22話
それから1週間エルフ対策の為にスキルとレベルを上げていた。レベルも俺とネクとタリスは25前後、ティアは20まで上がっていた。
稼いだDPはテレビに向けて溜めている。娯楽が全くないというのは中々きついものだし、どんな映像を発信するのかどうしても気になるのだ。
10万ポイントは果てしなく遠かった。5万までどうにか溜まったが。
食事を終え、探索の準備を整える。
「今日から4階の攻略に入る。生体感知で位置を確認しつつ各個撃破を狙うぞ」
3人は頷くと各々の気合の入ったポーズをする。気合は十分のようだ。コタツの中だから格好はつかないが。コタツから出て立ち上がり、皆を集め転移の石を使い4階へ移動する。
山小屋を出て周囲を警戒しながら、生体感知を使い敵の位置を調べる。
(前方右側にエルフの集団4名か。まずはこれだ)
「正面右にエルフが4人いる。これを倒すぞ。俺とネクとティアは前列を歩く、タリスは周囲の警戒を続けてくれ」
仲間に告げる。3人は言葉を出さずに頷き、隊列を作る。
しばらく進んでいくとエルフが4人居た。目視で確認すると、剣を持った男2体と弓を持った女2体居た。
「俺とネクは男2体をやる。ティアは一気に近付いて弓を頼む」
小声で伝えると、頷くのを確認する。そして前衛組みは同時に走りだす。
一気に男の元まで辿り着くと、その勢いで斬り付ける。完全に奇襲になったようで、かわされる事なく大きく斬る事が出来たようだ。
斬られた男が声をあげるが、もう手遅れである。ネクももう1人の頭をハンマーで殴っていた。弓を持っていた女2人は驚きながら、近寄ってきたティアに向かって矢を撃つがかわされる。
ティアは片方のエルフの女の首を右手の剣で突き刺し、もう片方の女の胸の辺りを左の剣で刺す。瞬時に引き抜くとエルフの女2名は地面に倒れる。ティアが倒れた女エルフにトドメを刺す。
一方俺とネクは大きなダメージを受けたエルフの男たちの反撃を一切受ける前に倒していた。
(奇襲はやっぱり怖いな。人型相手だとあっさり終わる)
逆にこっちも同様の奇襲を受けたらかなり危険である。この迷宮はゲームではなく現実と同じである。HPがあってそれが0になるまで生きている、という訳ではない。
急所を斬られれば大怪我をするし、首を刎ねられれば死ぬ。当然のように即死が存在するのだ。それを少しでも回避する為に急所を隠す鎧や回避スキル、回復薬を駆使して戦う。
その為周囲への警戒は最優先事項であり、生きる為の防具装備は必ず必要になる。対人戦だとLV1がLV99を倒せるシステムなのである。
(軽い防具しか装備出来ない種族はこの先辛いかもしれない)
タリスの様に重い鎧が装備できない種族は奇襲でなかったとしても常に即死の危険が付きまとう。仲間の死を極力見たくない俺としてはもっと戦闘向けのメンバーを仲間に入れ交代させたいと思っている。
何も戦闘だけが探索ではないのだ。拠点でサポートするメンバーもこの先必須になっていくだろう。
そんな事を考えながら出てきた宝箱を開け戦利品をアイテムボックスへ放り込む。
同様に奇襲を繰り返しながらエルフを駆逐していく。大した怪我もなく順調に進んでいく。生体探知で周辺を調べるとエルフの女が1人だけ居る場所があった。
(罠か?それとも何か強さに自信でもあるんだろうか)
ネクやティアの件もあるし、もしかしたら凄く強いのかもしれない。それなら使い魔にするもの手だ。そう判断するとこの1人だけで居るエルフの元へ進んだ。
エルフ女の近くまで来る。こちらに気が付いた様子もないし、周囲に他のエルフもモンスターも居ない。
「あのエルフを捕獲する。殺さない程度に戦うぞ」
仲間にそう告げる。ネクとタリスがまたか、と言わんばかりの表情で頷く。だってエルフは欲しいんだもの。
ティアはずっとエルフの方を睨みつけている。何か違和感でも感じるのだろうか。
「行くぞ」
短く命令し、3人でエルフ近くに飛び出す。エルフの女がこちらに気が付いたようだが、エルフは驚きすらしない。短く何かを言うと魔法陣が現れた。
(何だ!?)
魔法の詠唱だと判断し、エルフにそのまま走り斬りかかる。だが、当たり前の様に流れるような動作で回避される。最大のチャンスを逃してしまった様だ。
魔方陣が消え、そこには水のモンスターが現れていた。
「それは水の精霊よ!!」
タリスが声を叫ぶように言う。
(水の精霊?なんだそれは)
ネクとティアは水の精霊に阻まれこちらへ来れない様だ。ハンマーと剣で斬っているがダメージに繋がっているようには見えない。タリスは周囲への警戒を緩め中位魔法の詠唱を始める。
(タリスが焦って指示もせず中位の魔法の詠唱を始めるという事はそれだけ危険な相手って事か)
幸い水の精霊はネクとティアが抑えてので、俺はエルフと一騎打ちが出来そうだ。エルフの女は最初杖を持っていたがそれを投げ捨て腰に差していた剣に変えた。
「クックック……」
悪い人のような含み笑いが出る。完全にこちらが悪役の様である。テンションが上がりすぎておかしくなっているらしい。
「武器を捨てろ。そうすれば命だけは助けてやる」
折角なので言ってみる。個人として確定していない相手に言っても無意味だと知っているが、俺の中で人生の中で言ってみたかった台詞の1つである。
エルフはその台詞を完全に無視して剣で斬り付けて来る。動揺もしてくれないのはとても寂しいが、モンスターである以上どうしようもない。
相手の剣を盾で受け流し、剣で反撃する。相手の胸の辺りを切り裂く。
(あるぇ?)
思ったより簡単に相手に剣が届いてしまった。さっきの回避は一体なんだったのか。そのまま痛みで胸を押さえているエルフを盾で殴る。エルフは転倒しこちらを睨みつけている。
拍子抜けである。仲間はずっと水の精霊と戦っているのでさっさと終わらせる為に拘束アイテムを投げる。すると簡単に捕獲に成功する。
(あれか。精霊は強いが、本人は全く弱いとかそういうオチか)
捕獲に成功したのと同時に精霊は消えた。ネクはやったのか!?という感情を向けてくる。激戦でもあったんじゃないかと期待しているんだろうか。俺のせいでは無いが、物凄く申し訳ない気分になる。
「捕獲に成功した。もうすぐこの階も9割近く踏破しているし、感知をしても敵はもう少ないから先に階段を探そう」
そう仲間に伝え、周囲を警戒しながら山小屋を探す。その間に数体のエルフと交戦に入ったが、難なくこなし山小屋を発見した。
扉を開け内部へと入り階段を降りていく。階段を降りきったら迷宮らしい石造りの空間だった。目の前には小部屋と巨大な扉がある。どうやら1階層のボス部屋と一緒らしい。
確認すると楔を設置し、羽を使って拠点へと戻る。
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拠点へ戻ってきた。現在の時刻は18時になっていた。あの迷宮に昼夜はないのだろうか。
念の為、食事を先に食べておくように使い魔たちに指示を与え牢屋へ移動する。
いつも通り牢屋に設置してある筒に拘束アイテムを入れる。
すると両手足を縛られたエルフ女が現れた。
こちらがいつもの定型文を伝えようとすると
「私をこんな所に連れてきて何をする気!?酷い事をするんでしょう!!止めて!鬼!悪魔!」
(え?)
思わず目が点になる。いきなり何を言い出すのか。
「あ、あの……」
「そんな厭らしい目でこっちを見ないで!!ゴブリンやオークですら想像のつかないような厭らしい事をするんでしょう!!」
言わせて貰えない。矢継ぎ早にどんどん罵倒が飛び出す。だが、顔を良く見ると何かに期待したようなそんな表情をしている。
これはやっぱりアレなんだろうか。穢されて喜ぶあのタイプの変態なんだろうか。
黙って牢屋の扉を開ける。
「いやっ……こっちに来ないで……」
弱々しい声でエルフが言う。だが顔は期待し過ぎているのだろうか。とてもだらしない。
(くっ……!落ち着け!あんな安っぽい挑発に乗るな!)
どこかで聞いた台詞を心の中で呟く。更に1歩近付く。
「来ないで……」
「お、俺は……!くっ、くそぉぉぉ……!」
台詞やエルフの表情はさておき、美味しい状況である。
「ああ……」
エルフ女は諦めたように言う。何故か自分から足を開く。
「うおおおおおっ!」
それにしてもこの男ノリノリである。
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どれくらいの時間が経っただろうか。とても喉が渇いた。
ようやく賢者タイムになり、エルフの方を見る。とても口に出せないような惨状で気絶しているが、表情は光悦としている。だが、どう考えてもやりすぎた。精力増大のせいだと思いたい。
手足は拘束されているしそのままでいいか、と思い牢屋から出て鍵を閉める。
牢屋のある部屋から出た所には使い魔達が居た。何故かネクはニヤニヤしている。
「こっちまで声が聞こえたわよ……」
「ご主人様……」
タリスは呆れたように、ティアは期待を込めたような目でこちらを見ながら言う。ティアさんやめて下さい、死んでしまいます。
「……ああ、とても大変な戦いだった……」
そう言うとティアが
「……片付けしてくる」
と言ってタオルと水の入った壺を持って牢屋のある部屋に入っていく。
「夕飯、ちゃんと残してあるわよ」
タリスが言う。いつもの夕飯を見る限り何も残っていないと思っていたのだが、ちゃんと残しているらしい。
「そうか、ありがとう」
お礼を良い。食事を平らげ、風呂に入る。時計を見るともう午前3時だった。
ネクとタリスは風呂に入っている間に寝たらしい。終わるまでわざわざ起きていてくれたようだ。
俺がコタツで寛いでいると、ティアが牢屋から戻ってくる。
「ご主人様。エルフが話したい事があるって」
ティアが俺に伝える。
(もう目覚めたのか。タフだな)
ティアを伴い牢屋へ向かう。そこには手足は拘束されているが、身を清められ着衣を正したエルフが居た。
「主様、私を下僕にして下さい」
今度はちゃんとした言葉で話しかけてくる。あの時の罵倒は一体なんだったのか。
「え?ああ、そうだな」
元よりそのつもりだったので、すぐに許可をする。
「ではいくぞ。”テイム”」
スキルを使用する。するとエルフ女の情報が入ってくる。やはりレアな個体だったらしい。
スキルの使用が終了する。ティアに手伝って貰い、エルフ女の手足の拘束を外す。
「宜しく頼む。俺の名前はスズキだ」
そう名乗り、ティアとエルフ女を連れ立って牢屋を出て行く
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大部屋へと戻る。俺はティアとコタツに入る。エルフ女はコタツに驚いたようだが、俺とティアに習って座る。
「そういえば、名前を考えねばならないな」
そう呟く。エルフ、エ、絵、絵画、絵具、パステルブラシ、パステル
「よし、お前の名前はパステルだ」
また変な連想である。
「んで、パステル。体は大丈夫か?」
パステルに問い掛ける。さすがに無理したと自覚している。
「あ、はい。まだまだいけます」
パステルが答える。それ以上どこに進もうというのか。
「……そうか」
とりあえず、もう3時を過ぎている。さすがに眠い、寝よう。
「ティア、パステルを寝室に連れて行って俺のベッドに寝させてやれ。俺はここで寝る」
そう告げる
「ご主人様。それなら、私のベッドで一緒に寝よう」
鼻息が荒いですティアさん。俺はもう限界です。
「いや、もう眠い。動きたくもないんだ」
適当な事を言って諦めさせる。ティアは残念そうな顔でこちらを見るとそのままパステルを連れ寝室へと向かう。
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朝になる。時計を見ると8時くらいだった。ネクとタリスが起きていたが眠そうだ。
(スケルトンも眠いと思うのか)
「あー、今日は探索を休みにする。2人とももっと寝ていて良いぞ」
「あい」
寝惚けているのだろうか、タリスがそう言うと、ネクと共に寝室に戻った。
水分を補給し、そのまま俺もコタツで寝る。昨日の(正確には今日だが)アレが祟っているらしい。
そしてまた目が覚める。左右を見ると何故かティアとパステルが一緒に寝ていた。思わず2人を抱きしめる。
(俺はハーレムへの道を歩み始めてしまったんだろうか)
使い魔を女で固めている時点で今更である。遠くにタリスの呆れた表情が見えた。
エロい表現ってどこまでやっていいんでしょうね。
下手すると消されそうなので基準が難しそうです。




