【序章】
────終演の円舞曲は響く
紅く染まる血の輪廻を
少年はただ歩き続けた
その足取りは衰えること無く
また急ぐことを知らなかった
永き記憶が劣化する
もう自らを取り留めておく事すら難しい
進むことを躊躇していた
剰りにも永い時を生き過ぎたのだ
ただ屍を足掛かりにして進む
それが嘗ての友であろうが 進まなければならなかった
人間は
嘗ては“人だった“彼をこう呼んだ
【覇王】───“牙狼“と
「貴方は何処にいるのですか……我が主」
咎狗達は吼える
その運命に抗う為に─────
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ここは、【ヴァルキュリア】と呼ばれる異端能力者達が存在する世界。永きに渡り続けられた軍治戦争が終わると同時に急激な発展を遂げた街、“ラストエンド“。
多大な財産───つまり利益を得るに通じたのは、都市を治める軍治権が政府すら手を焼く暴徒、革命軍【クァイア】から栄光時代の英雄と讃えられた守衛軍【ガーディアン】に移ったことだろう。
しかし急激な発展は世界───否、人類への多大なダメージとなっていた。その最大の原因は、都市に【神核】と呼ばれる巨大なエネルギー塔の開発から始まったとされている。神核はさまよえる霊魂、つまり嘗ては“生きていた物“を世界供給のエネルギーとしているのだ。神核の中心となるエネルギー核を覆う球壁と呼ばれる賢者たちの力で生成された魔力の壁は、生を得ながらも触れた物を討ち滅ぼすという。絶えず魂を吸収し続ける神核は、まるで世界の全てを食い尽くそうとする獣にも見えた。街の中心に高く聳え立つエネルギーの核は、まるで生者を餌と見るように見下していた。
それは心を無くした“狼“と
記憶を無くした“青年“の
それぞれ無くしたものを取り戻す為の
紅く染まった魂の物語──────