発覚
ちょっと生々しいかもしれません。
「ご主人様、出来ちゃった」
「……え?」
夕飯を食べ終え、食休みにお茶を飲んでいる時にティアが言ってきた。さすがにこのタイミングで出来たと言われて想像するのは子供だ。避妊を解除するスキルを使っていれば当然そうなるだろう。
「あ、ああ、ありがとう」
何故か俺は礼を言ってしまう。かなり動揺している。正直、こういう時になんて言えば良いのか解からない。ティアは隣に来ると俺にしなだれかかってくる。反射的に肩を抱きこちらに寄せる。
(しかし、どうやって知ったんだろうか。そういうスキルとかあるのか?)
真っ先にスキルを考えるあたり、迷宮中毒と言われても仕方ないと思う。
「えーと、どうやって知ったんだ?」
何をとは言わない。空回りしても恥ずかしい。
「ああ、それはあたしの探知スキルよ。生体感知をして見るとすぐにわかるからやってみなさい」
タリスに言われ、探知を使ってみるとティアの位置に2つ反応がある。ティアと赤ん坊だろうか。探知スキル万能すぎるだろう。どうやら俺以外の全員が知っていたらしい。俺だけが慌てている。
嫌な予感がして周囲の生体を調べると10件あった。
(ん?10?)
仲間が7人、俺、ティアの子供で9人だ。ネクはスケルトンなので魔力反応になる。よく見るとクウの所に2件重なっている。
(まさか……)
クウもなのだろうか。精神的に不安定になりやすいから心配になる。
(あの件も何だかんだで有耶無耶になってしまったしな……あとでこっそり聞いてみるか)
皆の前で話すのはまだ早いかも知れない。
「主様、少しよろしいでしょうか?」
パステルが何やら言いたい事があるらしい。
「ん?ああ、いいぞ」
男の俺よりも女の方がこういうのには詳しいだろう。
「子供を作る順番を決めませんか?全員が妊娠したとなると戦力の低下を招きます。また出産時に困る事になりそうです」
確かに迷宮に1人で行けと言われても困る。ネクと2人だとしても行けて4階層くらいだろう。本来、こういう計画は事前に立てておくべきだったと反省する。
「確かにそうだな。戦力以外でもサポート出来る人数は多いほうがいい。出産後もすぐに動けるわけでもないだろうし」
意見に同意する。さすがに調子の悪い仲間を酷使したいとは思わない。
「では、今回はティアという事で、他の者に手を出すときはスキルをちゃんとオフにして下さいね」
パステルに釘を刺される。とは言えスキルがあってもなくても特にこちらからしてみたら変化はないので忘れないようにするだけだ。今のうちに操作しておこう。
「操作はしたから大丈夫だ。それと準備するものはないのか?正直初めての事だからさっぱり解からないんだ」
ここに居るメンバーも詳細は知らないかもしれない。だが、色んな本を読んでいるパステルなら何か知っていると信じている。
「そうですね。まだ早いですが、分娩室と赤ちゃん用の品があると良いですね。以前話し合った時に私とコクがその手の知識を持っているので大丈夫だと思います」
現代の日本のように色々と用意する必要はないようだ。しかし、ちゃんと知識を持っていて感心する。経験じゃないところが怖いが、結局はそれに頼るしかない。最悪回復魔法をかけ続けるという手もある。
「という事は、パステルとコクは順番を別にした方がいいか。他の者も見て経験に繋がるかも知れないしな。順番は皆で相談してくれ」
さすがに立ち会う事はできても取り出しを手伝うわけにはいかない。手伝うと言っても拒否されそうだ。ローテーションの順番は本人たちの拘りとかあるかも知れないから変に口を出さないのがハーレムを円滑に操作する秘訣である。
ティアの頭を撫で、準備があるからとコタツから立ち上がる。ティアはもっと構って欲しそうだったが、今は考える時間が欲しい。結果が変わらないとしてもだ。
とりあえず、大きな医務室があったようなので作っておく。俺とした事が医者プレイを忘れていたようだ。道具は何が必要になるか解からないので一式用意する。使用期限とかあると怖いので薬品ではなく道具を優先する。
(CTスキャンとか誰が使うんだ?)
ファンタジーの世界でそんな専門知識を持つ種族はいないだろう。医者がここに転移して来ているのだろうか。ベビー用品は一杯あったが、まだ早いだろう。
(しかし、管理者がこれらの品物を用意していると考えると笑えるな)
管理者も子供が居るとか言っていた気がする。自分の時に用意したのだろうか。管理者と部下のドラゴンがこういうのを作っている姿を想像すると吹き出しそうだ。
掲示板の同士の中でそういう経験をした人はいないだろうか。聞いてみるとしよう。
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雑談スレ part321
111 名前:名無しさん
使い魔が妊娠した
たすけて
112 名前:名無しさん
爆発すればいいんじゃないかな
113 名前:名無しさん
そうだな
爆破しよう
114 名前:名無しさん
自爆装置があったよな
それを無理やり使わせようぜ
115 名前:名無しさん
いや、助けてやれよ
で、どうやってスキルを得たんだ?
116 名前:名無しさん
助けるとか言いつつ情報を聞き出そうとする鬼畜がいた
117 名前:名無しさん
オマケダンジョンをクリアした時に管理者から貰ったんです
118 名前:名無しさん
もうオマケをクリアしたのか
早いな
119 名前:名無しさん
報酬で貰えるのかー
狙いたくなる
120 名前:名無しさん
で、どうやって>>111を爆破する?
121 名前:名無しさん
相談に乗ってそのまま自爆付きの品物を誘導して買わせる
その線で行こうか
122 名前:名無しさん
ラジャー
123 名前:名無しさん
筒抜けじゃねーか
124 名前:名無しさん
相談って言ってもな
ここにいるのって殆ど独身だろ?
125 名前:名無しさん
だよなぁ・・・
家庭を持っている人は選考から外したって言ってたしな
126 名前:名無しさん
相談の乗る以前の問題だな
ど う し よ う も な い
127 名前:名無しさん
むしろ、俺たちのときに相談に乗ってくれというノリだわw
128 名前:名無しさん
先行頑張れ
使い魔で知識持っている奴とかいないの?
129 名前:名無しさん
2人持っている使い魔がいましたが
こちらでも情報を得られそうならと思いまして・・・
130 名前:名無しさん
こっちで情報はまず無理だな
使い魔に頼れ
131 名前:名無しさん
いや、まてよ
その手の本は無いのか?
変な本も一杯あるし、探してみたらあるんじゃね?
132 名前:名無しさん
なるほどな
何を考えているのか解からないようなラインナップが一杯あったよな
133 名前:名無しさん
ありがとうございます
探してみます
134 名前:名無しさん
爆破は出来そうにないな
ここまで必死だと茶化すのが難しい
135 名前:名無しさん
そりゃ、最初の子だからな
本人は必死だろう
136 名前:名無しさん
俺らもそうなる日がいつか来るのかね
137 名前:名無しさん
来るといいなぁ・・・
その前にオマケクリアだけどさ
138 名前:名無しさん
アレは勝てる気がしねぇ・・・
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俺はアドバイス通り本を探してみる。赤ちゃんで絞り込んだら何故かエロ本が大量に出てきた。管理者の趣味がさっぱり解からん。掻き分けるように1つ1つ確認して行くと某クラブの雑誌が出てきた。片っ端から買って行く。
何が参考になるかなんて解からない。何分、皆初めての事だ。どんな知識でもいいから得たいと思う。
大量に買った本を持ってコタツへ行く。表紙を見ると、どう考えても生まれてからのも一杯ある。後で分別しよう。ティアは当事者だけあってすぐに近くの本を読みだす。他のメンバーも助けになれば、と言うよりは自分の時の為だろうか必死に読みだした。
この黙々と本を読んでいる集団は傍から見たらかなり異様に見えるだろう。それくらい必死だった。
(そういえば、クウとも話さないとな……)
「クウ、ちょっといいか?」
本を閉じコタツに乗せる。同じく本を読んでいたクウに話しかける。
「はい、何でしょうか?」
クウが返事をする。小声でクウに場所を変えようと伝える。そして俺たちは自室へと向かった。
俺はクウを自室へ連れて来る。クウを見ると不安そうな顔をしている。失敗でも咎められると思っているのだろうか。
「クウ、落ち着いて聞いて欲しい。探知スキルを使って解かった事なんだが、クウも妊娠をしている」
俺はそれだけを伝える。すると、クウの顔が真っ青になる。
「え?私が……ですか?」
クウはそれだけ言うと、何かを思い出し肩が震えている。以前町を滅ぼしてしまった事を思い出しているのかもしれない。罪の無い人を大量に殺してしまった事を。俺はそんなクウを抱きしめると頭を撫でる。
「……私は多くの人を殺めました……」
クウはそう言ってくる。今、必要なのは許しなのだろう。クウは目を閉じ、自分のお腹を触れ何か考え込んでいる。
「そして、また罪も無い、生まれてすらいない子供を殺すのか?」
俺は予想していた。クウは自分の子を生まれてはいけないと思い込んでしまうと。だからクウが言う前に先に先手を打った。
「なら、私はどうすればいいのでしょうか……」
クウは遂に泣き出す。そして俺にどうしたら良いか聞いてくる。なら俺の取る選択は1つだ。
「子供を生め。俺はクウに選択肢を与えない。主としての命令だ」
クウに強制する。今のクウに必要なのは安らぎだ。罪悪感に押しつぶされそうになっている彼女を救うにはそれ以上の幸せで塗りつぶすしかない。そしていつか、自分を許せる様になって欲しい。
「解かり……ました」
クウはそれだけかろうじて口にする。俺は抱きしめながら手を下まで持って行き尻を揉む。胸の感触と合わせて揉むのを止められない。
「それに俺も子供は楽しみだからな」
そう言って俺はクウの口を塞いだ。