オマケダンジョン10話
俺たちは火山を確認した後、拠点へと戻る。どうやら次は足元に気をつけなければならないらしい。
「戦利品は少ないが、鑑定しようか」
俺たちはコタツに集まり、戦利品を確認する。オマケダンジョンでは装備品が一切ないので全部コタツの上に出せる。
「まずは鉱石だが……新しいのは無いな。コクもって行ってくれ」
そういうとコクが嬉しそうに回収する。全員分の特殊な装備を作ってくれると嬉しいのだが……。
「薬品も前回と変わらないな。アイテムボックスへ入れておくから、各自取り出してくれ」
2階の戦闘自体が短いのだから戦利品は少ない。次はスクロールだ。
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魂の宴
効果
魂を燃焼させて大幅にステータスが上がる
副作用で1週間以上寝込む場合がある
※消滅はしません
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(これはまた極端なのが来たな。切り札にはなるかも知れないが、人数の少ない俺たちが使うのはリスクが大きすぎる)
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ダンス
効果
踊りが上手くなる
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(どうすんだよ、これ)
レアスキルとして存在している事にも驚きだが、誰が好んで使うのか。
(いや、これはつまり……そう言う事か!!)
薄着で踊らせる。これはハーレムとして有名なイメージだ。是非ともやらせたい。
(問題は誰に覚えさせるかだが……クウだな。やはり胸がないと寂しいだろう)
リムが踊ってもアレである。こういうものは揺れるのを楽しむのが紳士の嗜みだろう。
スクロールはこの2つで終わりだ。後でネクにクウの踊り用の服を頼んでおこう。
「クウはこれを覚えてくれ」
そう言ってダンスのスクロールを渡す。どちらかと言えば踊るより踊らされそうだが、気にしないでおこう。
「え?はい、解かりました」
クウは何でこんなスキルを覚えるのか解かっていないようだが、頑張ってもらおう。戦利品の確認はこれで終了だ。
そして夜、俺はスキルで疲労を感じないという効果の恐ろしさを味わう事になる。
翌朝、寝不足な状態でミーティングに入る。
「今回は俺たちが先行しているらしいから、敵や迷宮に関する情報は無い。行き当たりばったりになるから気を付けてくれ」
皆を見渡しながら言う。前回までは多少の情報はあったものの今回は火山という事だけしか解からない。
「メンバーは俺、ネク、ティア、タリス、パステル、リムで行く。所々溶岩が流れているので気をつけて欲しい。足場も悪いから戦闘中は落ちないようにな」
仲間達より俺のほうが危険なような気がするが、あえて皆に言う。お前がな、という視線を浴びている気がするが気にしないでおこう。
「それじゃ、次は武器だね。昨日完成した武器を出すよ」
コクが新作の発表をするらしい。最近は自爆装置以外は割としっかりしているから期待が出来る。コクはアイテムボックスから鉄板、杖、投げナイフ、弓を取り出した。
(鉄板は盾か?俺の身長よりでかいんだが、誰が使うんだこれ)
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降魔の盾
効果
黒龍石を使用したタワーシールド
魔力が徐々に回復する効果を持つ
ただし、凄く重い
製作者:コク
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試しに持とうとしたが持ち上がらない。何十キロの重さなんだろうか。エンが確か防具重量無効を持っていたので使えるだろう。エンに渡す。
「ご主人様、ありがとうございます」
表情は変えずに言うが、盾を抱きしめようとしている辺り、嬉しいのだろう。盾ではなく俺を抱きしめて欲しい。
次は杖だ。
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暗黒の杖
効果
黒龍石を使用した杖
魔力が徐々に回復する効果と暗黒魔法の威力が上がる効果を持つ
製作者:コク
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(どうみてもリム用だな。サークレットと相乗効果で魔力の余裕がかなり出来そうだ)
効果を読み上げるとリムが凄く欲しそうな顔をする。そのまま渡すのも面白くないので、誰にも渡さずに次に行く。するとリムがあからさまにがっかりした表情になる。とてもいい表情だ。
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天魔の投げナイフ
効果
聖魔鉱石を使って作られた投げナイフ
追尾機能付きなので、適当に投げても敵に当たる
製作者:コク
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(追尾機能?)
ただのナイフにしか見えないのに随分と高性能なようだ。これが20本あるが、素材が少ない装備なので慎重に使おう。俺は懐に仕舞う。
次は弓か
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エレメンタルボウ
効果
謎の鉱石を利用して作れた弓
精霊魔法の威力を上げる効果がある
製作者:コク
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(謎の鉱石?昨日見た中ではそんなものはなかった気がする)
どういうことだろうか。俺が弓を見ているとコクが何か言いたそうな表情をしている。仕方ないので聞いてみよう。
「コク、この謎の鉱石ってなんだ?昨日渡した中でそんなの無かったと思うんだが」
俺が言うとコクが無い胸を張って腰に手をやる。このまま放置したい。
「聖魔鉱石と黒龍石を混ぜ合わせてみたんだ。サンプルがこれだよ」
そう言うととても禍々しいインゴットをコタツに置く。鉱石の相乗効果なのだろうか。ネクとタリスが触ろうとするが、危険な気がするので止めておく。
「そんな事が出来るのか。今までの素材でも出来ていたのかな?」
何気なしに聞いてみる。そういえば調合でも複数の薬草を混ぜるのもあるし、それと似たようなものなのだろう。
「純粋な鉱石はそのままの方が良いけど、たまに相性のいい組み合わせがあるんだ。少数だけどね」
コクが残念そうに言ってくる。今までも試していたようだが、成功した組み合わせは少ないそうだ。
「なるほどな。一応掲示板の方で組み合わせがないか聞いてみるよ。職人スレだと聞きにくいだろうから雑談で」
一応あそこにはレシピを聞くのはNGだ。雑談で話しながら情報を漏らす人も居るかも知れない。
「うん、お願いね。自分で調べられるのが一番良いんだろうけど、素材が少ないから実験がし難いんだよね」
とコクが言ってくる。やはり職人として自分で調べたかったのだろう。
「それは帰って来てからやるとしよう。様子見で探索に行こうか」
そう締めくくりミーティングを終了し俺たちは迷宮へと向かった。
俺たちは火山の入り口まで移動する。相変わらず暑い。鎧を着込んでいるから更に辛い。リムにちゃんと杖は渡している。かなりもったいぶったから半泣きだ。やった甲斐があるものだ。
「これは……暑いな。水分の補給のための休憩を多く入れて進もう」
通気性の無い鎧なので、熱が篭る。脱水症状になって戦闘中に倒れでもしたら致命傷に繋がる。気をつけよう。
「タリス、そっちでも探知を頼む。皆辛くなったら言ってくれ。ここは無理をして進めるような迷宮ではないようだ」
モンスターとの戦闘以外で体力を奪われる地形である。いざ戦闘となった時調子が悪いのでは話にならない。
俺たちは山道を歩いていく。幅は3人並ぶのがやっとという程度のなので、戦闘をする事を考えて前衛は俺とティア、最後尾にネクを配置しその間に後衛組3人が入って貰う構成になった。
「探知にオークが6体とゴブリンが12体引っかかった。もう少し進むとぶつかるから戦闘準備をしてくれ」
敵を発見したので皆に告げる。そろそろ敵が現れてくるようだ。探知で先の方を見ると様々な種類のモンスターが見える。
「ネク、ティアと交代してくれ。俺たちで盾になって防ぐからその間に範囲魔法で倒して欲しい」
後衛組にそう伝えるとタリスは赤炎の杖を仕舞った。さすがに保護なしでは危険だと判断したのだろう。少し歩くとオークとゴブリンの集団を目視で発見する。あちらも気が付いたようで武器を振り回しながら走ってくる。
俺とネクは飛び出さずに盾を構えて迎え撃つ。必要なのは攻撃する事ではなく時間を稼ぐ事だ。突破しようとする敵を武器で牽制しつつ安全を重視して戦う。剣を振り回したら暑さでやられそうだし。
後衛の魔法の詠唱が終了しモンスターに氷と風が襲い掛かる。タリスとリムが氷、パステルが風という感じだ。鋭い氷の刃が竜巻に混ざって敵を切り裂いていく。俺たちは盾を構えながらその様子を見ている。そしてモンスターたちは全て消滅した。
盾の構えを解くと出現した宝箱へ向かう。罠を外し戦利品をアイテムボックスへと放り込む。そして俺たちは探索を続けた。ゴブリンやオークは弱いので数にさえ気をつければどうにかなった。問題は飛竜や広間にいるドラゴンだろう。
ドラゴンはブレスに気をつければ魔法でどうにかなるが、飛竜はそうはいかない。魔法の射程外から一気に突っ込んでくる為、詠唱が間に合わない事がある。俺たちが剣や弓で牽制しつつ魔法の詠唱を終わらせ仕留めるという感じで確実に進めていく。
「主、暑いのじゃ……」
リムが言ってくる。休憩を挟んでゆっくり進んでいたが、そろそろ限界なのかも知れない。仲間達も休憩の間は鎧を脱いで布の服だけになっている。汗が張り付いてエロい。
休憩時は結界を張っているので安全だ。ただ、暑さを遮断出来る訳ではないから、しっかり休む事は出来ない。
「そうか、そろそろ楔を使って戻るとしよう」
他のメンバーも声には出さないが、かなり気が滅入っている様だ。スキルのお陰で疲れは無いが、長時間の不快な暑さには耐えられない。楔はここに設置出来るが、帰りは階段まで歩かないとならない。来た道なのでモンスターが減っているとは言え余力がないと危険だ。
「帰るまでが探索だ。気を引き締めて戻ろう」
俺たちは鎧を着て準備をする。帰り道、そこでそいつと出会った。
最初に気が付いたのはタリスが常時使っていた探知だ。それを発見した時、すぐにタリスに教えてもらった。俺も確認し、仲間に警戒を呼びかける。こいつとは絶対に戦ってはいけない、と皆に伝える。勝ち目が無い。
以前のように自分たちが盾になると言い出しているが、こいつ相手では時間を稼ぐ事も出来ないだろう。脇を通り抜けて逃げるしかない。冥王の使いの様に俺が倒されたら消滅とはないだろう。あそこまでの悪寒は無い、ただのユニークモンスターだ。そして俺たちは対峙する。
ブラックドラゴンLV400
(どう考えても無理です、ごめんなさい)
思わず誰かに謝る。俺たちは生きて帰ることを誓うと黒いドラゴンへと向けて走り出す。通路はそんなに広くは無い。その為、ドラゴンの攻撃範囲を必ず通らなければならない。下手に尻尾で旋回されたら終わる。出来るだけ刺激を与えないように一気に近寄る。だが、パステルが1人矢を放つ。自分に注意を向けて仲間を安全に通らせようとしているのだろうか。
だが、俺は見てしまった。自分に徐々に近寄ってくるドラゴンに対して光悦の表情をしているのを。
(こいつ……一方的に蹂躙されるのを喜んでやがる!!)
いつもは後衛という立場上攻撃を受けたら危険だ。だから、今回の様に倒されても仕方ないタイミングで嬉々として自分にターゲットを向けたようだ。座り込み完全に諦め、救いの無い状況を妄想で楽しんでいる。手に追えない上級者これだから困る。
その囮のお陰で俺たちは脇を抜ける。一瞬でパステルを倒したドラゴンはこちらへ炎を浴びせようとする。俺はリムとティアを庇い、盾でそれを防ぐと止んだ事を確認し、そのまま走って逃げる。ネクはタリスを庇っていたようだ。盾を持った手が凄く熱い。炎の熱は盾を通じてこちらまで来ているようだ。捨てるわけにも行かないので、アイテムボックスへ放り込む。
どうやらそれでドラゴンは追って来るのを止めたようだ。俺たちはそのまま油断はせずに階段まで急ぎ向かい拠点へと帰還した。
「あーつかれたー」
拠点へ戻ってまずやった事は鎧を脱ぐ事だった。その場で全て外しアイテムボックスへと入れる。ネク以外は暑さでかなり参っている様だ。こういうときはアンデッドが羨ましい。
布の服になると風呂に入る前にパステルの確認をしにベッドまで行く。どうやら無事戻ってきたようだ。
俺たちは汗を流す為に風呂へ行く。もうそこには男女も何もなく、一緒に入る。
さっぱりしたら戦利品の確認だ。鉱石が思ったよりあるので、新しい装備を作ってくれそうな予感はある。鑑定をすると、新しい鉱石は清流石と風雷岩石と出た。火山で清流なのはさっぱり解からないが、そういうものなのだろう。それらは全てコクへ渡す。
薬品は……夜の生活が充実しそうなモノが一杯ある。是非とも有効活用させてもらおう。他には調合の素材や既存のスクロールが大量にあった。レアじゃない物もあるらしい。戦利品の整頓を終えると解散になる。スクロールは普通にDPで買える物が多かったので自動販売では売りようが無い。
俺は掲示板へドラゴンの話を書く為にパソコンへと向かった。
アイテムボックスからは鑑定しなくても胸が大きくなる薬とか考えながら取ると勝手に出てきます。
皆様方もこれから熱中症になりやすい季節なのでお気をつけ下さい。