだが。

 

「1階の敵はゴブリンらしい。数が多いからそれだけには気をつけてくれ。敵の位置は生体探知でいけるようだ」


 マップで敵の位置を確認し大量のゴブリンの点を見ながら言う。


「ゴブリンですか……」


 パステルが何か妄想してニヤニヤしている。やっぱり変態だった。


「……この迷宮のモンスターはそんな事しないぞ。そんな知識どこから手に入れるんだか……」

 

 タリスがパステルの頬を引っ張り正気に戻す。


「パステルはまだレベルも低いし無理はするなよ?」


「はい、解かりました」


 素直に返してくる。ゴブリンの群れに突っ込んで行きそうだったが無用な心配のようだ。

 

 そして探索を開始する。しばらくマップを広げる為にあっちこっち歩き回り、ゴブリンの近くまで来た。


「俺とネクとティアで一気に殲滅する。タリスとパステルは周囲の警戒と援護を頼む。落盤の危険を考えて強い魔法は使うなよ?」


 指示を出し、皆が返事をするのを確認するとゴブリンに向かって3人で切り込む。坑道は狭いと言っても3人で戦う程度の空間はある。前衛6人はさすがに無理だが。

 1体1回斬るだけで楽に倒れていく。ゴブリンさん手ごたえが無さ過ぎるでしょう?

 簡単に全滅させると宝箱を調べる。今までの罠は石が飛んでくるのと毒の矢くらいだったが、何か別の気配がする。


(何だろう?初めての感じだ)


 嫌な予感がしつつも罠の解除を試みる。ゆっくり確実に1つ1つ罠を外していたが、それは起きた。


「やばい、失敗した」


 箱が勝手に開いていき、皆が武器を構え警戒する。

 すると突然箱がモンスターへ変わった。見た目は宝箱型のモンスターで箱の開閉口には歯のようなものが付いている。RPGとかでの定番のアレである。

 俺とネクが盾を前面に構え、箱の正面に出る。ティアは箱の後ろに回るようだ。箱は俺に体当たりを仕掛けてくる。盾に当たったが、その勢いは凄まじく後衛の2人が居る所まで飛ばされる、


(なんだ!?この攻撃力)


 タリスは下位魔法を撃っている。パステルは俺を抱えながら起こす。俺自身は飛ばされただけなので防いだ左腕と背中が少し痛むくらいだ。


(盾に当たらなかったら食いちぎられそうだ)


 ネクが1人で盾役に専念している。俺の様子を見た後だったからか、正面から盾で受けずに上手く軌道を逸らしている。さすがネク先生である。

 俺も前線へ戻り、ネクを見習い攻撃は全て流して回避する。ネクがチラっとこちらを心配そうな目で見るがすぐに敵に視線を向ける。

 ティアが後ろから攻撃をし続けようやく倒す。モンスターはただの開いた箱へと戻った。


「ふぅ……新しい罠があるみたいだな」

 

 ネクが頷く。


「ご主人様、大丈夫?」


 ティアが聞いてくる。


「ああ、ちょっとぶつけただけだ。問題ない」


 その内、定番の石の中に飛ばされたりする罠もあるのだろうか。罠の解除が俺の役目だから失敗した時が怖い。他の人に任せた時よりも自分の失敗の方が申し訳なく感じてしまう。

 

(だからと言ってこの役目を放棄したら本当に役立たずになるから辞めないけどな)


 戦闘では他の使い魔のように役立てない。俺は自分の出来る事を無理せずやろうと誓う。


「さて、探索を続けよう」


 そうみんなに告げ、探索を再開する。


----------------------------------------------------


 相変わらずゴブリンは弱い。数が多いだけで、殆どが一刀両断である。


(経験値やスキル、金稼ぎマップなのかね)


 鑑定やステータス確認が出来ないから何とも言えないが、このペースで今までくらいに稼げて居たら凄い事になるだろう。

 初めて鉄の剣を手に入れた時と同様である。

 アレから罠の解除を失敗していない。熟練度でも上がったのだろうか何となくコツを掴んだようだ。

 

 ダンジョン探索は9割を終えている。


(そろそろ階段を探そうか)


 まだ未踏破の場所を進み階段を見つける。それを躊躇なく降り、2階へと進む。

 

「この階からドワーフが出る。斧による攻撃に気をつけてくれ」


 ゴブリンが簡単に倒せたからだろうか、攻略は時間的にも大してかかっていない気がする。

 そのまま2階の捜索を開始する。ゴブリンを倒しながらしばらく探索をしていると、生体感知にドワーフが現れた。

 

「ドワーフが2体いる。いくぞ」

 

 相手は男のドワーフが2体だ。大体150cm程度の髭を生やし片手に斧をもったおっさんだった。

 前衛3人はドワーフの所まで走っていく。相手は気が付かなかった様で奇襲を与える。どうやら瀕死なようだが、男を捕獲する趣味は無い。そのままトドメを刺す。

 箱から戦利品を回収し、探索を続行する。途中ドワーフとゴブリンとの戦闘を交えながら進んでいく。ドワーフは攻撃が重いだけで特に脅威にはならなかった。先程の箱型モンスターの応用で十分どうにかなる。

 

 探索をしているとドワーフが3体居た。先手必勝、奇襲をかける。こちらが到着する前に気が付いたようで、こちらの攻撃を武器で受け流される。

 ネクとティアも各1体受け持っているようだ。少なくとも俺たちは各1体を普通に倒せるほどの技量は余裕である。盾で受け流しながら確実にダメージを与えていく。

 するとそれは突然起こった。

 いつもの様に相手の攻撃を受け流そうとすると盾に当たる寸前に小手を付けた腕が凍り付く。


「え?」

 

 思わず声が出る。そのまま盾にドワーフの斧が当たる。すると凍っていた部分が耐えられなかったのか、砕け散る。


「マスター!!」


 タリスが叫び、何かに向かって火の魔法を打ち込む。火が当たるとその何かはうなり声を上げて消滅する。


(何だ?今何が居た?)


 ネクやティアのほうを見るとどうやら2人も片腕が凍り付いていたようだ。尤も2人は俺のように受ける寸前で食らった訳ではなく、回避しその手を使わないようにドワーフを倒したようだ。

 俺も2人に倣い、回避をしながらドワーフを倒す。最初から回避で倒せば良いじゃないか、と思うかもしれないが、回避のみで戦うのは体力を多く消耗する。なので受け流しと両方やった方が効率が良い。

 

 良く見ると2人の周りには半透明の何かが居た。ティアは剣をそれに叩きつけるが、素通りしてしまう。その表情は驚愕に包まれる。


(何だ……アレは……ゴーストか!?)


 判別を付ける。それと同時にタリスとパステルの魔法が完成したのか2体のゴーストを焼いて消滅させる。

 

「ふぅ……」


 戦闘が終わった事を確認すると全員がこちらに寄ってくる。


「どうやらあれはゴーストの様だ。2階からも現れるんだな……」


 情報を過信してしまって居たようだ。良く考えてみるとアレは2階層の情報であり、3階層の情報ではない。階層によって同じ迷宮も仕様が変わるのかもしれない。


「マスター、大丈夫?」


 タリスが心配そうな顔で声をかけてくる。他の使い魔も同様の表情をしていた。戦闘が終わっても溶けないらしい。血が出ないのは助かるが……。


「凍っているからな、痛みは大してない。ネクとティアはどうだ?」


「こっちも大丈夫。感覚はないけど」


 ティアがそう言うと、ネクも頷く。だが、今日はこれ以上の探索は無理だろう。俺も片手ないし。

 凍った断面を見ると骨の芯まで凍っているようだ。これがゴーストの特殊攻撃なのだろうか。武器を収め、盾と左手を右手で回収するとアイテムボックスに放り込む。

 箱の罠を何とか片手で開けると階段まで戻り、楔を設置して拠点へと帰還した。


---------------------------------------------------


 拠点に戻るとパステルはすぐに木綿の無限箱まで行き布を取ってくる。

 凍っていない少し上部にそれをきつく巻く。止血だろうか。

 

「念の為、回復薬もお飲み下さい」


 パステルはそういうとアイテムボックスから回復薬の瓶を取り出す。このままベッドで寝れば治療されるかもしれないが、皆を安心させる為にもそれを飲む。


「それじゃ、俺とネクとティアはベッドへ行こう。タリスとパステルは時間になったら食事の準備を頼む」


 2人とも料理は出来ないので期待は出来ないが仕方ない。


(俺たちは前衛だし怪我をしやすい。もう1人くらい料理が出来る人が居ると怪我をした時は助かるな……)


 そう考えながらベッドで寝転がる。傷がじわじわ何か鳴っている。ベッド怖いです。

 そうしているとティアが震えながら右手にしがみついてくる。


(ん?どうしたのだろうか)


 左手がアレなので撫でる事はできないが、聞いてみる。


「ティア?どうしたんだ?」


 そう聞くと涙目の顔をあげこちら見上げてくる。


「剣が……効かなかった……お化け怖い」


 どうやら幽霊が苦手らしい。暗い場所で幽霊が出たら苦手な人は怖いかもしれない。


(あれ?ネクは大丈夫なのに幽霊は駄目なのか?)


 ネクはティアを心配そうに見ている。


「ん?良く解からないのだが、ネクは大丈夫だけどゴーストは駄目なのか?」


「あれは透明。ネクはちゃんと見える」


 どうやら基準はそこらしい。攻撃が効かなくて良く見えないから怖い、との事。


(なるほど、それなら解かりやすい。ゴーストを使い魔とかにしたら荒れそうだな。怯えるティアはこれはこれで可愛いが)


 頭は撫でられないので、抱きしめておく。左手がなくてもそれくらいは出来る。

 そうしてのんびりした時間を過ごしていると夕飯が出来た様だ。料理は全部焼いただけだった。


(火が通っていただけマシと考えるか……醤油をかけて食べればどうにかなるだろ) 


技術熟練度は失敗の方が多くを学ぶようです。心構えの差かもしれませんが、成功だけしていても駄目って事ですね。


技術系のスキルは上手く動かせるようになると言うよりは、攻撃時に力がこもるようになったり、攻撃を武器や盾に受けた時の衝撃を緩和するなどの効果があります。

あくまで戦い方はその人のセンスや学習によるものになります。

実際剣を振らなくても教えてもらったり技能書を読む事で得るものがあるってことですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
照明魔法無し?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ