表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第五章 自由と欲望の戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/62

第44話「緊迫の対峙、揃い踏みの戦場」

 アキラと呼ばれた男の足音が階層に響く。

 

 やたら派手な装飾のついた服をなびかせながら、乾いた靴音が一歩、また一歩と近づく。

 そのたびに、フロア全体の空気が張り詰めていくのがわかった。

 

 ここにいる全員が息を殺し、視線をその細身の影に注いでいる。


 沈黙を破ったのは、美月だった。


「……何をしてるんですか、アキラ」


 冷え切った声だった。

 

 剣を構えるよりも鋭いその視線が、まるで氷柱のようにアキラを射抜く。

 空気がさらに重くなる。クゼスでさえ、面白そうに目を細めている。


「知り合いか?」


 俺が小声で問うと、美月はほんの一瞬だけ目を伏せ、吐き捨てるように答えた。


「勇者仲間の後輩です。……そして、私のストーカーです」


 ……ストーカー?

 おいおい、クゼスに続いてコイツもかよ。どいつもこいつもストーカーじゃねーか!


 思わず心の中でツッコんだその時、アキラが肩を竦め、にやりと笑った。


「ストーカーだなんて酷い言い方するなぁ。ただ先輩が好きな後輩ですよ」


 軽口を叩くその声音は、どこか愉快そうだった。

 だが美月の表情は一切揺れず、冷たく告げる。


「妹さんから聞きましたが、あなた……私の写真を部屋中に貼ってるらしいですね」


 その一言に、場の空気が一瞬で凍りついた。

 クゼスの口元がわずかに引きつり、俺も何も言えなくなる。


「……っ、そんなことより!」


 アキラはわざとらしく咳払いして話題を切り替えた。


「先輩、魔王と手を組むなど冒険者組合の規約違反ですよ」


 あ、話そらした。

 

 俺は心の中で呟きながら、アキラの表情を睨む。


「貴方がそれを言いますか。よりによって、魔王クゼスと……。世界でも滅ぼす気ですか?」


 美月の声が鋭く響く。

 アキラは肩をすくめ、あっけらかんとした笑みを浮かべた。


「ありえませんね。俺は貴方が手に入ればそれで良い。しかし、魔王とつるんでるとなれば話が変わってくる。しかも、魔王二人とです! そっちこそ世界を滅ぼす気なのでは?」


 美月の眉がわずかに動く。


「ヴァルトさんはそんな人じゃありません! リルベアさんも、優しい人です!」


 声には一片の迷いもなかった。

 

 アキラは鼻で笑い、剣の切っ先を床に落とす。


「そのヴァルトやらは知りませんが、魔王クゼスとやり合える時点で危険ですし、そもそも魔王リルベアはダンジョン外侵攻をした魔王ですよ? そんな奴と親しくするなどあり得ない!」


 しかし美月の目は、もはや敵を見るそれだった。

 

 クゼスは腕を組んだまま、二人のやり取りを楽しそうに見物している。まるで見世物小屋だ。


 互いの主張はぶつかるばかりで、平行線を辿っている。

 だが一つだけ、確かなことが見えてきた。


 美月は、自分の自由を得るために。

 俺たちは、平和なダンジョン運営を続けるために。

 互いの利害関係が一致して、こうして一緒にいる。


 ――そして、クゼスはリルベアを手に入れるために。

 アキラは、美月を手に入れるために。

 手を組んでいるんだろう。


 勇者と魔王の組み合わせが二組――。

 

 互いに特攻を持つ存在同士、実力は拮抗する。いや、むしろこっちが劣勢か。

 まともにやり合えば……実戦経験の差でたぶん、こっちが負ける。

 

 状況の悪さに、思わず顔を歪めた。


 その時だった。


『なら、わらわが加われば、状況は覆るの』


 脳内に、あの艶やかな声が響いた。

 

 次の瞬間、俺と美月の間に魔法陣が展開される。

 紫紺の光が爆ぜ、床石に複雑な紋様が走る。


 現れたのは――不敵な笑みを浮かべるリルベアとゼトスだった。

 艶やかな髪が揺れ、彼女はゆっくりと視線をアキラとクゼスに巡らせる。


 ゼトスも巨大化し、ガルルルッ!と二人を威嚇する。


「――さて。ここからが本番じゃろう?」


 その声に、場の空気が一気に緊迫した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ