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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第六章 理のその向こうへ

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第57話「涙と決意、繭を守る戦い」

 ――その頃、ダンジョン内。


 繭となったヴァルトを護るように、リルベアは広範囲魔法を連発しながら魔物どもを蹴散らしていた。

 

 魔法が発動するたびに数百体が霧散する。

 だが、それでも群れは押し寄せ続ける。まるで尽きぬ黒き波のごとく。


 さらに悪食の触手が、容赦なく襲いかかってくる。

 腐臭と粘液を纏い、地を穿ちながら迫る猛攻。


 リルベアは寸前でかわし、巨大な魔槍を叩き込む。だが――。


 流石に数が多すぎる……!


 絶え間ない攻撃の連続に、次第に呼吸が荒くなる。疲労で反応が遅れた刹那、触手の一本が音を裂いて迫った。


「しまッ――!」


 リルベアの瞳が見開かれる。少しの油断だった。

 間に合わない。貫かれる――そう思った瞬間。


 後方から二つの魔力反応が爆ぜた。


氷穿槍乱舞アイシクル・ランページ!」

疾風裂斬陣(テンペスト・レイザー)!」


 氷槍と風刃が同時に放たれ、触手ごと魔物の群れを薙ぎ払った。


 粉砕音と絶叫が響き渡り、リルベアの視界が一気に開ける。


「遅くなりました、リルベア様」

「ただいま戻りましたぞ!」


 振り返れば、戦線離脱していたレイラとゼトスの姿があった。


「っかか! よく戻った! おかげで助けられたわ!」

 

 リルベアは声を弾ませ、体勢を整える。


 その傍らで、レイラの視線が美月の横たわる姿を捕らえた。

 僅かな一瞥――だが、全てを察したように瞳が揺れる。


「美月……。こんなところで眠っている場合じゃないでしょう……私たちの決着は、まだ――」


 悔しさと悲しさが入り混じった声。振り返らずとも、震える声の奥に涙が滲んでいるのは明らかだった。


「まだ戦いは終わっとらんぞ。ヴァルトが戻ってくるまで、持ちこたえるのじゃ!」


 リルベアの叱咤に、二人は強く頷いた。


「リルベア様、もしかして……あの繭は主なのですか?」

 

「うむ。悪食を倒すつもりなのじゃろう。――ランクアップの儀に入った」


 驚愕と不安がレイラとゼトスの顔に走る。


「無事帰ってこれるといいのですが……」


 不安そうにゼトスが呟く。

  

 ……正直、厳しいところじゃろうな。

 核を共有しているからこそ、分かる。

 

 繭の向こうでヴァルトが味わっている痛みが、こちらにも伝わってくる。


 ヴァルトが感じている痛みのほんの一部でこれじゃ。

 わらわがヴァルト側なら、とっくに卒倒しておろう。

 

 繋がりが切れないということは、意識が飛ぶことなく耐え続けておるということ……。

 まったく、あやつもとんだバケモンじゃ。

 

 絶え間なく続くこの痛み……一体むこうで何が起こっておるんじゃ……。


「よいか、おぬしら! 絶対に奴らを近づけてはならん。そして悪食の攻撃は絶対に喰らうな! わらわ達の誰かが吸収されたら、そこで終わりじゃ!」


 厳しい声に、二人は息を揃えて頷く。


「……わかりました。悪食の攻撃に警戒しつつ、魔物達を先に倒して、成長させないようにすればいいんですね」

 

「ならば一つ、派手にいきましょうぞッ!」


 二人が同時詠唱を唱えると、轟音と共に巨大な竜巻が巻き起こり、雷と氷の礫を降らせながら魔物の軍勢を蹂躙した。


 無数の魔物が引き裂かれ、宙を舞う。


「こりゃまた、派手な魔法をぶっ放したの。くくっ、面白いではないか!」


 それでも、まだ終わらない。


 数十万もの有象無象。増え続ける魔物と成長を続ける悪食。

 押し返すどころか、均衡を保つだけで手一杯。


 大きな戦力が増えたとはいえ、あと何分、持ちこたえることが出来るかの……。


 不安と焦りを感じながらもそれでもリルベアは笑う。


 ヴァルトよ、気張るのじゃ。皆、お主と共に戦っておる。

 

 ――負けるでないぞ……!

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