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迷宮と掲示板  作者: Bさん
オマケ
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オマケダンジョン14話

これにてオマケダンジョンの話は終了になります。

 あれから数日装備を作る為に3階を探索し続けた。その甲斐もあり、全員分の装備を整える事が出来た。充実した装備を装着し、俺たちは再度ボス戦に挑む為に準備をしている。


「今日はボスとの再戦を行う。前回の失敗を踏まえて装備は揃えたが、油断は決してしないよう頼む」


 他のメンバーはLV200を突破しているが、俺だけ200のままだ。一番死亡率が高いのは俺だろう。今回のオマケダンジョンは俺が先に倒されても全滅扱いにならない為、倒される事を危惧して消極的になる必要は無い。


 ただ、俺が倒されると士気に関わるから無理はしない。今回参加するメンバーではティアが一気に下がるだろう。ネクやパステルは逆に怒って強くなりそうだ。


「メンバー構成は、前回と同じ面子で行く。ブレスがあるから長時間止まる魔法組はきついと思う。飛行が出来るクウと動きながら詠唱の出来るパステルじゃないと難しいと思う」


 俺は皆にそう伝え、リムとタリスを留守番にする。コクは最初から留守番担当だ。


「ティア、転移を積極的に使って確実にダメージ与えてくれ。黒龍装備なら魔力の回復も早いと思う」


 短距離転移の効果は距離は最大50m、1つの物体に限り転移できるとわかった。消費もそこまで大きいというほどではなく、ティアの魔力でも連続して10回は使用できた。残念ながら、人を運ぶと裸になるとかはなかった。


「解かった」


 ティアは短い返事を聞くと俺はその頭を撫でる。


「1人が倒されると危険だ。ギリギリの戦いである以上命を大事にしてくれ。自分が倒れると仲間がそれだけ危険に晒されると思って無理はせず確実に攻撃していこう」


 俺がそう言うと無茶をするのはいつもお前だ、という視線が集まった気がした。多分、気のせいだろう。


 そして俺たちは話をそこそこにしてボス部屋へと向かった。各自ちゃんと考えがある以上あれこれ言っても仕方ない。戦闘に関する経験は俺より仲間の方が多い。




 ボス部屋の扉を開け、ドラゴンと対面した。いつも通りエンが正面を陣取り俺たちは周囲だ。俺たちが散開すると戦いが始まる。


 ティアはいきなり転移を使ってドラゴンの首の後ろに転移すると片手剣で首を突き刺す。いきなり大胆な戦い方をする。飛び散る血を浴びても気にせず、解呪の札を使用しその呪いを消して何度も刺す。


(こえーティアを怒らせるとああなるのか……)


 最初はビクビクしていたのにもう好戦的な子になってしまったようだ。もうあの頃の面影は無い。


 苦しんで動きが雑になる黒龍に踏み潰されないように俺は後ろ足を斬る。そこまで威力は出ないものの確実にダメージを与えているようだ。


 黒龍は正面のエンに釘付けになっている。エンはその攻撃を盾でガードし全て受け流す。俺は尻尾の方に向かい盾を仕舞ってよじ登る。剣があそこまで突き刺さるのなら尻尾を切断できるかも知れない。どうせなら攻撃手段を減らしたい。


 片手で尻尾にある突起を掴み、何度も同じ場所を突き続ける。血が飛び散ったら剣を突き刺したまま解呪の札を使い癒していく。尻尾に居る俺が鬱陶しく感じたのか黒龍は大きく旋回し俺を吹き飛ばす。高さ20m以上まで俺は上昇していく。


「うおおおおおおお」


 回転しながら飛んでいく。傍から見たらかなり間抜けだろう。それでも本人は必死である。


 壁に向かって風の魔法を使い、激突を避ける。そのすぐ後に自分の下に使い、落下速度を遅くする。


(ふぅ……どうやら俺の魔法も大分使えるようになってきたらしい)


 誰も見てはいないが、内心ドキドキしながら余裕を見せる振りをする。俺は盾を取り出すと戦線まで戻る。ティアは相変わらず首でザクザクやっている。その内首が切り落とされそうだ。尻尾も大分傷が広がったらしく痛々しい。どうやらもう少しのようだ。俺はまた尻尾へ向かうと続きをする。飛ばされても制御出来ると考えればそこまで脅威ではない、と思いたい。


 そして遂に尻尾が切り落とされる。尻尾とともに俺は落下し頭から落ちる。


(いてぇ……)


 かなり痛い。幸い硬い兜のお陰で致命傷にはならなかったが、寝違えたような状態になる。早い話が筋を痛めて首が回らない。


 尻尾を切り落とされた事でドラゴンは怒りだした。暴れ出し、首で戦っていたティアが宙に投げ出される。如何に身体能力が優れた獣人だとしてもあの高さから落ちたらひとたまりも無い。俺は剣を捨て風の魔法を身に纏って落下地点に急ぐ。空中でティアを抱きとめ、そのまま俺は落下し地面に激突する。上手く行かないものである。


 ティアの様子を見るとどうやら無事な様である。俺は腕が折れていたが、強化された回復薬で治療をする。腕が落ちても生えてくるアレである。意識のないティアの頬を軽く叩き、起こす。


「ティア、大丈夫か?」


 そこでやっと俺に抱きとめられた事に気が付いたようだ。ティアは俺を軽く抱きしめて礼を言ってくる。そのまま甘い展開になる訳もなく、戦闘に再び参加すべく黒龍のもとへ向かった。俺は落ちていた剣を回収し、黒龍の様子を見ると何か変なオーラを放っていた。


(もしかして、今まで本気じゃなかったのか?)


 ネクが放っているのと同じような感じと考えれば攻撃と防御が上がっているはずだ。尻尾を先に切断出来たのは良かったのかも知れない。俺たちは盾を構えて慎重に動く。ティアは俺の後ろに居る。


 盾を前に出し、オーラの範囲に入ると手が黒くなっていく。慌てて離れるとそれが消える。どうやらアレは自分の範囲を弱体化してくるらしい。こうなると近距離武器が一切使えない。


「装備を遠距離に切り替えろ。アレに触れると弱体化されるぞ」


 俺たちは弓や魔法に変える。俺は魔法も弓も無いので片手剣を鞘に仕舞い、投擲用の武器を取り出す。


(確か自動で飛んでいくんだっけか)


 狙いは相手の目だ。視力を失って正気でいられる生物は少ない。目を狙って連続で5本投げてみる。ドラゴンは当たる寸前で避けるが、そのままナイフは反転して目に向かっていく。


(高性能すぎだろ……)


 そしてそのまま目に突き刺さる。5本全てがだ。片方の視力を失ったドラゴンはまた暴れだす。どうやら効いているようだ。ネクとティアも弓で狙っているがどうにも当たりが悪いようだ。


 エンはその暴れている目の前で盾を構えて耐えている。あいつなら時速100kmの車両の突撃すら耐えるのではないだろうか。生物としてどこかがおかしい。


 さすがにドラゴンは目を潰されて苛立っていたようだ。ドラゴンは俺の方を向き、ブレスを放つ為に息を吸い込む。


「ティア、俺の後ろに」


 俺はティアが後ろに回った事を確認すると盾を前に出し、ブレスを耐える。腕が焼けるように熱くなり、徐々に黒く染まっていく。どうやら黒龍石で作った盾でも防げないらしい。


 ブレスが終わる頃には皮膚が焼け爛れ、既に力が入らない。もうこれでは盾を使った防御は出来ないだろう。盾をアイテムボックスへと仕舞い、投擲用の装備を多めに取り出す。もう出来るのは高速で移動しながらの投擲くらいだ。


「ティア、後方に下がって撃ってくれ。もう守る事は出来そうにない」


 そういうと残念そうな顔をして下がっていく。そんなに守られたいものかね。

 

 高速移動をするべく、身に風を纏い走り出す。そして転んだ。


(そういえば、練習もしてなかったわ)


 ぶっつけ本番で出来るほどセンスがある訳でもないようだ。先程のは必死だったから、どうにか出来ていたのかも知れない。英雄には程遠い。格好がつかないものである。


(なら凡人は努力して上げたスキルでも使いますかね)


 地道に走ってドラゴンの反対側へ来る。そしてナイフを目に向かって2本同時に投げる。さすがにドラゴンも覚えたのか避けたりせずにそのまま前足で叩き落す。残念だ。


 俺を脅威だと思ったのか再度ブレスを使う為に息を吸う。


(やべ、次が来たら耐えられんぞ)


 ならば、と賭けに出る為に風を身に纏う。そしてブレスが発射されたと同時に俺は空へと飛んだ。制御なんて期待はしていない。


「クウ!俺を掴んでくれ!!」


 他人任せである。尻尾で飛ばされた時も偶然出来たものだと今飛んでから気が付いた。正直もう1回やれといわれても無理だ。


 クウは慌てて飛んでくると俺を後ろからがっちりとホールドした。凄く間抜けな格好だと思う。そしてそのままナイフを2本投げる。今度は相手が油断していたのか残っていた片目に当たり鮮血を飛び散らせる。これで両目を潰した。


 クウは俺をゆっくり地面に降ろすと「もうしないで下さい」と言い残して支援へと戻っていく。かなり焦ったらしい。


「さて、目も見えないのなら後はじっくり料理してやるだけだな」


 とは言えこっちも片手が使えない状態だ。投擲では鱗を貫通する事は出来そうにない。オーラは依然残っており、決め手に欠けている。


(俺の手持ちで効く武器は聖魔の剣くらいか……)


 既に選択肢すらなかった。剣を抜いてどうするか考える。近寄ると力が失われる、なら失われても大丈夫なもの……。


「飛行鎧か!!」


 まさかの出番である。俺が叫んで近くにいたティアの肩がビクッと震える。好戦的になってもこういうのには弱いらしい。後でいじめてやろう。


 俺は飛行鎧を取り出すと頭の部分に剣を取り付ける。銃弾は効かないだろうし、魔法は期待出来ない。そうなると頭に取り付けた剣で頭突きだ。これしかない。


 鎧の頭に何重にも剣帯を巻いて固定をする。これだけ巻けば外れないだろう。兜の口の部分が帯で巻かれて何とも言えない光景である。前面を開くと頭の部分が開かないので無理やり頭を入れる。これはきっと帯を外さないと抜けない。


 どうにか着込み、起動させる。どうやらこの状態でも正常に動けるようだ。それなら後は簡単だ。俺が弾丸となるのみ。狙いはドラゴンの頭部である。未だ苦しんで動けない光景を見ながら、狙いを定め、一気に飛び立つ。俺は一直線に飛び剣はドラゴンの頭を貫通した。


 そしてドラゴンは消滅していく。俺はオーラを浴びた事で全身が真っ黒になって居るだろう。既に両手が動かない。


(あ、それってやばくね?)


 操作が出来ない、という事はそのまま天井にぶつかるという事だ。そして俺は天井に激突し、そのまま落下して意識が薄れていく。


*オマケダンジョンをクリアしました。その先の階段に進むと報酬アイテムを選べます。そのままお進みください*


 そんなメッセージを見ながら俺は消滅した。



 目が覚めると、目の前にはリムとパステルがいた。どうやら看病をしてくれたらしい。上半身を起こすと支えてくれる。


「心配をかけたな。どれくらい眠ってたんだ?」


 手足が正常に戻っているのを見る限り1日や2日ではないだろう。それを聞いたパステルが答えてくる。


「5日程、眠っておられました。心配をかけないで下さい」


 半泣きのようなそんな顔で言われる。正直、ここまで眠るとは思わなかった。黒龍の呪いの影響なのかも知れない。


「リムにも心配をかけたな」


 そう言ってリムの頭を撫でると、そのまま抱きついてきた。寝転がり、抱きしめ返す。パステルは他のメンバーを呼んでくると行って寝室から出て行った。


「ご主人様!!」


 そういって転移魔法を使ってワープしながら誰かが俺に突っ込んでくる。猫耳を見る限りティアらしい。リムが俺とティアの間に挟まれて苦しそうだ。それでも抱きつくのを止めないのを見るとかなり心配をかけてしまったようだ。


 ティアをリムの横にずらすと2人を同時に抱きしめておく。頭を撫でられないのは残念だが、そのまま2人の感触を楽しむ。5日も禁欲で居たらそれどころでは済まなそうなのに、特に何とも思わない。


(定期的に発散とかされてないよな……)


 寝ている間に何をされたのか解からないのが怖い。そして他のメンバーが集まり、声をかけてくる。


「スズキさん、クリアおめでとう。でもあの攻撃はどうかと思うよ」


 コクは最後の攻撃の様子を聞いてしまったのだろう。困ったような顔をして言ってくる。他に手段が無かったのだから仕方ない。


「全くマスターは昔からずっとこうよね」


 タリスがそう言ってくる。多分1階の頃からこんな調子だったと思う。俺は結局強くなっただけで、最初から変わっていないようだ。しかし、昔の事を話し出すとはおば……。いや、なんでもない。


「マスター、無茶をしないとあれほど言ったじゃないですか……」


 ややドス黒いオーラを発しながらクウが言ってくる。それは怖いから止めて欲しい。


「ご主人様、最後の攻撃はちょっとどうかと思います」


 エンがそんな事を言ってくる。どうやら俺には格好のいい主となって欲しいのだろう。こんな主で申し訳ない。


 ネクは俺の手を握ると何度も頷く。こいつにも心配をかけてしまったようだ。考えてみると迷宮に入ってずっと一緒に居た気がする。長い付き合いになったものだ。


「さて、管理者に報酬を貰いに行くか」


 出来る限り皆を連れて行きたいが、6人制限だ。誰を連れて行くか考えながら皆で寝室を出るとコタツに見知らぬ黒髪の男が居た。


「やっぱりコタツっていいねぇ……日本人として必須だよね」


 黒髪の男がそんな事を言ってくる。誰だろうか。いや、今までの行動を見る限り選択肢は無い。


「管理者か?」


 俺は男に向かって聞く。


「ああ、そうだよ。私が管理者だ。オマケダンジョンをこうも早くクリアされるとは思わなかったからね。ご褒美にスキルをあげようかと思ってきたんだ」


 そうニヤニヤ笑いながら言ってくる。この笑顔は信用できそうに無い。俺たちはコタツへ向かって話し合う。


「くれるスキルって何だ?」


 会ったら色々と聞きたい事はあった。だが、この男を見る限りちゃんと話してくれる様子はない。力強さではない何か得体の知れないものを感じる。


「ああ、リストを作ったから選んでくれないかな」


 そう言って用紙を渡してくる。結構な量があるようだ。上からスキル名と効果を見る。仲間達があっと声を上げる。俺もそれを見ると「ああ、そうか」と納得する。


「それじゃ、俺はこのスキルをもらう事にするよ」


 即決した。迷ったりなんかしたら仲間達に申し訳ない。


「そっか、君ならそれを選ぶと思っていたよ」


 管理者は裏表の無い気持ちのいい笑顔でそう言う。手をこちらへ向けると俺に何か光のようなものが入ってくる。


「これで完了。それじゃ、私は失礼するよ」


 それだけ言うと管理者はさっさと消えてしまった。これ以上何も聞かせない、とでも言うように。


「ご主人様」

 

 ティアが抱きついてくる。そんなに嬉しかったのだろうか。そんな様子を皆が微笑ましそうに見ている。俺たちはこれから色々な変化をしていくだろう。いつまでもこいつらと仲良くして生きたい、そう思う。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

使い魔達との結晶

効果

使い魔と子を成すことが出来る

on/offの切り替え可能

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


これでスズキの冒険は終了になります。

この先は長編ではなくちょっとした話がメインになります。


掲 示 板 を 忘 れ て た

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