11話
拠点に戻った後、すぐ牢屋へ向かう。
例の筒に玉を入れると手足を拘束されたフェアリーが現れる。
「……なによ」
こちらを睨んでくる。どうやら好感度は最悪なようだ。殴って捕まえて牢屋に放り込めば当然だろう。
(さて、どうやって説得するか。フェアリーの場合は絶望を与えるのが良いんだっけか)
さすがに無抵抗な女の子相手に非道な真似をしたいとは思わない。
(と言っても、今までも散々虐殺していた訳だし今更なんだよな。よしアレをやるか)
「お前に選択肢を与える。このまま飢えて死ぬか。俺に服従するかを選べ」
そう伝えるとフェアリーがビクッと震える。
突然知らない所に連れて来られ、動けなくされた上でそんな事を言われたら誰だって怖い。俺だって怖い。
「い、嫌よ!!」
解かりやすい虚勢である。ならばこう返すか。
「そうか、そのまま飢えて死ぬが良い」
泣きそうな表情を確認し、そのまま踵を返し牢屋から出て行く。
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「はぁぁぁぁぁ……」
俺は小市民だ。脅迫なんてした事は無いし、やりたいとも思った事は無い。
(今頃あの子泣いているんだろうな……)
胸が痛む。
(参ったな、こっちの方がダメージでかくてどうするんだ)
気分を変える為にレベル上げに行くか
「ネク、レベル上げにいくぞ」
するとネクは首を振る。まさかの拒絶だ。
ネクは心配そうな顔でこっちを見ている。いや骨だから表情はないんだけど。
(余程酷い顔をしているんだろうか。敵と戦うのにもこんな気分じゃ危ないか)
「解かった。今日はレベル上げはなしにしよう。ネクは裁縫を頼む」
ネクは安心した表情を見せ……?裁縫に取りかかる。
(どうして骨の表情とか気分とか解かるんだろうな。使い魔だからだろうか)
仲間と意思疎通が出来るというのは悪く無い。
(ネクが人間だったらな、と思ってしまう事はあるけどな)
そんな事はあり得ないと自分を納得させ、風呂掃除に向かう。
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「ぐぬぬぬぬ……」
夕飯時、ふとフェアリーが腹空かせているんだろうなと考えてしまった。
ネクは呆れた表情をし、そんなに辛いなら渡して来いよとばかりに、パンを半分にして渡してきた。
「だが、服従させるには心を鬼にしないと……」
ネクは無理無理、とでも言いたいのか手を振った。そかー
「渡してくる……」
諦めた。1日目でここまで心を痛めていたらどうせ続かない。
徐々に弱って行き、死ぬ寸前になるまでフェアリーを観察しなければならないのだ。
どう考えても出来ない。
パンを受け取り牢屋へ向かう。
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牢屋に向かうと泣き腫らし、力無く横たわるフェアリーが居た。
「……食事だ」
自分が自分の意思でこんな事をした。その事実に胸を痛める。
ネクが喋れたらそんなに痛いのならやらなければ良いのにとか言われそうだ。
フェアリーは顔を上げ泣き腫らした目でこちらを睨む。
「毒は入っていない。食え」
そう言いながらパンを差し出す。
「……手が縛られているのに食べられるわけ無いじゃない」
フェアリーがそう言う。確かにその通りだが、手を開放すると魔法が使えるらしい。
今はまだ逃がすつもりは無いので、手枷を外すわけにはいかない。
パンを一口大に千切りフェアリーの口元に持っていく。
すると、余程空腹だったのか食べだす。
それを繰り返し、持ってきたパンを全て食べる。このサイズで1/4斤を食べるって凄いな。
「すまなかった。君を使い魔にしたかったんだ。
従わない場合、君の心を折るしかない」
自分で思ったより耐えられなかったのか、正直に話してしまう。
「俺に従ってくれないか?無理そうなら開放する」
「随分勝手よね」
フェアリーが言う。正にその通りである。
こんな方法を取るとは、正直焦りすぎたのかもしれない
「勝手に連れて来て、苦しませて、今度は無責任に放逐するなんてね」
「すまない……」
素直に謝る。
「良いわ、従う。だけどちゃんとご飯は食べさせてよね」
「それは約束する。ではいくぞ”テイム”」
テイムの言葉を言うと、フェアリーの情報が入ってきた。ネクのときと一緒である。
フェアリーの拘束を外す。うーんとフェアリーが背伸びをする。やはり動けないのは辛かったのだろう。
「他の仲間を紹介しよう、付いてきてくれ」
「解かった」
「俺の名前はスズキだ。宜しく頼む」
フェアリーを連れ牢屋を後にする。俺の表情はにやけたままで。
(落として上げる作戦成功)
だが、まさかこんなに早く成功するとは思わなかった。フェアリーさんちょろすぎるでしょう?
強気なタイプは不安な状態になったら
完全に自信を無くさせるか
相手が不利な状態から有利な状態に巻き返させると調子が戻り交渉の余地が出ます。
その際に少し優しくすると良いかもしれません。
ですが、生殺与奪の権利は相手にあるという点を忘れさせない事です。
それを何日かやれば大体諦めて落ちると思います。
さすがに半日も持たないのは早すぎますが……