First Game.
5月5日。
こどもの日ながらも、このゲームはまだ続いている。
ゲーム開始から1ヶ月経ったにも関わらず、未だにゲームは誰もクリアしていない。
まあ、そう焦ることはないが、俺は現実世界でやるべきことがたくさんあるので早くこの世界から離脱したい。
ログアウトボタンも設定されてあるが、俺は、このゲーム内で暮らしてみたい。
先日、このゲームが面白いと言った。
個人的な意見だが、俺はプレイヤー全員が面白いと言えるゲームにしてほしい。
開発者であるまいし、そんなことをつぶやいても意味がない。
その後日、那由多にこのゲーム内で暮らしたいと話した。
すると、彼女は、
「は⁇あんた、バカじゃない⁉ログアウト出来るんだからさー、何もこの仮想世界で暮らさなくても・・・」
と言った。
確かに、自分がバカだということは自覚しているが、『バカじゃない⁉』なんて言われても何も返答出来ない。
っと、アホな会話を漏らしていると後ろから少女が俺のシャツをつまんで引っ張ってきた。
「おにーちゃん・・・だよね?」
ふと、俺を『おにーちゃん』と呼ぶ少女は、小柄な体をしていた。
「あ、やっぱそうだった〜。里奈だよー。」
里奈と名乗ったその少女は・・・
ん?待てよ⁇里奈⁇
「おまえ、飯室里奈か⁉」
「そーだよ‼おにーちゃん。おにーちゃんもMy エンジェル飯室里奈だよー」
My エンジェルって・・・何が言いたいんだ。
「あ、里奈ちゃん。お久。」
「あ、那由多さん。久しぶり。」
「もしかして、里奈ちゃんも巻き込まれた⁇」
「ううん。そーじゃなくて、おにーちゃんより先にパーツステーションからログインしてたんだけど・・・。さっきまでおにーちゃんを探してたの。やっと見つけたよー」
そうだったのか。
え⁇俺より先にダイブしてた⁇
まさか、そんなわけ・・・
「学校から皆ダイブしてきたの。クラスの子とか皆」
里奈の学校にステーションがある・・・なんともうらやましい環境だ。
俺の家の周りには、ステーションが一台もなく田舎のような感じだから、うらやましい。
「じゃ、那由多さんもおにーちゃんもこれから一緒に攻略しよ。」
「そうね。まずは・・・」
「このフロアがいいんじゃないか⁇えっと・・・ガルガンディ・スケアロウだって。」
「第2フロアね。すぐ近くだね。」
「里奈の武器はねー、これ‼妖精剣グラビティ・フルール」
「へー、かわいい剣だねー」
「えへへ・・・」
「俺は、このマニラソードだな。」
「マニラって名前ちょっと不気味かも。」
「そうかー⁇」
「あたしは、このキャメル・ロッドね。魔法系使うから。」
「魔法使えるんだー‼例えば⁇」
「例えば、ファイラとか、シャイニングヒールとかね。」
「へー‼強そう〜」
「そんなことないよ。里奈ちゃんの妖精剣の方が強そうだよ。」
「そうかな〜・・・てへへ」
里奈の顔が赤面した。
多分、自分の武器で褒められるというのは、初めてなんだろう。
「じゃ、攻略行きますか。」
「はい。」
「おう。」
互いに返事をし、俺らは、第2フロア《ガルガンディ・スケアロウ》へと向かった。
このゲームをクリアするには、当分かかりそうだ。