番外編『第50フロア ブルーユナイト』
ここは、QPK第50フロア ブルーユナイト。
第1フロアのパーツ・リンクの間と比べ、明るく人気が多い市街地だ。
1人やってきた私、飯室里奈は現在QPKに挑戦中だ。
私は、ご存知飯室梨玖の妹である。
梨玖は、幼なじみの朝木那由多と共にダイブしてきたが、あたしは、学校内にあるパーツ・ステーションからダイブしてきた。
最初は、信じられない程立派な世界を見てしまい硬直して動けないぐらいだったが、今はもう慣れて平気である。
兄より先に第50フロアのブルーユナイトまで来てしまった私だけど、戦力は兄よりずっと上。
Lv.40になったばかりで少しゲームの様々な所で優越があって個人的に女王様になったような気分になる。
さて、私がこのフロアに何をしに来たかと言うとね。
武器を作ってもらおうと思って鍛冶屋に来たの。
このゲームは、剣で戦うコトだけでなく魔術でも戦うコトが出来る。
私は、その魔術を使う言わば魔女。
今のロッドは、ゲームの開始記念プレゼントとしてもらえるロッドなの。
だから、ここまで来たのだからいい加減新しいロッドが欲しくなる。
私は、鍛冶屋ののれんをくぐった。
店内には、かっこいい若そうな男の人がいた。
「いらっしゃい。武器を作りに来たんだよね。俺は、昌幸。よろしくね。」
「は、はい‼あ、あのこのアイテムで作ってもらおうかな・・・なんて」
「ふーん。これは・・・ハーパートか。ハート型の装備アイテムの一つだね。・・・よし‼分かった。作るよ。すぐ作るから待ってて。」
「はい‼」
楽しみだな〜昌幸さんが作る武器の完成品‼
・・・と、勝手な妄想を広げていると
「・・・はい。出来たよ。名前は、トゥルー・ハート・ロッドだね。俺の愛情入りだから、大事にしてね。」
「はい‼大事にします‼」
「・・・こんなコト聞いてスゴく悪いんだけど、今度お互いに時間があったら2人でどっか行こうか。・・・なんて、君に言うコトじゃないか。ゴメンゴメン。」
「い、いえ。行きましょう。2人で。どこかに」
「え⁉いーの⁉じゃあ、そうだな。あ、まず俺のコトを昌幸って呼んで。」
「あ、はい‼」
「それと、敬語なしね。あ、君は・・・」
「リナだよ。昌くん・・・で、いーかな⁇」
「いーよ。よろしくね。リナ」
ふいに笑みを浮かべたその時、私の口元に何かが重なった。
それは、温かく柔らかい感触と温度の二つが合成されたかのような何かだった。
「キス・・・しちゃ、ダメだったかな⁇」
「・・・‼ううん。むしろ嬉しいよ。・・・ファーストキスだったけど。」
「え‼わっ、マジごめん‼」
「いーよ。昌くんのコト、リナも好きだから。現実でも会いたいね。」
「俺も・・・リナに会いたいよ。その前にゲームをクリアしなきゃ。でも、俺にはそんな勇気ない」
「ううん。別にムリにクリアしなくていいんだよ。おにーちゃんがやってくれるよ。きっと」
「リナって、兄貴いんの⁉うわ、すぐに別れろとか言われたらどーしよ‼」
「おにーちゃんは、シスコンじゃないから‼大丈夫。ちゃんと説明する」
「そ、そっか・・・。なら安心したよ」
「ふふふ・・・」
「笑うなよ」
「だって、昌くんリアクションがマジなんだもん・・・。面白すぎだよ」
「そーかなー⁇」
鍛冶屋に来たはずなのに、なぜか恋が芽生えてしまった。
それは、大人と子供の秘密の恋。
その3年後のある日。
System アナウンスー。System アナウンスー。
見たコトがあるような、ないような赤いエフェクトを見た。
『QPK System 運営より、プレイヤーの皆さんに緊急のお知らせがございます。
QPK キューブ・パーツ・キングダム
現在時刻17:58。日時8月4日。
System上のトラブルに伴い、ゲームはクリアされました。ボス撃破プレイヤーネーム:リク。
プレイヤーの皆さんは、直ちにログアウトを始めて下さい。
繰り返します。
System上のトラブルに伴い、ゲームはクリアされました。ボス撃破プレイヤーネーム:リク。
プレイヤーの皆さんは、直ちにログアウトを始めて下さい。』
リクがやったんだ‼私の心中の願いを叶えてくれたんだ。
リクにお祝いの言葉を言わなきゃ。
ログアウト、ログアウト・・・
「リナ。お別れだな。また現実で会おうな。」
「うん。絶対だよ。」
「「さよなら、またね」」
同時にログアウトを押した時、昌くんの体を光が包んだ。
私の体も光が包んでいた。
静寂ー。
目を開けると、3年前に毎日見ていた懐かしい自分の部屋があった。
戻って来たんだね・・・
昌くん・・・会いたいよ・・・。
番外編『第50フロア ブルーユナイト』 了