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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第五章 自由と欲望の戦い

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第49話「黒翼の咆哮、第二形態への序曲」

 血の匂いが残るフロアに、クゼスの狂気じみた笑い声が響き渡る。


「……あの小僧は死にましたか。惜しい駒でしたねぇ……しかし、どうでもいい。リルベア、あなたがここにいる――それだけで、私は満たされる」


 狂気と陶酔が混じった瞳。

 その視線に、リルベアが冷たく鼻で笑った。


「満たされる? 笑わせるな。わらわはお主の所有物ではないぞ、クゼス」


 挑発するように言い放ち、白銀の髪を払う。

 その言葉にクゼスの表情が一変する。怒りと興奮がないまぜになった声が響く。


「……なら、目を覚まさせてあげますよ。あなたが私の傍に立つのが当然だった、あの日々を――思い出させてあげましょう」


 クゼスの剣が黒い光を帯び、空気が歪んだ。

 ヴァルトはその殺気を正面から受け止め、剣を構え直す。


「行くぞ。全員で叩き潰す!」


 短い言葉で合図すると、美月が頷き、光の剣を構える。ゼトスが巨体を低くし、リルベアが魔力を練り上げた。


 同時に踏み込む。


 金属音と衝撃波が重なり、フロアが爆ぜる。

 美月の光刃が閃き、リルベアの風刃が唸り、ゼトスの牙が火花を散らす。


 しかし、クゼスは一歩も退かない。

 むしろ楽しそうに、三人の攻撃を受け流していく。


「ふふっ……いいですね。いい! もっと、もっと私を楽しませてください!」


 剣が黒く伸び、床を抉る。

 ゼトスが横から飛びかかり、氷牙を喰らいつかせようとした瞬間――。


「ガハッ!」


 クゼスの蹴りがゼトスの脇腹にめり込む。巨体が宙を舞い、結界の壁に叩きつけられた。


「ゼトス!」


 駆け寄ると、彼の銀灰の毛並みが赤く濡れていた。息も荒く、足元に血溜まりが広がる。


「……まだ、戦えます……!」


「いや、下がれ! それ以上は死ぬぞ! コアルームに戻って体勢を立て直せ!」


 ゼトスは悔しそうに唸るが、ヴァルトの目を見て頷き、後方へと転移していった。

 残った三人だけが、クゼスと対峙する。


「一体減りましたね~。三人だけで私に勝てますかね? くふふ」


 クゼスがゆっくりと笑い、剣を構え直す。

 ヴァルトと美月が左右から挟み込み、リルベアが雷撃で援護する。


 剣と剣がぶつかるたび、骨まで震えるような衝撃。

 美月の剣が閃光を描き、クゼスの頬をかすめた。


「ほう……」


 黒い血が一筋、床に落ちる。

 クゼスは舌でそれを舐め、恍惚とした笑みを浮かべた。


「いい……とても、いい……! あなた方、本当に私を倒すつもりなのですね」


「当たり前だ! お前はここで確実に潰す!」

 

 ヴァルトが吠える。


 攻撃が激しさを増し、ついにクゼスが壁際まで追い込まれた。

 黒い魔力が渦を巻き、足元からヒビが走る。


「もう十分です。これ以上、あなた方の好きにはさせません」


 低い声が響くと、フロア全体の魔力が一気に吸い込まれる。

 空気が重く、呼吸すら難しくなる。


「下がれ!」

 

 ヴァルトが叫ぶと同時に、三人は距離を取った。


 クゼスの背から四つの黒い翼が生え、額から角が伸びる。

 肉体が異形へと変じ、爪が刃のように長く伸びた。


 禍々しい魔力が爆ぜ、フロア全体が黒い靄に包まれる。


「これが――私の真の姿です」


 クゼスの声が低く響く。

 その姿はまるで悪魔そのものだった。


「……第二形態か」

 

 ヴァルトが剣を握る手に汗を感じる。だが、恐怖ではない。

 むしろ、胸の奥に闘志が燃え上がる。


「ここからが本番じゃ。 皆、気を抜くでないぞ!」


 リルベアが前に出る。

 紫紺の魔力が弾け、彼女の髪がふわりと舞った。


「魔王クゼス、ここで貴方を倒す!」


 美月も剣を構え直し、光をさらに強める。


 三対一の戦い――だが、空気は完全にクゼスのものだった。

 次の瞬間、黒い閃光が走り、床が砕ける。


「せいぜい私を楽しませてくださいね……」


 総力戦の幕が上がった。

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