13話
一気に日数が飛びます。反復作業ですので。
4日経過した。レベルは俺15、ネク15、タリス13まで上昇。
(先行してた人は4日前の時点でこのレベルに達していたんだよな……どれだけ強行軍をしているんだか)
未だ見ぬ先行者を思いある意味呆れる。
別に競争という訳ではないのだから急いでも仕方ないだろうに。
(先行して情報をくれるのは助かるけどな)
スタミナやマジックポーション、通常の回復薬も大量に集まり、ボス戦への準備が出来上がる。
準備はOK、最後に掲示板を見て新しい情報がないか確認しよう。
この4日でボスを倒したと言う人は結構居た。
仲間を増やせば楽になるか思いきや、多いと強さが跳ね上がるらしく数が居れば良いというわけではないようだ。
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【1階層】ボス対策【オーガ】
677 名前:名無しさん
たおせねぇぇぇぇぇぇ
そろそろトラウマになりそうです。
678 名前:名無しさん
構成を言え
そうじゃないとアドバイスのしようがない
679 名前:名無しさん
俺:剣LV13 骨:剣LV13、犬:槍LV13、玉:魔法LV10、妖:魔法LV10
680 名前:名無しさん
全種かよ
骨って動きが良くないからすぐ死なないか?
だとしたら外した方がボスが弱体化するから少しはマシになるぞ
あとLV15には上げた方がいい
681 名前:名無しさん
人数で強くなるって本当だったのか
確かに骨はあっさり倒されてた
動きは遅いが硬い鎧を着ければ雑魚戦で役に立つんだよな
682 名前:名無しさん
骨は噂の変異種以外は駄目らしいぞ
変異種の報告は2個見たが、かなり強いらしい
683 名前:名無しさん
マジで?探してみようかな
684 名前:名無しさん
探して見つかるようなもんでもないけどな
完全にリアルラック
685 名前:名無しさん
よし、ここに来る前日に宝くじが当たった
俺の運を試す時が来たようだな
686 名前:名無しさん
それって不運なんじゃね?
折角当たったのにろくに使えずに意味なくなるとか
687 名前:名無しさん
(´・ω・`) ショボーン
688 名前:名無しさん
(`・ω・´)シャキーン
689 名前:名無しさん
禁句だったようだ
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(さて、全く役に立たなかったぞ)
新しい情報はないようだし、このまま挑むとしよう。
「今回挑むボスは、攻撃力は高いが動きは遅い。ただ体力が多いから長期戦になる。
疲れたら力尽きる前に必ずスタミナポーションを使え。この為に集めた物だから使うのを惜しむな」
使い魔たちに説明する。ネクは強く頷き、タリスは、はい!と元気良く返事をする。
2人とも気合は十分らしい。
「よし、行くぞ!!」
転移の石を使い5階まで行く。重い扉を開くと部屋の中央にオーガが陣取っている。
ネクの方を見るとネクが黙って頷く。それを確認した後、俺とネクは中央のオーガに向かって走る。
タリスは後方で魔法の詠唱を開始する。詠唱中は無防備になる為オーガの棍棒でも届かない高さに居る。
俺とネクはオーガの左右に分かれ攻撃を食らわないように斬り(叩き)続ける。
どんどんオーガの体に傷が増えていくが、全く倒れる気配が無い。
(やっぱり長期戦か、やるしかねぇよな)
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どれくらいの時間が経っただろうか。時間の感覚はもう既に麻痺していて解からない。
スタミナポーションをがぶ飲みし、ずっと剣を振り続けている。
(薬中毒になりそうだな。しかし、いつまで戦い続ければ終わるのやら……おっと)
オーガが振るう棍棒をかわし、距離を取る。
オーガもストレスが溜まりそうだ。何せ1発も当てる事が出来ていないのである。
遠くから火を纏った棒が飛んでくる。それはオーガの腹の辺りに突き刺さった。
(ん?低いな)
先程からタリスの魔法はオーガの胸より上を狙っていたはずなのに腹まで下がっている。
位置を確認すると大分下まで降りてきている。フェアリーは魔法を使うとどんどん下がってくるのだろうか。
(まずい。オーガの攻撃範囲だ)
オーガの攻撃が一撃でも当たったら即死するだろう。
いくら死んでも拠点で復活するとは言え、このギリギリの状況で1人減ったら勝ち目がなくなる。
オーガはそれを狙っていたのか、腕を振りかぶる。タリスは詠唱に集中しており気が付いていない。
気が付いたとしても中断して回避は間に合わないだろう。
咄嗟に俺は持っていた剣を投げオーガの腕に突き刺す。オーガの腕に刺さり棍棒の軌道を逸らした。
「タリス!もっと後方へ下がれ。あともっと高く飛べ」
指示を出す。自分の要る位置に気付き下がる。それを見て安心する。
剣はオーガの腕に突き刺さったままだ。武器が無い。
(どうするか……)
素手で殴ってもたかが知れている。だからと言って相手の腕まで取りに行くのも危険だ。
(落ちるまで回避し続けるか)
予備の装備という考えを失念していた。この迷宮の装備は耐久度という物がない。何時間使っても刃こぼれすらしない。
その為、装備を増やし重量を上げてまで予備の装備を持つという考えがなかった。
(次は気をつけよう)
盾でオーガを殴りながら考える。意外と余裕があるもんだ。
(アイテムボックスは戦闘中開けないものか?)
スタミナポーションを出す時はアイテムボックスとわざわざ念じなくても直接出てくる。
(なら武器も出来るんじゃないか?よし、試すか)
鉄のロングソードと念じる。
*アイテムボックスにありません*
「あ、予備も全部売ってたんだっけ……」
思わず口に出る。
(恥ずかすぅぃぃぃ)
くどい様だが戦闘中、しかもボス戦中である。どれだけオーガは舐められているのか。
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(落ちてこねぇ……どんな勢いで刺したんだよ)
あれから数分経った。オーガも一心不乱に棍棒を振り続ける。だが刺さった剣は未だ抜けない。
オーガも全身傷だらけで満身創痍だ。そろそろ倒れるのかもしれない。
(俺……さぼっているみたいじゃん……)
盾で殴っているものの威力のある攻撃は繰り出せない。だが実際は、攻撃のターゲットとなり注意を引き付けるだけでも十分意味はある。
「あっ」
タリスが声を上げる。
「どうした!?」
タリスに声をかける。とは言え目線はオーガに釘付け。さすがに逸らせない。
「ちょっと、これから大きいのいくよ」
(大きいの?何だろう?)
良く解かっていない。だが、この状況を打破できるのならと返事を返す。
「よし、許可する。どーんといけ」
そう言うと、タリスの周囲に魔法陣が現れた。今まで使っていた火を纏った棒を放つ魔法を使うときは魔法陣なんて出なかった。
スキルの熟練度でも上がって新しいのを覚えたんだろうか。大木を盾で殴るだけの簡単な作業に戻る。
しかし、一向に準備が終わる気配がない。嫌な予感がする。
「準備おーけー。下がって!!」
3、4分だろうか牽制しながら耐えていると、タリスが声を上げる。
反転しオーガに背を向けダッシュして離れる。
普通に考えれば戦闘中の相手に後ろを向けるのは危険である。それでも俺は本能に従って逃げる。
するとオーガを中心に炎の柱が現れる。そして柱を中心に炎が広がる。
(え、ちょ)
ダッシュで更に逃げる。ゆっくり離れていたら炎に巻き込まれていただろう。
実際、ネクが巻き込まれて燃えている。
「……これはひどい」
炎の範囲から逃げ切り呟く。まさか味方を巻き込むとは思わなかった。
そもそも詠唱だけで3分以上かかる魔法なんて普通使い道がない。
それだけ威力が高かった訳だが……。
タリスは俺たちを恨んでいるんだろうか。思わずそう考えてしまう。
「……ごめん」
唖然としていたタリスが謝る。本人からしてみても予想外だったらしい。
後先を全く考えない娘である。許可を出した俺も悪い訳だが。
「拠点に帰ったらネクに謝ろうな。俺も一緒に謝るから」
「うん」
タリスが頷く。
オーガとネクが燃え尽きる。さすがのオーガもこれには耐えられなかったらしい。
ネクがそのまま粒子に変わり消える。拠点に帰還したのだろうか。
オーガも遅れ粒子へと変わっていく。宝箱はなかった。運が悪くて出なかったとは思いたくは無い。
*1階層のボスが倒れました。2階層が開放されます。またこの拠点からこの部屋への直通ゲートが開放されます。*
さて、最後は変な結末になったが、無事?オーガを倒せた。
この光景もいつかは笑い話になるのだろうか。少なくとも現実でやられたら笑えない。
「まぁ、勝てたんだ。拠点に戻って喜ぼうじゃないか」
明るい声でタリスを慰めるように言う。
ネクは倒れてしまったが、苦戦しながらも倒せたのは事実だ。
明日からは2階層だ。頑張ろう。