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思い出しましたので。結末にむけて突き進もうと思います

作者: 春待瑞花

「エミリー、ごめんね……」

 ママは泣きながら、私をぎゅうっと強く抱きしめる。

 どのくらいそうしていただろう……

「…… ママは、もうすぐ死んじゃうの。

 だから、あなたはこれからここで暮らすのよ。

 …… 幸せになってね。ママの事は忘れていいから」

 抱きしめていた腕を解いて私をじっと見つめる。

 ママはもう泣いていなかった。

「ごめんね。ママが見えなくなったら、このチャイムを鳴らすのよ。出来るわね?」

 こくんと頷いた。

 ママは頭を撫でて、振り返らずに走って行ってしまった。追いかけたいし泣きたいけど、ママの言う通りにしなければと、その場を動かなかった。

 ママの姿が見えなくなった。

 チャイムを鳴らそうと思ったけれど、ママがいない寂しさが涙と一緒に溢れ出て、大泣きするしか出来なかった。大声で泣いた。息が苦しくなるくらい泣いた。

 ドアから誰かが飛び出してきた。

 その人が私に触れた。苦しくて鼻も耳も頭も痛くて。目の前が真っ暗になった。



 目を覚ました。その時には、前世の記憶がもたらされていた。エミリーはまだ6歳であったが、前世日本人であった15歳までの記憶が脳内にあった。6歳までのママと暮らした記憶ももちろんあったので、前世の記憶から異世界転生をしたのだと思った。

 エミリーは、ママと二人暮らしだった。父には会った事がない。ママは食堂で働きながら私を育てていた。そして食堂近くの小さなアパートで暮らしていたが、食堂で余った食材を使ってママが料理したり、夜は残った料理を持ってくるため、貧しくはなかった。

 一ヶ月前からママは時々熱を出し、動くのが辛そうな様子だった。食堂のおばさんから病院に行く事をすすめられ、一昨日ママは病院に行った。

 帰ってきたママは、泣きたいような困ったような苦しいような顔をして私を抱きしめた。

 そして、ママは昨日家中の荷物をまとめた。もともと最低限の物しかなかったから、あっという間に片付いた。

「どこかに行くの?違う家?」

 と聞いた私に

「うん。ここは出ていくの。小さな子がたくさんいる大きなお家で暮らすのよ」

 とママは言った。ママは、小さなテーブルで手紙を書いた。食堂からもらってきたバケットとフルーツを食べてママは私を抱きしめながら眠った。

 朝も残っていたパンとフルーツを食べてママは大きなカバンを1つ持って家を出た。

 そして、孤児院の前でママは大きなカバンと私を残して去って行った。



 前世の記憶がもたらされた私は、ママがもうすぐ死ぬためこの孤児院に私を置き去りにした事を理解した。

 家を出たときに大家さんに家にあるものの処分をお願いしていたから、ママはあの家に戻らないだろう。どこで死ぬのだろうか。お金がないから治療は受けれない。頼れる身寄りもいないはず。祖父母や兄妹の話しを聞いた事がないし、母の生い立ちや、私の実父に繋がる話しは一切聞いた事がなかった。

 自殺したのだろうか……この町で苦しまずに死ぬなら、森の奥にある崖から飛び降りる事が一番に浮かぶ。森の奥には大きな川があり、森は小高い山となっているため崖から落ちれば即死か、川に流されて溺死する。

 きっとママはもう見つからないだろう。

 ママと最期まで一緒にいられなかったのはどうしようもなく悲しいが、6歳の子供に看取りは出来ない。孤児院に託す事が最善とのママの判断は正しい。



 ノックとともに優しそうな女の人が入ってきた。

「エミリーさん、具合はどうかしら?今少しお話し出来る?」

「はい。だいじょうぶです」

「良かった。あなたの荷物をみさせてもらったの。あなたのお母様からのお手紙があったわ。お母様は病気であなたを育てられなくなったから、これからここで暮らして欲しいって。お母様の行方はわからないの。エミリーさんは、これからここで他の子と一緒に暮らしましょう」

「はい。わかりました」

「……お母様がいなくてとても寂しいと思うけれど、しっかり食べて寝て、元気に過ごしましょうね。私はここの院長のメアリーよ。聞きたい事があれば遠慮なく聞いてね」

「はい。よろしくお願いします」

 小さく頭を下げた私に、院長先生は驚きつつも、穏やかに微笑んだ。

「では、これから昼食なのだけれど、食べれそうかしら?みんなと一緒がイヤならここで食べてもいいのよ。ここは、医務室といって熱が出た子が寝る部屋なの。今はみんな元気だから、しばらくはここで過ごしていいわ。あなたがここで暮らすお部屋は二人部屋で9歳のお姉ちゃんがあなたと同じ部屋となるわ。どうする?ここがいい?お部屋に行く?」

「ここがいいです……」

「わかったわ。隣は他の先生方がいるお部屋だから、何かあればいつでも来てね。ご飯が出来たら、ここに持ってくるわね。あと、何か聞きたい事はない?」

「ないです。これからよろしくお願いします…」

 また小さく頭を下げた私の頭をそっと撫でて、院長先生は部屋を出て行った。



 ……ママともう会えないのか…… 辛いなぁ…… 6歳までの私はママからたくさんの愛情を受けて幸せだったけれど、ママは幸せな人生だったのかなぁ…… ママは何歳なんだろう。私の誕生日はいつも祝ってくれたけど、ママの誕生日をお祝いした事はない。何歳で私を産んだのかも知らないし、ママの事、ほんとに何にも知らない。自殺しちゃったのかな…… 荷物持ってなかったし、きっとそうだよね……

 こんな小さな子を残して死ぬなんて、相当辛いだろうなぁ。せめて苦しまずに天国へいけてますように……

 私は、ここにいる子達と一緒に孤児として暮らしていくしかないか。ここは、伯爵領にあるだけあってちゃんとした孤児院みたいだし、仕事に就くまではお世話になっても大丈夫そうだし。

 6歳のエミリーらしく生きるのは大変だけれど、なるべく話さないで幼児らしく振舞うしかないかなぁ。

 でもなんで、前世の記憶甦っちゃったんだろう……

 記憶があったところで、この世界でどうこうする力も気力もない。前世の私はずっと病人で特別な知識とか能力とか何にもなかったわけで……

 まあ、ママの死を受け止めることは出来たか……

 エミリーが受けたショックが思い出すきっかけとなったのかな。6歳の子の心と脳じゃ受け止めきれなかったのかもね……

 なんにせよ、ママの分まで頑張って生きなくちゃだなぁ……


 翌日から、エミリーはママに捨てられたショックで寡黙になってしまったとばかりに、必要最低限の事以外話さず、大人しく本を読んで過ごす子供として日々を過ごした。孤児院にはいろいろな子がいたため、奇異な目でみられたり仲間はずれにされたりする事はなかった。大人しい幼児、子供として成長した。


 14歳になると、仕事に就いて孤児院を出ていく子と奨学金で寮に入って学院に通う子に分かれた。

 もちろんエミリーは奨学金をもらって学院に通う事となった。本ばかり読んでいたエミリーだから賢いのも当然と周りも納得していた。



 学院は、貴族棟と平民棟に分かれていたが、生徒会はそれぞれ半数ずつで結成されており、生徒会室は貴族棟にあった。

 貴族の生徒会役員は、選ばれた高位貴族の一人とその派閥に属する者の6名で構成され、選ばれる高位貴族は3年周期で持ち回りとなる。

 平民の役員は、各学年の成績上位者2名ずつとなる。エミリーは、首席で入学したため自動的に生徒会役員となった。生徒会役員は月に一度集まり、行事の詳細や学院のルールについて話し合う。


「カフェテリアですが、各棟にある2つ以外に、新たにどちらの生徒も利用可能な、料金メニューともにちょうど中間となるような内容の物を提供する場所を作るのはいかがでしょうか?貴族棟と平民棟の間にある温室を改築すれば可能な気がします。行事の際にもう少しお互い歩み寄れるよう、カフェテリアでお互いの面識を促す事が目的です。平民は分を弁えていますから、貴族の方々に無礼を働く事はおそらくしないと思いますので、そのような場があってもいいと思うのです」

 エミリーは臆さずに発言した。

「たしかに…

 行事は同じ日に行い、お互いの棟の行き来は自由となっているが、お互いに遠慮して殆ど動く者はいない。学院の間に偏らず見聞を拡げるようにと、行事で双方の交流を持つよう昔から言われているのに実現はされていない現状だ。カフェテリアの案は通していいかもな」

 二学年のカイウス公爵家のロイドが頷く。昨年から貴族棟の生徒会はカイウス家の派閥で構成されている。

「理事が承認すれば、執行部が各々動いてくれるので、完成に時間はかからないかと。この案を理事に提出する方向でよろしいですか?」

 三学年のフロックス侯爵家のギルバートが全員を見回す。

 全員が頷いた事を確認し、エミリーは意見書を記載した。

 記載内容をロイドが確認し、

「今日はこれで終了としよう。ギルバートは意見書を理事に提出してくれ。次回は一ヶ月後。文化祭についての話し合いとなる。以上だ」

 全員が席を立った。

「ロイド様、この後人気のパティスリーに行きませんか?ロイド様のお好きなチーズケーキが絶品らしいんですの」

 二学年のモンゴメリー侯爵家のカーラがロイドに話しかけた。

「せっかくだが、予定がある。他の者を誘ってくれ。ではな」

「わかりました…」

 カーラが目に見えてガッカリした。そんなカーラを尻目に他の者も退出する。カーラは他の者に声をかける事はしない。カーラがロイドと懇意になりたいと思っている事は明白だった。

 学院に侍女や侍従はいないため生徒会室のお茶を用意するのは平民の一番下の学年の役目だった。貴族棟のカフェテリアから茶器と茶菓子の乗ったワゴンを受け取りテーブルにセッティングし、終了後はテーブルの上を片付けてワゴンに乗せてカフェテリアまで返しに行くのだ。テーブルの茶器を片付けていると

「ねぇ、ロイド様は他に気になる方がいるのかしら?私の誘いを受けてくれた事は一度もないのよ。エミリーはどう思う?」

 カーラが腕を組んで聞いてきた。

「申し訳ございません。平民棟には貴族棟の噂は全く入って来ないので……わかりません」

「まあ、平民に聞いてもわからないわよね。でもそんな噂は全然ないのよ。まあいいわ。地位も容姿も能力も私に劣る要素はないはずだわ。せっかく同じ役員になれたのですもの。他の子より優位にいるはずなのよ。諦めないわ。……じゃ、片付けよろしくね」

 と、カーラも颯爽と退出した。

「ダミアン、大丈夫よ。後はやっておくわ」

「そう?じゃ、お願いするかな。

 でもさ、ここだけの話。明らかにロイド様はカーラ様の事避けてるよね。他に気になる人がいるのかはわからないけど、カーラ様ではない事は確かだな。カーラ様は諦めないみたいだけど。でも、貴族は政略結婚が普通だから、二人が婚約する事もあるのかな。平民で良かったと思うよ。やっぱり好きな人と結婚したいし。エミリーはどう思う?」

「そうですね…… 私も平民ですから、貴族の婚約や結婚についてはわかりませんけど、結婚は好きな方としたいと思いますわ」

「だよな。エミリーは今好きな人いるの?」

「今ですか?いませんね」

「そう。よかった。んじゃ、申し訳ないけど、後はよろしくね」

 笑顔で手を振ってダミアンが退出した。


(…… 良かった?…… まあ、いいか……

 …… 今日のお菓子も美味しかったなぁ。残ったのまたくれるかな?持って帰れたら寮のみんな、また喜ぶだろうな)

 と、お菓子の事を考えてダミアンの発言についてはすぐに忘れたのだった。


 次の生徒会の集まりでも、エミリーは積極的に発言した。前世の知識を使い、文化祭が画期的なものになるよう、それまでにないコンテストやステージ発表、模擬店の設置などを提案した。

 エミリーの提案をもとに、治安上問題ないか、衛生面での問題は?など役員間で議論を重ねる。

 ある程度まとまったところで、理事の許可が降り次第各クラスに通達し、クラス代表に任せていく方向となった。

「エミリーは、よくいろいろと思いつくな。そのアイデアはどこから来るんだ?」

「図書館で、他国の文化をたくさん調べたのです。そこからヒントをいただいています」

「勉強熱心だな。将来は外交官になりたいのか?」

「まだ決めていないのですが、中枢部のどこかに所属出来ればと思っております」

「エミリーの成績ならどこでも採用されるんじゃないかな?僕も頑張らないと」

「ヘンリー様とギルバート様は、卒業後の進路は決まっているのですか?」

「私は、外務部に希望を出す予定だよ」

「私もそのうち侯爵家を継ぐ予定だが、それまでは軍務部に所属しようと思っている。カイルとクロードは決まっているのか?」

 ギルバート様が平民棟最高学年の二人に尋ねた。

「私は法務部に所属願いを出す予定です」

「私は外務部に所属出来れば…と考えております」

「そうか。卒業後も王宮で顔を合わせることもありそうだな。これからもよろしく」

「こちらこそです!」

「今後とも、どうぞよろしくお願いいたします」

 三学年の4人がそれぞれ微笑み合った。

 貴族棟の生徒会役員は、二学年がロイドとカーラ。一学年には伯爵家のアーサー、子爵家のモーガンといずれも子息だ。

 平民棟も三学年はカイル、クロード、二学年はライト、ポール、一学年はエミリーとダミアンであり、女性はカーラとエミリーのみであった。

 その日の後片付けもエミリーが行った。ダミアンが申し出てくれたが、残ったお茶菓子をカフェの店員が包んでくれるから、それを寮のみんなで食べたいので大丈夫と断った。貴族棟のカフェテリアで作るお菓子は絶品で、エミリーが持ち帰る菓子を同僚の子達は楽しみにしているのだ。


 みんなが退室した部屋で一人、茶器を割らないよう慎重に片付けていると、

「いつも片付けさせてすまない。ありがとう」

 とロイドが言いながら部屋に入ってきた。

「お礼なんて、もったいないお言葉です。私の役割ですからお気になさらず。お忘れ物ですか?」

「ああ。文化祭の予算配分をもう一度見直そうと思ってな。明日には提出したいから」

「それでしたら私が行います。明日の朝にロイド様の教室までお届けすればよろしいですか?」

「貴族棟に足を運ぶのは面倒だろう?この後の予定がないのであれば、ここで一緒にやってくれないか?」

「私は全く構わないのですが、ロイド様はお忙しいのではありませんか?」

「いや、大丈夫だ。二年生は意外と時間に余裕があるんだよ」

 と微笑む。

「では、よろしくお願いいたします」


(ロイド様って…… 完全にスパダリだよねぇ……

 この容姿でこの性格。完璧すぎて逆に恐いわぁ… )


 二人で予算配分について議論を交わしながら書類を完成させた。

「助かったよ。エミリーの見解は俺だけでは見逃す部分が多い。これなら理事もすぐに承認するだろう。さすが首席だな」

「ありがとうございます。平民で低学年である私の意見を快く受け入れてくださるロイド様なので、臆する事なく意見が出来るのです。ロイド様と同じ代の生徒会で良かったと思っております」

 俯きながら感謝の気持ちを伝えた。

 顔を上げると、

「俺も君が同じ生徒会役員で本当に良かったと思っているよ。

 ……よければ今度の休日にカフェにお茶しに行かないか?君は菓子が好きだろう?個室でゆっくり好きなだけ食べれるところに案内するよ」

 と微笑む。

「え?!  わ、私とですか?!」

「ああ、生徒会役員の中で誰よりも頑張ってくれてる君にお礼がしたい」

「た、大変ありがたい、お、お誘いで……

 大変嬉しいです。ぜひお受けさせてくださいっ!」

「ああ、では昼すぎに寮の前に迎えに行くよ」

 美しい微笑みとともに優しく言葉が紡がれた。

「よ、よろしくお願いします……」

 ふわふわとした気持ちで、退出していくロイド様を見送った。

(うわぁ〜、マジで?!こんな事ある?!

 相手公爵令息だよ?!平民とデートなんか普通しないでしょ?ありえないでしょ?

 こんなの前世で読んだ異世界恋愛ものの中でしかありえないでしょ!!)


 ※※※※※※※※※※※


 そして、二人は次の休日にデートし、その後もデートを繰り返した。

 お互いの気持ちを確かめ合ったが、公爵令息と平民だ。婚約出来ない。ロイドの両親からカーラと婚約するように言われ、カーラがロイドの婚約者となってしまった。

 だが二人の気持ちが変わる事はなかった。ロイドはエミリーと婚約し直すべく奔走し、派閥の中で令嬢がいない伯爵家にエミリーを養子とするよう願い出た。優しい伯爵家の当主と夫人は快く受け入れ、エミリーはネルソン伯爵家の令嬢となった。その時には二人とも学年が上がってロイドの卒業が間近であったため婚約破棄と再婚約はギリギリ叶ったのだった。

 こうして、紆余曲折ありながらもロイドとエミリーは幸せな婚姻を結べたのだった。


(まあ、こうなる事は当然なのよね。

 だって、思い出したから。

 私がTLコミックのヒロインのエミリーだって事を)


 ※※※※※※※※※※



 ロイド様に初デートに誘われたあの時に、私は思い出したのだった。

 前世で読んだコミックの内容と今の私の現実が全く同じであるということを。

 そのコミックの内容はこうだった。

 孤児院出身のエミリーは、生徒会で仲良くなったロイドと恋仲になる。だが、政略でロイドはカーラと婚約してしまう。ロイドは婚約を仕方なく受け入れるも、エミリーを貴族の養子とすることを画策し、それが成されるとカーラとの婚約を破棄してエミリーと婚約し直し、ヒロインであるエミリーはスパダリな旦那様に愛されまくるという話で、TLなだけあって、婚姻後のラブラブな描写がメインの内容だった。

 婚約するまでは、カーラに虐められたり、エミリーの出生を調べると実はカーラと異母妹であった事実がわかったりと、結構ドロドロな話しがあるのだが、あくまでもラブな部分がメインのため、断罪劇はなく婚約解消と再婚約がスムーズにすすんだ。


 ――――――


 異世界転生は受け入れたけど…… コミックの世界だとは…… さすがにすんなりとは受け入れられないって…… しかも、私の父は侯爵家当主で、カーラを妊娠中に侯爵夫人の侍女に手を出して、産まれてきたのが私。母は貧乏男爵家の次女で、妊娠に気づいたけれど、侯爵夫人の性格を知る母は母子共に侯爵夫人に殺される事を恐れて逃げたと。で、身分を平民と偽って私を育てた。で、私の想像通り私を孤児院に預けて自殺したと……

 はぁぁぁ〜…… 物語として読む読者としてはまあ、ありがちだよねぇで流すけど…… 母に愛され母を愛した私としては、苦々しい思いが膨らむだけだ。 侯爵家の力があれば母を見つけて保護して第二夫人としての地位を与えれば、正妻が殺そうとする事も防げるだろうに、それをしなかったって事は、侯爵家当主は母を愛していずただの遊びだったって事になる。胸糞悪すぎ…… そんな父親だったって知りたくなかった。はぁ…… ほんと、なんで思い出したかなぁ〜 思い出したくなかったわぁ……


 さて。これから、どうするか…


 エミリーは母そっくりだった。そう。侯爵家当主がつい手を出してしまう美しい母に。

 才女で美女で健気な私はモテてたらしい。ロイドはもちろん、生徒会の他の役員や、クラスメイト達など多くの異性が好意を寄せていた。


 このままの流れだと…コミック通りになるよねぇ。

 う〜ん、平民から公爵夫人かぁ……

 貴族の血が入ってる事実が明るみになるし、養子になるから蔑まれる事はないだろうし、この知識があれば貴族夫人としての教育も難なく吸収出来ちゃうのは確か。……シンデレラになっちゃうかなぁ〜。

 カーラや正妻が悔しがるから、それで復讐出来ると言えば出来るような気もするし。一番の元凶である侯爵家当主になんのお咎めがないのが納得出来ない部分ではあるけど……

 同じ派閥だし、私がロイド様に失墜をお願いしたら叶えてくれそうではあるのよね。カーラも巻き込まれちゃうけど、この後私に嫌がらせする事を考えたらその報いとも言えなくはないよね。


 まあ、普通に裕福な平民であるダミアンとかと恋仲になって、平民として幸せになる道もありそうなんだけど。

 コミック通りに進むのが、はたして正解なのか……

 もう、なんでこんな悩まなきゃならないの〜っ!

 ただちょっと素敵なロイド様とデート出来るだけで満足だったのに〜!

 その先なんて望んでなかったよー!


 でも、思い出さなかったら普通に仲が進展していくんだよねぇ……どうする??  覚悟決める??

 あのスパダリのロイド様を本物のダーリンにしちゃう??でも私、ボロ出さずに愛される事が可能なのか?? もう純粋で無垢なエミリーじゃないぞ??


 いや、でも6歳で前世を思い出してた時点で純粋無垢じゃないな……

 なんか考えるの疲れてきた……


 もう、いいや。

 ひとまずスパダリのロイド様とのデートを楽しも……

 

 ――――――



 が、デート前の私の心情である。

 で、結局コミック通りロイド様に恋をしたのでそのまま突き進んだ結果、コミック通りハッピーエンドとなった訳である。

 結末は知ってたけど、その通りになるとの確信はなかったよ。コミック内のエミリーと私は違うとの思いは常にあったしね。

 だけど…… スパダリのロイド様の愛を受け入れない人なんている?! いないでしょ?! あんな極上の異性に好かれたら舞い上がるし、受け入れ一択でしょ?!


 ……と、いう事で、これからTLコミックよろしく、ロイド様とのラブラブLIFEを楽しもうと思います。

 あ、大事なやるべき事をまずやらないと!実父の失脚についてロイド様に相談しないと!

 愛する天国のママ、復讐を画策する娘を応援してね!!





お読みいただきありがとうございます!


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何卒よろしくお願いいたします!(*´ω`*)

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― 新着の感想 ―
現実をしっかり見据えて喪失感と復讐心を持ちながらも努力し続けた結果ですわね。 侯爵家が没落する呪いをかけておきますわ、間違いなく幸せになってー。
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