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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第三章 成長する魔王と迫る”冒険者組合”の影

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第33話「偽りの封印、真の共謀」

 皆の視線が、一斉に美月へと向けられる。

 その中心で、彼女は小さく息を整えると、口を開いた。


「……偵察の過程で魔王との戦闘になったことにします。ただ、倒し切ることはできず、封印して無力化した――そういうことにするんです」


 その言葉に、レイラが眉をひそめる。


「封印、ですか」


「はい。そして“魔王は強大で、定期的に術式の再構築と魔力の補充が必要”って、冒険者組合に報告します」


 美月がそこまで話した瞬間、頭の中で点と点がつながった。


 ……ああ、そういうことか。


「つまり、ダンジョンの脅威性を下げたことにして、組合側のレイド作戦を白紙に戻すわけか」


「はいっ。それなら、定期調査を名目に私は――遊びに……ごほんっ、“術式の再構築”に来れますし、ヴァルトさん達も大規模戦闘を避けられます!」


 ん? 今、途中の部分、遊びにって言ったよな……?


 ゼトスが「ほう」と唸る。

 

 美月の案は、確かに互いに利益がある。これが叶うなら願ってもない提案だ。


 俺はおもむろにリルベアの方を見た。


「ふむ、悪くないの。ヴァルトよ、主はうぬじゃ。おぬしが決めよ」


「なら、その提案、受けるよ。最初にも言ったけど、別に人間を殺したいわけじゃないしな。穏便にいこう」


 俺の答えに、眷属たちは納得したように頷いた。


「じゃあ、早いに越したことないですし、さっそく取り掛かっちゃいましょう。このダンジョンって何階層まであるんですか?」


「んー、今いるこの階層が十一階層なんだけど、まともに機能してるのは十階層までだな」


 美月は少し考え、口を開く。


「十階層ってボス部屋でしたよね?だったら、この階層と十階層の間に“コアルーム”に見立てた階層、作れますか?」


 やってみようとしたその時――。


「できたぞ」


「はやっ!? ……てかリルベア、フロア改築まで権限あるのかよ」


 ゼトスが「さっそく行かれては?」と提案し、「我は巡回に戻りますぞ」と頭を下げる。

 

 レイラも「私は魔物達の訓練に」と言いかけたが、リルベアがそれを止めた。


「レイラ、うぬはヴァルトと勇者について行け。わらわは山積みの案件がある」


「リルベア様がそうおっしゃるなら、私がご同行します」


「ああ、頼む。それじゃ行こうか」


 こうして、各々が持ち場へ戻り、俺たちは新たに作られた“十一階層”へ向かった。



 ◆

 


 場所は変わり、新十一階層。


 足を踏み入れると、淡い光が壁面を流れ、わずかに冷えた空気が肌を撫でた。


 物こそ置いていないが、構造はまるで本物のコアルームだ。


「とても良い感じですね! ヴァルトさん、死体っぽい人形とか作れます?」


「死体かぁ……んー」


「流石に魔物じゃダンジョンに吸収されますよね?」


 悩む俺にレイラが問いかける。


「ああ。だから、人形のほうがいいかもな。ただ……状況を考えるとリルベアに似せるのが一番リアルなんだろうけど……なんかやだな」


 そんなことを考えていると――


 バチッ!


 階層中央にリルベアそっくりの人形が出現し――次の瞬間、黒炎が爆ぜるように人形を包み、焦げた匂いが鼻を突いた。


「うわっ!? なんじゃこりゃ」


「いえ、むしろこれぐらいの方がリアリティあります!ありがとうございます!」


 ……いや、やったの俺じゃないけどな。

 これ絶対、向こうで見てたリルベアの仕業だろ。


「じゃあ、さっそくやっちゃいますね。大丈夫だと思いますけど、お二人とも気を付けてくださいね」


 そう言って美月は剣を抜き、部屋中に斬撃と魔法を叩き込んでいく。

 

 改めて見ても、その一撃一撃の練度は高い。威力も精度もブレがない。


しかし、次の瞬間、その一部がレイラに飛び――彼女は避けようとするが間に合わない。


「っ!」


 レイラは迫る斬撃に目を見開く。


 ん? 避けきれないか。


 俺は咄嗟に間に入り、刃を弾き飛ばした。火花が弾け、金属音が耳に残る。


「レイラ、大丈夫か?」


「あ、ありがとうございます」


 少し動揺しているが、怪我はなさそうでよかった。


 改めて思うけど、人型になってから明らかに基礎能力も魔力も以前と比べて何十倍にも膨れ上がっている気がする。


 不思議なことに前までは、レイラの方が俺よりも強いって思ってたけど、今はリアや美月が相手でも微塵も負ける気がしない。


「うん、こんな感じかな? あとは――」


 美月は周囲を傷つけることで戦闘の跡を作ると、人形の周囲に斬撃で魔法陣を刻み、低く詠唱を始めた――。

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