12話
フェアリーを連れて牢屋から出るとネクがこちらを見ていた。
そしてネクがサムズアップする。バレバレである。
「このスケルトンが仲間だ。名前はネク。仲良くしてやってくれ。
フェアリーの名前は……」
何にするか。苦手なんだよな。フェアリー、フェア、フ、札、護符、タリスマン、タリス
「よし、お前の名前はタリスだ」
「あいよー」
やる気のない返事である。ニヤニヤしている辺り嫌では無さそうだ。
さて、これで最低限の構成は出来た。後は調合とレベル上げか。
「タリスは疲れただろう?先に寝ていて良いぞ」
「お言葉に甘えて……」
そう言うとベッドに落ちる。慣れない事で疲れていたんだろう。
ネクは裁縫を続ける。
俺はどれくらい薬草が出来たか確認する。どうやら結構な枚数があるようだ。
さて、生産スキルの事を説明せねばなるまい。生産スキルを取得するとそれに必要な手法が全て頭に入ってくる。
具体的に言えばどの素材、道具をどのように使えば良いかなどである。
必要な各薬草をすり潰し水と混ぜ合わせ瓶に入れる。基本的な、というよりはスキルがなくても誰でも出来そうな作業を繰り返す。
これだけで簡単なポーションが出来るなら、調合スキルを取らなくてもよかったんじゃないか?とすら思えてくる。今後に期待する。
完成したポーションを鑑定台に乗せ性能の調査をし、使えそうなのはアイテムボックスに放り込む。
単純な作業だが、思ったより長い時間やっていたようだ。ネクが先に寝ている。
タリスとネクが寝ると俺の寝る場所がない。どうやら残ったポイントでベッドを増やさなければならないようだ。
簡易ベッド 100ポイント
標準ベッド 400ポイント
残り50ポイント
……簡易ベッドは増やしたくないな。そもそも買えない訳だが。1日くらい我慢するか。
窯の近くに適当に余った布を下に敷き寝転がる。さすがに石の上は冷たい。
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体が揺すられる。地震か?と目を開けるとネクが居た。どうやら起こされたようだ。
ネクが申し訳無さそうな感情を示し、ベッドを指差す。あっちに寝ろということだろうか。
「いや、いいよ。そろそろ起きよう」
朝食の準備をする。いつものアレだ。結局料理スキルを取っても材料も設備も無い以上どうしようもない。
それでもスキルが上がるのは何かが狂ってる。
食事を作っているとタリスも起きてきた。
「おはよう。良く眠れたか?」
挨拶をする。するとタリスが
「むー」
と返す。寝惚けているんだろうか。飯を食っていればその内目を覚ますだろう。
3人分に分け食事を取り始める。途中でタリスも覚醒し食べ始める。
食後、タリスのステータスを確認する。
名前:タリス
性別:女
種族:フェアリーLV1
職業:メイジ
種族適正
飛行:空を飛べる。
集団特性(弱):集団で行動すると少し強くなる。
高速移動:素早く移動する事が出来る
職スキル
魔力の泉:一定時間魔力の消費なしで魔法が使える。
魔法適正:魔法スキルの熟練度が上がり易くなる。LV10まで
スキル
なし
装備
武器:なし
盾 :なし
頭 :なし
胴 :草の服
足 :なし
装飾:なし
スキルなしって事はレアな個体ではないという事か。残念だがこれは普通なんだろう。
魔法職って事は魔法スキルを与えるのが良いんだろう。だが魔法スキルは一番安いので1000ポイントである。
貧乏は辛い。
「ステータスを見る限り、今まで通り俺とネクが前線で戦う。
タリスはレベルも低いしスキルも無いから高い所から周囲を警戒してくれ」
ネクは頷き、タリスは解かったわ、と返す。何というか喋り返されるっていいね。
転移の石で5階に飛び、4階に戻る。そのまま探索し乱獲を続けた。
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*使い魔視点*
今日の狩りを終え、拠点に戻ってきた。
(マスターとネクは凄く強かった。あたしの出番は全くなし。
あったとしてもスキルがないからどうしようもないけど)
マスターはパソコン?の前で何か作業をしていて、ネクはその後ろに突っ立っている。
マスターの邪魔をする訳にはいかないしやる事が無い。
暇だからネクを呼んで部屋の奥の方にある窯の近くに来た。
「ネクに聞きたいんだけど、あたしが使い魔になった時のアレはネクの差し金?」
気になっていた疑問を問い掛ける。ネクは困ったような感情を表に出すと手を出し親指と人差し指をCの字にする。
(これがネク特有の意思の伝え方なのね。表情も言葉もないのに感情だけ伝わってくる……)
「ちょっとね。でも、騙すのは酷いんじゃないかな?あたしたちは、最終的に従う選択肢しかないんだから」
ネクは何の感情も見えない仕草で立っている。本当に何も言えないんだろう。
(そう。あたしたちモンスターは拘束された時点で拒否をする事なんて出来ない。拘束される前は感情もなく本能に従っていただけ。
この感情を捨ててまで、あの頃に戻りたいだなんて誰も思わない)
それがモンスターとテイムのシステム。モンスターは牢屋で皆最初にそれを理解する。
開放する、とはある意味で残酷な話である。知ってしまってからそれを捨て去れと言われてもそう簡単に出来るものじゃない。
拘束期間はマスターとモンスターとの交渉時間である。モンスターにとって自分の立ち位置を決める重要な時間。
マスターにどんな優遇をして貰うかこのシステムの情報を隠し通して条件を押し付ける時間だ。
その結果は感情を壊され”奴隷”になるか、説得され”仲間”になるかである。
(それでもあたしたちの種族は自由を愛するから、素直に誰かに従う真似なんてしないんでしょうけどね)
見たこともない同族を思い苦笑する。共通する本能なのだから会わなくても解かる。
「ネク、これからどれくらい一緒にいるか解からないけど、よろしくね」
するとネクは手を出す。握手だろうか。あたしは、その手を握る。
そのサイズの全く違う手を握りながら思う。折角芽生えたこの感情で人生を楽しもう、と。
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(後ろの方で使い魔同士が何かしている。まぁ、仲が良いというのは良い事か)
勝手に自己完結する。
そんな事より、戦利品の処分である。どうやら1階層では鉄以外の装備は出ないようだ。
回復薬を残し全て売却する。
思ったより多くの品物が集まったようでDPは1800になった。
(標準ベッドと魔法スキルは欲しいな)
ベッドで400ポイント。スキルで1000ポイント消費する。残り400ポイントか
食事がパンと肉だけというのも飽きてきたし、野菜でも取るか。
といってもコンロもないから生野菜に塩を掛ける程度しか出来ないが……
ベッドを設置し、タリスに下位古代魔法を覚えさせる。
食事、風呂を終え新しいベッドで眠る……
ベッドの寝心地は決して良い物ではなかったが、木の箱の上に寝るのとは雲泥の差である。
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「ん……動けない……」
目が覚めた。左にネク、右にタリスが俺の腕に抱きついて寝ている。
(これだけ言うとハーレム野郎爆発しろ、と思うだろうな)
ネクの種族はスケルトン、タリスはフェアリーである。手の出しようがない。
(てか、こいつら何でこっちに寝ているんだよ
これじゃベッドを増やした意味が全くないぞ)
そりゃ誰だって良い方のベッドがあれば、そっちに寝たいと思うだろう。
所詮、簡易ベッドは木の箱に布を掛けた程度である。
硬いとは言えスプリング入りのマットレスが引いてあるベッドの方が遥かにマシだ。
(最近、使い魔が遠慮なくなってきている気がする。
掲示板の使い魔スレを読む限りではそんな事ないらしいんだがな)
「おい、お前ら起きろ」
腕を揺すり声をかけ2人?を起こす。そしていつもの食事+サラダを済ませ狩りの準備をする。
「今日から当分レベル上げ期間だ。
どんどんモンスターを狩るぞ」
彼女たちが同族を倒すのをどう思っているかは知らない。知ろうとも思わない。
どうしようもないのだから、完全にそれらを無視する。
反復作業をがんばるぞーっと
各キャラクターの容姿に関する記述は意図して余り書いておりません。
スケルトンやフェアリーという種族のイメージから皆さんがが好きなように思い浮かべてください。
キャラクターを押し付けるのではなく、文章から妄想するという楽しみを奪いたくないからです。
け、決して面倒くさいからじゃないんだからね!!