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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第四章 入り浸り勇者と来訪する執着者

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第43話「四者激突、交わる刃と策謀」

 次々と俺は攻撃を仕掛ける。

 拳が、足が、空気を切り裂く。

 

 クゼスも即座に反応し、片腕で俺の拳を受け止めながら、逆の手で掌底を叩き込んできた。

 衝撃波が回廊を震わせ、石片がぱらぱらと天井から降る。


「ははっ、いいね! そうこなくちゃ!」


 クゼスの顔が嬉々として歪む。

 次の瞬間、背筋が凍るほどの殺気が俺の間合いを覆った。


「ッ――!」


 俺は後ろに跳び退き、距離を取ると同時に死角からの魔法が頬をかすめた。

 血の匂いが鼻を突き、皮膚がヒリつく。


 こいつ、ちゃんと強いッ――!


 互いに距離を取り、睨み合う。


「へぇ、君、強いじゃん。何者?」


 クゼスは口角を吊り上げ、愉快そうに問う。


「ここの――」


 言いかけて、俺は一気に距離を詰めた。

 油断していたクゼスの顔がわずかに驚きで歪む。


 その顔面めがけて渾身の蹴りを叩き込むと、クゼスの体が宙を舞い、壁に叩きつけられる。

 石壁がひび割れ、瓦礫が降り注ぐ中、俺は剣を抜いた。


「――魔王だよ」


 瓦礫を押し退け、クゼスがゆっくりと立ち上がる。

 服についた埃を払うと、ニヤリと笑った。


「妙なことを言う。ここの魔王はリルベアでしょ?」


「リアは俺の眷属だ」


 俺の言葉に、クゼスの表情が凍る。

 一拍置いて――吹き出した。


「……ふふっ。フハハハハハッ!」


 狂気じみた高笑いが、回廊に響き渡る。

 笑い終えると、クゼスはゆっくりと剣を抜いた。


「なら、お前を殺すだけだ。リルベアを“リア”呼びするだけでも万死に値するのに、眷属にしているだと? ふざけるなぁあああああああ!!」


 剣に禍々しい魔力が宿り、空気が黒く染まる。

 クゼスが床を踏み砕き、一気に間合いを詰めてくる。


 はやっ――。


 剣が振り下ろされる……が、次の瞬間。


 甲高い金属音と共に、クゼスの剣が弾かれた。

 衝撃でクゼスが数歩後退する。


「あ?」


 クゼスが訝しむより先に、白い光が視界を照らした。


「その臭い口を閉じてもらえますか? 臭すぎて迷惑なので」


 俺の前に立っていたのは、美月だった。

 白く輝く剣を構え、その刃はクゼスの禍々しい魔力を切り裂き、なお光を放っている。


「美月?! どうしてここに……」


「ヴァルトさん、気持ちはわかりますが落ち着いてください」


 美月は視線をクゼスから逸らさずに言った。


「あれは正直、バケモノの類です。剣を弾いただけで、魔力をごっそり持ってかれました。魔王同士だと、まともに殺り合えば経験の差でジリ貧になります。ここは共闘しましょう」


 言われるまでもない。

 さっきの攻防で、俺の攻撃がほとんど効いていないことはわかっていた。

 少なくとも、美月の光の剣のほうがクゼスを怯ませている。


「……わかった。頼む」


 悔しいが、今は力を借りるしかない。


 そのやり取りを聞いていたクゼスが、怪訝そうに目を細めた。


「……は? 何故、勇者がここに……いや、それより何故、勇者がそいつの味方をしている?」


 クゼスはボソボソと呟き、何かを考えている様子だった。

 

 そして少しの沈黙の後、剣を構え直す。

 俺も美月も、思わず息を呑む。


「そうか。貴様ら、グルだな?」


「あ? 何言って――」


「そうですよ!」


 俺の声を遮るように、美月が即答した。


「いつだって私はヴァルトさんの味方です! なんか文句でもある?」


「ちょ、美月!? 何言っちゃってんの!?」


 俺の困惑などお構いなしに、美月は胸を張る。

 

「ふふふ……認めたな?」

 

 クゼスはその様子を見て、にやりと笑う。


「お前の考えは正しかったようだぞ――勇者アキラ」


「だから言ったろ? 俺はいつも正しいんだよ」


 クゼスの問いかけに対してそう答えながら、一人の男が階層扉を開けて入ってきた。

 

 その瞬間、フロアにピりつくような緊張が走った――。

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