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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第五章 自由と欲望の戦い

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第51話「渾身の一撃、ゼロ距離の閃光」

 重苦しい沈黙が、ほんの一瞬だけフロアを満たした。

 黒い靄が渦を巻き、地面から立ち上る魔力が次の攻撃の予兆を告げている。


 ヴァルトは剣を握りしめると、美月とリルベアの肩に手を置き、低く囁いた。


「……作戦はこうだ」


 二人の瞳が大きく見開かれる。


「なるほど……!」


 美月が思わず声を漏らし、リルベアは一拍遅れて口元に笑みを浮かべた。


「ふん……本当に一か八かじゃな。失敗は許されんぞ」


「ああ、分かってる。この作戦は美月が鍵だ。頼めるか?」


 ヴァルトの問いに、美月は震える手を強く握り直し、力強く頷いた。


「確実に決めます!」


 剣が光を帯び、三人は再び構え直した。

 その瞬間、クゼスの背後で黒翼が大きく広がる。


「何を考えているのか知りませんが――無駄ですよ」


 狂気じみた笑みと共に、クゼスの魔力が一気に膨張する。

 地面がひび割れ、フロア全体が震える。


「これで終わりですっ!」


 咆哮と共に、魔力の奔流が形を取り始める。

 黒い靄が絡み合い、無数の大蛇へと姿を変えた。


 次の瞬間、闇色の大蛇が一斉に牙を剥き、フロア全体を覆い尽くす。

 そのうねりは、逃げ場など存在しないと言わんばかりだった。


「来るぞッ!」


 ヴァルトが叫び、全員が一斉に跳躍する――だが、その瞬間だった。


 ピン、と指を弾く乾いた音が響く。


 青黒い閃光が空間を裂き、奔る稲妻のように大蛇の群れを薙ぎ払った。

 轟音と共に光が弾け、フロア全体が青白く照らし出される。


「っ……!?」


 クゼスが一瞬驚愕に目を見開く。

 しかし、すぐに表情を歪め、反撃の魔法を発動した。


「危ない危ない……魔族でありながら、あなたのその技は聖属性を含んでますからねぇ」


 不気味に笑いながら、クゼスは剣を振り抜いて閃光を相殺する。

 視線の先には、魔力の残滓を纏うリルベアが立っていた。


「かかっ! 余所見をしていてよいのか、クゼスよ!」


 リルベアが挑発するように笑った瞬間、クゼスの背後に光が走った。


 ――美月だ。


 勇者の剣が輝き、一直線に振り抜かれる。


「光刃――一閃ッ!!」


 咄嗟に避けたクゼスだったが、間に合わず右腕が消し飛んだ。


「ぎィィィィッ!!」


 怒号がフロア全体に響き渡る。黒い血が床を焼き、焦げた匂いが立ちこめた。


「キィサマァアアアアッ!!」


 怒りの咆哮が天井を震わせる。

 その瞬間――。


「隙を見せたな?」


 美月の影からヴァルトが飛び出した。

 足音すら響かないほどの速度で、一直線にクゼスの懐へ踏み込む。


「なっ――!?」


 驚愕に目を見開くクゼス。

 しかし、もう遅い。


 ヴァルトの剣が一直線に突き出され、クゼスの胸を深々と貫いた。


「流石のお前も、これだけ喰らった後じゃ防げねぇだろ」


 低く呟き、剣をさらに押し込む。


「防げるもんなら防いでみろよ……俺のゼロ距離攻撃を」


 次の瞬間、剣身から青黒い閃光が爆ぜた。

 フロア全体を照らす光と共に、衝撃波が四方へ走る。


 クゼスの身体が大きく仰け反り、黒い翼が暴れ狂った。


「ぐ、ぅ……ああああああああッ!!!」


 怒号とも絶叫ともつかない声が響き、フロアが崩れるかのように震えた。

 黒い血が飛び散り、床に赤黒い染みが広がる。


 ヴァルトは剣を引き抜き、クゼスを蹴り飛ばす。


「効くだろ? リアと同じ技だからな」


 よろめきながらも立ち上がるクゼス。

 その双眸には怒りと憎悪、そして狂気が渦巻いていた。


 次の瞬間、フロア全体が再び闇に包まれる――。

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