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ゲーム上での休日



第50フロア『ブルーユナイト』。


第1フロアに比べて、面積は小さいが結構な大都市である。


俺ら3人はこのフロアで一時休むことにした。

特にこのフロアはホテルが大量に建てられていて、高級ホテルは常に満員で皆キャンセル待ちを待つのみとなっている。


すると、このフロアに興味深々だった里奈が

「あ、この・・・『ユニキス』ってゆーホテルに泊まらない?高級じゃないから私達の所持金で泊まれるし・・・」

と言った。

「そうだな。高級ホテルのキャンセル待ちを待つよりマシかもな。よし、行ってみるか?」

「そうだね。行ってみよー」

「おー‼」


5分後、その目的地である『ユニキス』に着いた。

外観からして可愛いファンシーな建物だった。

女子にとっては最適だろうが、男子にとってはどうだろうか。



「さあさあ、おにーちゃんも行くー行くー」

「は、はぁ・・・」

里奈に強引に連れてかれながら『ユニキス』へと入っていく。

まあ、中は想像どおりのピンク、ピンク、ピンクだった。


俺はその存在に飽きれてしまった。


「じゃ、おにーちゃんはこっちねー。ガールズトークに入らないでね‼」

「誰が入るかよ‼」


全く・・・


俺が恋愛に鈍いの自覚してるし・・・

ガールズトークにも一切入る気がしない。


「寝るか・・・。」

俺は重くなった体をベッドに預け、睡魔と共に寝てしまった。





「・・・」

うっすらと目を開けるとカーテンから射す朝日の光があった。

今日は、このフロアでモンスターを討伐するのだが・・・


コンコンー。

「おにーちゃん?そろそろ行くよー」

「お、おう」

里奈と那由多はもう起きていたみたいだ。

夜中遅くまでガールズトークたるものをしただろうにどうして早く起きれるのだ。うらやましい。



朝のブルーユナイトは、青みがかった水晶のように光り輝いていた。


「じゃ、行きますか。」

「うん。」


ブルーユナイトを後にした俺達は、次のフロアである第51フロア『レッド・ストーン』に着いた。

ブルーユナイトとは違い、血のように赤いダンジョンだった。


「お、おにーちゃん・・・ち、血みたいだよ・・・?」

「おもしれぇ」

「ちょっとリク⁉あんた馬鹿じゃない⁉」

「ホントだよー」



静寂ー。

「来るぞ。モンスターの気配がする」

「・・・‼」

「ひ、ひゃあああああっ‼」

「里奈ちゃん、悲鳴挙げすぎ・・・」

「だって、だってぇー・・・」


「大丈夫さ。俺がすぐに倒してやる」

「う、うん・・・」



「うおっと・・・。すまん。ムリかも」

「はぁ⁉」

「もうムリだよ・・・」

「諦めるなよ。まだまだこれからだ。」

「かっこいいコト言ってるけど、少しは状況を把握した方がいーと思うけど」

「そこは気にすんな。とにかく、早く片付けないと・・・」

「で、でもさ・・・」

「あっ‼おにーちゃん、那由多さん危ない‼」

「えっ、な・・・」

何がと言おうとした瞬間、モンスターの爪が里奈の背中に触れて、ズバッと言う音と共に里奈は倒れた。


「り・・・里奈ああああああ‼」

俺の悲鳴がフロア全体に響いた。

「里奈ちゃん‼しっかり!」

「ん・・・。ご・・・ごめんね。おにーちゃん、那由多さん。私もう生きれない・・・昌くんにも・・・さよならしてないのに・・・」

「昌くん?って誰だ?」

「里奈の・・・ゲーム上の彼氏・・・だよ」

「り・・・な?」

「ま・・・さくん?」

ふと見上げると、そこには俺よりイケメンで20代前半のような男が立っていた。

なるほど。里奈の彼氏か。


「ごめんね。ま・・・さ・・・くん。もう・・・時間がないの・・・」

「そんな‼嫌だよ。里奈。せっかく付き合えたのに・・・」

「しんぱ・・・いしな・・・いで・・・」

「里奈・・・。大好きだよ。俺は里奈が消えてもずっとそばにいるよ」

「あり・・・がと・・・昌くん。さ・・・よな・・・ら」

「・・・‼」

「そんな・・・バカな・・・里奈・・・里奈ああああああ‼」

「リク・・・」

「セーブ・・・セーブ・・・」

「まさか、ログアウトするの⁉」

「それしか・・・方法は、ないんだよっ‼」

「行ってきなよ。リク。私達待ってるから。」

「俺の分も頼むぜ」

「ああ・・・。里奈・・・。今、行くよ・・・」


ログアウトボタンを押すと、またあの日の光が俺を包んでいた。





目を開けると、見たことのある街並みが広がっていた。


俺は、パーツを取り外し走って家まで向かった。



バンッ!

俺は勢いよくドアを開けた。


「母さん‼里奈は⁉」

「それが・・・」

「・・・‼」

俺の体に恐怖の旋律を浴びさせた。


リアルに死んだ。里奈が死んだ。家族を亡くした。


里奈は、俺らを恨んでいるに違いない。

きっと、きっとそうだ。


「う・・・ああああああ‼」

俺は夜まで泣き叫び、もがきあがき、里奈を失った喪失感を忘れるコトが出来なかった。







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